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【鳥獣被害特集】鳥獣被害から生活を守る 地域一体で効果的対策

【鳥獣被害特集】鳥獣被害から生活を守る 地域一体で効果的対策

 わが国の鳥獣被害は、農作物に限ってみても約156億円。経年で見ると、平成22年239億円あったものと比べると3割以上減少している。これは、様々な優れた対策資材の登場や地域一丸となった取組の広がりが大きな要因だ。しかし、156億円という被害は決して少なくない。加えて、被害による心理的な影響なども勘案すると、対策の強化は喫緊の課題だ。前述の通り優れた対策資材はある程度揃っている。これをいかに上手に活用する体制を作るかが求められる。

 

侵入防止や環境管理 156億円から如何に減らすか

  わが国の農作物に関する鳥獣被害は金額でみると、155億6300万円。前年から4700万円の増加となった。近年は概ね減少傾向で推移しており今後増加トレンドへと変わるのか注目される。被害の具体的な状況をみてみると、被害が最も多かったのは北海道で56億4300万円。次いで福岡及び熊本が5億9700万円、愛知が4億8100万円、長野が4億8000万円と続く。作物種別では、野菜が35億3800万円、果樹が34億3200万円、イネが32億5600万円。
 鳥獣種別では、シカの被害は64億9900万円。都道府県別では北海道が47億6800万円と全体の7割超を占めたほか、岩手が2億7400万円、長野が1億3900万円など。イノシシは合計36億3800万円で福岡が最も多く2億9200万円。次いで熊本2億8500万円、広島が2億5600万円と続く。サルは7億5200万円などとなっている。
 こうした被害を減らすための対策としては「個体群管理」「侵入防止対策」「生息環境管理」の3本柱が基本となる。加えて、これらを「地域一体」となって取り組めるかが被害軽減の効果を左右する。
 鳥獣被害の低減に向けては農水省予算として令和6年度は鳥獣被害防止総合対策に99億円、令和5年度補正予算49億円の計148億円を計上支援に取り組んでいる。このうち、鳥獣被害防止総合支援事業では、シカやイノシシ、サル、クマ等への対応など「被害防止計画」に基づく地域ぐるみの取組や侵入防止柵の設置、広域柵の整備再編計画の策定、侵入防止柵の再編整備支援の強化などを支援する。

 

イノシシ対策分布域は拡大傾向 個体群管理法を検討へ

 

               イノシシ被害はより広範になっている

 

 環境省では、特定鳥獣保護管理検討委員会を開き、各鳥獣の保護及び管理に関して検討会を開催している。
 このうちイノシシについては、1月23日、検討会議を開催、保護及び管理に関する考え方や今後の方向性などが示された。
 イノシシ被害については、農作物は前述の通り。人身被害については、平成28年度から令和3年度は年間50件程度で推移していたが、令和4年度は64件に。令和5年度は12月末時点の暫定だが、20件となっており、例年よりも少ない状況となっている。人身事故の被害の種類は咬みつきによるものが最も多かった。
 分布域については、昭和53年度から令和2年度で約2倍に拡大。特にこれまで空白地帯とされてきた積雪地域や島しょ部でも生息が確認されるようになった。平成26年度から令和2年度にかけても分布が拡大傾向にあり、東北や北陸などのこれまで目撃や捕獲が少なかった地域でも目撃や捕獲が確認されている。
 推定個体数(中央値)は令和3年度時点で約72万頭。一方、捕獲数は令和2年度時点の速報値で約2・3万頭となっている。
 こうした状況から現在の施策上の課題として、①全国的に推定個体数は減少しているが、人身被害数は低下していない②全国的に農業被害は低減しているが、未だに高い水準に留まっている―の2点を挙げた。そのうえで課題の要因分析のため、都府県の施策内容(目標、実施場所・方法、実施体制、予算等)の整理・分析が必要とした。また、イノシシ被害の低減に向けては個体数(密度)を低減させていくことが施策の一つ。各目標に応じて効果的な捕獲計画を立案することが求められる。更に「抜本的な捕獲強化対策」による捕獲の促進や豚熱拡大によりイノシシの個体数は全国的に減少傾向となっていることから個体数が減少し低密度になっている地域ではその維持が課題となる、と指摘。そのため、今後は各目標に応じた効果的な個体群管理及び低密度を維持するための個体群管理の方法について検討・普及していく必要がある、としている。
 特定鳥獣保護管理検討会については、直近では、イノシシのほか、ニホンジカ、ニホンザルでの開催も予定している。

先端技術で効率・省力化 GISやICTわな PDCAの各所で力発揮

 

 

