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高温障害対策の最新トレンド!省力化&持続可能な農業資材を徹底解説

 気候変動が進む中、作物の高温障害対策はますます重要性を増している。資材メーカーも、高温障害の軽減に役立つ製品を開発し、各種展示会などで積極的にPRしている。一方で、農業現場では人手不足が深刻化しており、特に夏場の繁忙期には高温対策に多くの時間や労力を割くことが難しいという声も聞かれる。そこで、本特集では「高温障害対策に役立つ注目製品」をテーマに、できるだけ省力的に作物の高温環境に対応できる資材や、持続可能な農業に貢献する農業資材を紹介する。
 
目次

高温障害対策に効果的な「フジワン」—白未熟粒の発生を抑制する殺菌剤

  

 

水稲のいもち病などの殺菌剤として知られる「フジワン」は、米の高温障害である白未熟粒の発生を抑える資材としても農薬登録を取得している。
 白未熟粒とは、登熟期に高温や日照不足等の悪環境にさらされることで、玄米中のデンプンがうまく蓄積されず、デンプン粒とデンプン粒の間に隙間ができ、光が乱反射して白く濁って見える米のことである。出穂後10~15日の高温により多く発生し、平均気温が26℃を超えると急激に増加する。
 白未熟粒はデンプンの蓄積具合によってタイプ(乳白粒、基部未熟粒、腹白粒、背白粒等)が異なる。発生すると、米の品質低下(等級低下)につながると懸念される。
 フジワン粒剤は、こうした白未熟粒の抑制にも効果があるとして農薬登録を取得している。出穂10~20日前に散布することで、根張りが良くなり、葉からの蒸散が活発になる。そして気化熱により穂層の温度を低下させることができる。稲体への高温によるダメージが軽減されるとともに、籾へのデンプンの転流が促進されるため白未熟粒の発生を軽減することができる。
 高温登熟下における試験事例においても、無処理に比べ、フジワン区では白未熟粒の発生が約20%減少した。穂いもち・稲こうじ病の防除と共に、白未熟粒の発生軽減や登熟歩合向上にもつながるため、効率よく対策ができる資材だ。
 高温障害対策には品種改良や土壌改良といった多角的な対応が求められるが、これらを短期間で実現するのは難しい。その点、フジワンは農薬登録によって効果が裏付けられており、即効性のある高温対策の一つだ。
 またフジワンは、1975年の発売から今年で50年を迎えるロングセラー商品。現在も病害への感受性を維持し、さらに気象条件の厳しい中でも高品質米の生産に貢献している。

 

高温障害対策に効果的!「CORON」で収量アップ&省力化施肥を実現

 

 

 高温下では作物の登熟期に肥料切れを起こしやすく、それが収量や品質に影響を与える。こうした高温障害の対策として有効なのが、出穂期前の追肥である。片倉コープアグリの「CORON」は、窒素27%を含む高濃度液体肥料であり、高温時や強い日照を避ければ、高濃度散布でも肥料焼けしにくい特性を持つ。葉面に散布すれば植物体に直接肥料成分が吸収されるため、土壌からの吸収を待つ必要がなく、肥料の利用効率も高い。夏場の渇水時においても穂肥効果を期待できる。
 一方で、追肥の必要性がわかっていても、梅雨時期などの繁忙期には作業が多く、追肥の時間を確保するのが難しいという声もある。こうした課題を解決する手段として、「CORON」はドローンによる省力施肥が可能である。手撒きでは1時間あたり50a未満、動力噴霧器でも100a未満の散布面積にとどまるのに対し、ドローンを使用すれば1時間あたり200a以上の広範囲を効率的に散布できる。
 また、現場で普及している10ℓタンクのドローンでは積載量が少ないという課題に対しては、高濃度の「CORON」は、1回のフライトで大面積をカバーすることができるため、ドローン施肥に最適な肥料である。
 一昨年、新潟県のJA佐渡と管内の農事組合法人が、肥料の脱プラスチック化と追肥作業の省力化の効果を検証した実証試験を行った。慣行区は粒状肥料、試験区は「CORON」を用いた。葉面散布による肥料補給は、通常の土壌施肥と比較して肥料の吸収効率が良いため、「CORON」を散布した圃場では窒素施用量を1/3量に減肥した。水稲の出穂期前にドローンで2回、「CORON」を均一散布したところ、作業時間は従来の半分以下に抑えられ、収量は慣行区に対して88~96%を維持した。
 同社ではコムギやダイズ、その他の作物にもCORONの普及を進めていく予定である。

 

高温障害対策に!最新の微生物資材&葉面散布肥料を紹介

  

