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静岡製機のCO2施用機導入 山本彩花園・山本好夫社長

静岡製機のCO2施用機導入 山本彩花園・山本好夫社長
 高級切り花(デルフィニウム)の生産者として高名な静岡県磐田市の山本彩花園・山本好夫社長を訪ね、花作りや昨年導入したCO2施用機『CG―1000』(静岡製機)のパフォーマンス、経営の中で果たす役割等を聞いた。山本社長は「高品質な花を作り、納得のいく価格で売っていける経営基盤を作りたい。その中でCO2施用機は欠かせない」と語った。

目次

静岡のCO2施用機導入 山本彩花園・山本好夫社長

 

 山本彩花園は社長の山本好夫氏が延べ1100坪のハウスでデルフィニウムを、ご子息の山本信之氏が延べ600坪で利休草を栽培、切り花として販売している。山本さんのデルフィニウムは、茎がしっかりとし、伸びやかで花色も美しく、またご子息の信之氏が栽培する利休草も嫋やかながら凛とした風情が目にする人を惹きつけた。
 ――花作りで大切にしていることは?
「自分の子供を育てるように愛情をかけ、大切に健康に育てるということだ。大事なのが光合成で、これをしっかりできる環境を作る。植物は光合成で得たデンプンなどの炭酸化合物を分解してエネルギーを得て葉、根、茎などを成長させる。だから花も健康に育てるためには光合成の3要素(光・水・炭酸ガス(CO2))を不足なく与えてやることが大切だ。そのため、ハウス内ではどうしても不足する炭酸ガスを補う発生装置は必須と考え、他に先駆けて10年ほど前からオランダ製施用機を導入した」
 ――花の育ちは変わりましたか?
「もちろん、品質も良くなったと感じているが、品種も変わってきているので単純比較は難しいが、生育の速さには目を見張る。回転がすごく良くなるのは間違いない。デルフィニウムは1回植えて切る(収穫)とそこからまた芽が出て伸びて切る、これを繰り返すわけだが、このサイクルが2カ月半だったものが、導入後は2カ月ほどに短縮した。炭酸ガスを施用することで成長が速くなり最低4作(以前は3作)になった。外気のCO2濃度は400ppmくらいだが施用機は1000ppmを目標に設定する。気温が高くなると天窓が開き、また側面も巻き上げてしまうのでCO2濃度が下がってしまうが、冬場はハウスは締め切りになるので、濃度が高いままに保たれるため、成長の速さは特に顕著だ。CO2自体が肥料と思っているが、水も肥料(養液点滴)も、ものすごく必要とし、花がぐんぐん育っていくのを感じる」
 ――今回、静岡製機さんのCO2発生装置CG―1000を導入されたということですが。
「300坪のハウスにはオランダ製施用機でよかったが、100坪のハウスは、これでは能力が大きすぎる。CO2施用機は必須だと思っているので、導入を検討していたが、サイズと価格・性能がネックとなって見送っていた。昨年、関東甲信クボタの店舗で静岡製機のCG—1000のパンフレットを目にして購入を決めた(2台)。これで全てのハウスに施用機が入った」
 ――CG—1000は、使ってみていかが でしたか?
「サイズ感、この価格でこの性能、満足している。施用機が効率よく稼働するためには風量も必要だが、それも十分。ここ(CG—1000導入ハウス)は45m×9mだが隅々まで施用ができる。移動も簡単なので、植え替え時の土壌消毒の時なども便利だと思う」

次世代に繋ぐ栽培戦略

 ――CO2施用のほか、栽培で大事にしていることは何ですか。
「いいものを作るため、情報にアンテナを張って、できることは何でもやる。養液点滴、新品種の導入、そして一昨年からは高価だが、発根力がいいということで空中ポットでの育苗も入れた。今年は、土を固形のヤシ殻培地バッグ栽培に変えてみたいと考えている。これは土壌消毒の手間を省くためだが、クリーンで育ちもいいらしい。これだと畝も作らなくていいので省力的だ。ただ、土耕の場合では土の中の微生物が呼吸してCO2を出してくれていたが、培地に変えると、CO2施用機は益々欠かせなくなるね」
「それともう1つ。いますごくヒットしそうな高級新品種のデルフィニウムの導入を高知の仲間と取組み始めた。誰もが欲しがる花を作る。だがこうした花も含めどう売っていくかが非常に大事だ」
 ――お聞きできればデルフィニウムの栽培戦略を?
「まず、今取り組んでいるのが1作目の出荷時期を早めることだ。デルフィニウムは寒さには強いが、気温が高いのは苦手な花だ。十分寒くなってから植えれば失敗は少ないが、これを少しでも前倒しして生産出荷できれば、高値販売も可能だし、2作目以降も常に市場供給量が少ない時に出荷できる。そうは言いながらも、もともと暑さに弱い花なので簡単ではない。リスクも伴う。冷房の使い方、水分・肥料・炭酸ガスのコントロール・資材等々、試しながら、その技術の確立を目指して試行錯誤を繰り返しているところだ。それが、次の代に引き継ぐときの財産になると思っている」
 ――販売については。
「作ることと同じくらい大切だ。花作りも含めて農業をやる人、後継者がいない経営が増えているのは、儲からないから、夢が持てないからだ。それはなぜか?農産物には価格決定権がないからだと思っている。世の中で売られているものの殆どが生産する側が価格をつけて販売するが、農産物は基本、市場に出していくらで売れるかだ。今のように生産資材が高騰しても、それを販売価格に反映できていない農家も多い。手間ひま、生産コストをかけて、一生懸命作ったわが子のような花をどう売っていけばいいか。これも自分の花作りの集大成だと思って取組んでいる。エンドユーザーが求める花、魅力的な花を作り、ターゲットを絞って売っていく。求められる花も変わっていく。例えば、サブスク、ミニブーケに向く小ぶりな花…。まだまだやるべきこと、やりたいことはたくさんある」
     ◇
 山本好夫社長は現在73歳とお聞きしたが、次々と新しいことにチャレンジし続けているからだろうか。信じられないくらいエネルギッシュだった。

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