 鳥獣被害対策技術としては、様々なものが登場し、被害低減に大きく寄与している。そうした技術に加え、近年はICT等の先端技術を活用し、より効率的かつ省力的に被害防止対策を図ることができる技術の開発・普及も進んでいる。
 農水省では、令和4年度予算での事業として「鳥獣被害防止対策高度化事業」を実施。ICT技術を活用したデータに基づく被害防止活動の取組を支援している。先ごろ同事業で様々な先端技術を導入した6件の事例がまとめられた。
【GIS等を活用したシカ対策強化の取組(宮城県)】対象となったのは宮城県気仙沼市、大和町、七ヶ宿町の3市町。主な対象獣種はシカ、イノシシ、ニホンザルで活用した技術はGIS(QGIS)、GPS(動物位置情報システムANIMALMAP)、センサーカメラ(トロフィーカム)、ICTわな(ほかパト)。
 同地域はシカ等の生息域が拡大する一方、捕獲従事者の高齢化に対応するため、効果的、効率的な対策が求められていた。
 このため、計画段階では、生息・被害状況等の調査結果をGISを活用して可視化し、被害対策を計画。計画に基づき、捕獲個体へのGPS首輪装着やデータを踏まえたわなの設置などICT捕獲機器等を用いて効率的な対策を行った。
 こうして得られた情報をGIS上に集約し効果検証、課題の整理を実施。捕獲場所、GPS測位位置等のデータを更新し現地の実態を地図に反映することの重要性を確認するとともに、追い払いルートや捕獲場所を立案するなど、効果的な対策検討に繋がったという。
 これらの取組により継続的な対策実施の必要性を実感する契機となり被害対策の充実につながることが期待される。また、柵のエラー箇所を共有でき効果的な補修の提案にも繋がった。更にデータをふまえてわなを設置した結果、これまで設置していなかった場所での捕獲にも繋がっている。GPS首輪を活用した調査では、移動経路や日中と夜間の行動範囲の違いなどを把握することもできた、としている。県では今回の取組内容を県内市町村を対象とした会議などで周知し、事業成果の普及を図ることとしている。
【GIS等を活用した地域住民主体による被害対策の取組(兵庫県)】対象となったのは相生市、養父市、香美町の3市町。主な対象獣種はイノシシで活用した技術はGIS(獣害対策GIS)、センサーカメラ(TREL20j他)、ICTわな(アニマルセンサー、まるみえホカクン)。
 同地域はイノシシの被害が大きく、防護柵整備や加害個体の捕獲など地域住民が主体で被害対策を推進する必要があった。
 こうしたことから被害・対策状況をGISに入力し可視化。それを基に集落と関係機関が連携して現状分析と対策を検討。必要に応じて住民と現地調査を行い対策の必要性について認識を共有した。この検討結果に基づき、わなやカメラを設置して加害個体を捕獲した。対策後は効果検証会を開催。GISによる被害軽減効果の可視化のほか、カメラ撮影による加害個体の侵入ルート確認などを行い、柵の追加補修やわなの設置箇所の変更など改善を行った。
 被害状況などデータの可視化により対策の成果が時系列的に把握でき、成功体験を共有することで集落のモチベーションを向上、地域住民主体で持続的な対策の実施に繋がり被害も減少した。

 

クマとのすみ分け 被害防止に向け対策方針

 

 野生鳥獣のうち、クマ類(ヒグマ及びツキノワグマ)について、昨年の秋は秋田県及び岩手県を中心に、市街地や集落など人の生活圏への出没が相次ぎ、人身被害が過去最多を記録するなど、甚大な被害が発生した。
 こうしたなか、絶滅のおそれの高い四国の個体群を除くクマ類を指定管理鳥獣に追加する旨が、2月8日に伊藤信太郎・環境相から表明された。
 今回の表明は、環境省が立ち上げた「クマ類保護及び管理に関する検討会」で、先ごろ取りまとめられた「クマ類による被害防止に向けた対策方針~クマとの軋轢の低減に向けた、人とクマのすみ分けの推進~」によるもの。方針では、方向性を①ゾーニング管理②地域個体群に基づく広域的な管理③モニタリングに基づく順応的な管理―と定めている。
 ①を具体的にみると、「人の生活圏」にクマ類を生息させず、人の安全を最優先。放任果樹等の誘引物の除去・管理、集落周辺の刈り払い等の対策を徹底し、侵入したクマは速やかに排除する。また、「緩衝地帯」では、人とクマ類の空間的なすみ分けを図るため、伐採や刈り払いなどの環境整備、捕獲、林業等の人間活動を実施する。
 一方、「保護優先地域」では、地域個体群を安定的に維持し、クマ類の良好な生息環境を保全。観光利用者等への普及啓発等の予防策を徹底する。

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