最初に紹介するのは微生物資材「エヌキャッチ(窒素固定菌)」だ。有効菌のグルコンアセトバクター属(Gd菌)は、マメ科の根粒菌と違い、主に葉で働く菌である。光合成に必要な窒素を葉に共生したGd菌が大気から取り込み、効率的に植物に供給する。水稲でいえば、止葉の光合成能が高温期でも低下せず、未熟粒や乳白の発生を抑えることが出来る。また、本菌は、不足分だけの窒素を作物に供給するので、従来の追肥とは違い倒伏や食味低下の心配も不要。施用も面積当たりの必要量を水に溶いて散布(育苗期1回)と簡便である。
 2つ目に紹介するのは、葉面散布肥料「ヒートインパクト」だ。バイオスティミュラントの原料メーカー各社と全国の販社で構成された環境ストレス研究会で、検討/商品化された肥料である。主な成分は、作物の抵抗力をアップする海藻エキスおよび微生物代謝物と、高温時の代謝異常を改善し、作物を保護する作用のあるアミノ酸の混合処方。高温時の水田で、収量や品質の低下を抑えることが実証されている。大規模圃場ではドローン散布も可能だ。
 販売はいずれも㈱ファイトクローム。同社では、人の日焼け止めをヒントに開発された、夏場の果皮障害対策肥料「サンインパクト」の上市(5月以降)も予定している。今後期待の商品である。
【主要緒元】《エヌキャッチ》▽微生物資材▽内容量=6・25g(50アール分)《ヒートインパクト》▽肥料の種類=指定混合肥料▽内容量=1ℓ/4ℓ※地域限定販売品。

高温障害対策に!天然由来バイオスティミュラント「クロピコ」の効果とは?

  

レゾナックは、化学合成物質を配合しない、液状肥料、バイオスティミュラント「KROPICO(クロピコ)」の普及を進め、近年は高温障害対策などとして高く評価され、幅広く期待が高まっている。
 「クロピコ」は、同社で開発したカニやエビなどの甲殻類や植物など天然物由来の原料から生産した数種類のオリゴ糖を配合。農作物の環境のストレスを緩和し、健全な育成を支え、増収などの好結果で利用した農家に貢献している。
 また、同社は、名古屋大学・北海道大学等の研究機関と協力関係にあり、クロピコの施用により植物の環境ストレス耐性に関与している植物ホルモンの増加を確認し、エビデンスを得ている。
 特に、注目を集めているのは、異常気象による高温障害等への緩和の効果。
 2023年に東北地域の長ネギを栽培する農家の近隣のクロピコ無散布の圃場では、高温障害により株の弱体化が目立ち、病気の発生で圃場自体をつぶす事態となった。
 「一昨年の夏は猛暑で畑が乾燥したが、うちはクロピコで根が強くなったのか、病気にもならず、無事に出荷ができた」とクロピコを散布した農家は喜んでいた。
 長ネギは猛暑が続くと、軟腐病などの病気にかかりやすくなり、アザミウマ、ヨトウムシ等の害虫も厄介となるが、クロピコ散布圃場では、長ネギ本来の体力を底上げし、高温ストレス耐性が高められ、効果を発揮した。健全な育成ができたため、成長も順調で病気の発生もほとんどなく、減肥、農薬半減も達成できたとのこと。
 一方、2022年、2023年の東北地域の水稲を栽培する農家の場合は、津波被害による塩害水田でもクロピコ散布区では、通常通りの収量を確保することができた。クロピコ無散布の圃場では、高温障害による乳白粒化が発生したが、クロピコ散布の圃場では、乳白粒化現象の発生を抑制できたという。

 

高温障害対策に最適!完全水溶化フミン酸・フルボ酸「HS-2プロ」シリーズの効果とは?

 

 ケーツーコミュニケーションズは、人間にも植物にも安全・安心な完全水溶化フミン酸・フルボ酸「HS―2プロ」シリーズの普及を進め、高温障害などに悩まされる農家などから期待が高まっている。
 「HS―2プロ」は、フミン酸・フルボ酸を同時に水溶化抽出した水溶液資材。亜炭や泥炭から化学抽出精製したモノは活性が低く安全性にも不安があるのに対して、国産の完全オーガニックの純粋で安全なフミン酸・フルボ酸水溶液。
 同社のフミン酸・フルボ酸は、有効利用できずに廃棄された間伐材を4年かけて完熟堆肥化。水だけで抽出して作られ、その製法は特許を取得。
 「HS―2プロ」シリーズは水溶性フミン酸を多く含み、フェノール性水酸基が多く、その機能は抗酸化作用に繋がり、高温時下での活性酸素増加による細胞の酸化(老化)防止効果となり、同時に生理活性を維持させるので、高温障害対策として最適。
 シリーズ品の「HS―2プロ苗半作」水稲向けでは、夏場の高温環境下を乗り越える準備として健苗作りは重要で、実際に使用している生産者からは、暑さを乗り切れたためか収量も増加したと高評価を得ている。
 一方、「HS―2シダーグレイス」は、ベント芝グリーンの猛暑を乗り切る高温対策として高評価を得ており、発売からわずか2年で100コース以上に継続採用されている。
 また、今春から果菜類用として「HS―2プロ ドンと成~る」を発売。キュウリ栽培農家からは、「健苗ができ、定植後の活着の早さに驚いた。定期的な散布により樹勢が衰えず農薬の使用量が減るので、施肥も少量で済み、資材費削減に繋がった」という声が寄せられ、高温障害対策と成り疲れ防止で高品質な農産物の増収に効果が期待される。

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