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土壌病害にHeSo+(プラス) 発病リスクをAI診断 ″収益上げるツール〟期待

土壌病害にHeSo+(プラス) 発病リスクをAI診断 ″収益上げるツール〟期待
土壌病害を予防管理する手法として農研機構が2012年に開発した「ヘソディム」は、2014年と2016年にマニュアルが作成され、三重県、富山県、群馬県、長野県、静岡県内などの産地や生産圃場で取り組みが行われている。そして昨年4月、AI診断アプリ「HeSo+(ヘソプラス)」がリリースされ、指導員(県普及員やヘソディム指導員)などを中心に活用が始まっている。また指導員だけでなく、生産者も購入しており、収益を上げるためのツールとして注目されている。

  現在「HeSo+」は、農業現場での被害が問題となっている、主要な土壌病害10病害を対象に診断できる(キャベツ・ブロッコリー・ナバナなどアブラナ科野菜の根こぶ病、ネギ黒腐菌核病、ハクサイ黄化病、キク半身萎凋病、タマネギべと病、ショウガ根茎腐敗病、トマト・ショウガ青枯病)。
 診断項目は、病害毎に異なり、たとえば、前作の発病度、病原菌密度、周辺圃場の発病程度、土壌の理化学性(pH、EC(電気伝導度)、CEC(陽イオン交換容量)、排水性、栽培暦など、診断する圃場や対象作物病害によって変わる。
 なお、懸念されるのが診断コストだが、ヘソディムとHeSO+の開発を担当した、特定非営利活動法人圃場診断システム推進機構の對馬誠也理事長は「ヘソディムは、土壌病害を克服するだけでなく、収益を上げるのが目的で提案されたものであるため、いたずらに診断項目が多くならないように心がけた」と話している。
 HeSO+は、アプリのマップ上で診断対象圃場を選定し、診断項目を入力する。AIがその圃場の発病ポテンシャル(発病しやすさ)を診断し、マップ上でポテンシャルレベルを色別に3段階で評価・表示し、そのレベルに応じて対策を講ずる。この3段階の評価法は、「農薬をまかなくて良いレベルではまかない」「発生が多い圃場では効果が低い対策技術でもレベル1では十分使える」など、より低コスト且つ効果的な利用として考えられている。
 また発病ポテンシャルの自信度も★の数で大まかに3段階で表示される。
 診断結果に応じて推奨する対策技術では、利用者の目指すゴール別(①例年どおりの収量確保を優先したい場合、②増収増益を優先したい場合、③生産物の高付加価値化を優先したい場合、④圃場の持続的利用を優先したい場合)に適した対策技術が提示される。
 「HeSo+」は農家、企業(土壌診断サービス事業者等)、技術普及・試験研究機関等での利用が始まっており、HeSO+を使った指導員からは、「アプリをみながら生産者と一緒に診断できるので、コミュニケーションツールとして使える」、「過去の圃場ほどの情報(診断内容、診断結果、対策、対策の結果、発病株の写真、発生場所、発生規模)などが見られるのでとても有益だ」などの感想があがっている。
《HeSo+の開発背景》土壌病害は、圃場での栽培期間中に一旦発生するとその後の対策が一般には困難となるため、多くの現地では最悪の事態を避けるために、土壌消毒剤をすべての圃場に一斉に使用する防除が行われている。しかし、この防除方法では実際には使用する必要がない圃場にも消毒剤を使用してしまうことがあり、結果的に過剰な作業労力や農薬代などを招く事態が生じている。
 農研機構はヘソディムを開発し、その手法をマニュアル化した。これまでの実証試験では、ヘソディムの導入によって過剰な土壌消毒剤の使用を回避出来るようになり、消毒コストの削減に成功できることも確認されている。
 しかし、圃場環境や農作物の栽培条件は圃場毎に多様であり、発病ポテンシャルの診断方法もその条件に応じて改変する必要がある。このため、多くの圃場でヘソディムによる土壌病害管理を実践してもらうためには、圃場の環境や栽培条件に適した発病ポテンシャルの診断を行えるシステム作りが必要となった。
 このため、ヘソディムに基づく土壌病害管理の支援を可能とするAIアプリ「HeSo+(ヘソプラス)」の開発に至った。

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