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米の価格転嫁と消費者理解促進の重要性

米の価格転嫁と消費者理解促進の重要性

米の供給不足と価格上昇に関する現状と今後の見通し

わが国の主食である米を巡り、供給に関して混乱が生じている。米の在庫量は一定程度確保されているものの、小売店の店頭在庫が不足しており、「備蓄米の放出」や「輸出用米を国内に向けるべきだ」という声も上がっている。

 

米の店頭在庫減少の要因

農林水産省によると、今回の米の店頭在庫減少には複数の要因がある。

  1. 端境期の需要増加
    8月は米の在庫が最も少なくなる端境期であり、さらに南海トラフ地震に関する臨時情報やその後の地震・台風などにより、消費者による買い込み需要が発生した。

  2. 価格上昇の影響による需要のシフト
    食料品の価格が全般的に上昇する中、米の価格は相対的に上昇が緩やかであったため、パンなどの小麦製品から米へのシフトが見られた。また、インバウンドの増加や人流の増加も米の需要を押し上げた。

  3. 高温・渇水の影響
    夏の高温や渇水の影響により、精米の歩留まりが低下し、例年に比べて流通段階での供給が不足する事態が起きた。

  4. お盆休みの影響
    さらに、輸送業者の盆休みにより商品の搬入が滞り、在庫不足が助長された。

今後の見通しと米価の現状

新米の出荷が始まることで、混乱は次第に落ち着くと見られているが、消費者からは「米が高い」という声も聞こえてくる。しかし、本当に米が高いのだろうか。

消費者物価指数によると、令和6年7月時点で食料全体の指数は116.4(前年同月比2.9%増)であったが、米類(うるち米)は111.3(同17.2%増)、特にコシヒカリは109.6(同15.6%増)となっている。一方、パンは120.9(前年同月並み)、めん類は120.6(同0.8%減)であり、米類の価格上昇は比較的緩やかである。

さらに、令和5年の年間平均では、食料全体が112.9に対し、米類(うるち米)は96.1、パンが118.4、めん類は118.9と、米の価格は他の食品と比較しても高くない。お茶碗1杯のご飯に換算すると約29円(精米5㎏の価格を2201円で計算)。主食が1杯30円未満であれば、「高い」とは言いにくいだろう。

 

今後の米価はどうなるか

米の価格は早晩落ち着くとの見方もあるが、各地で発表されている概算金は軒並み大きく上昇しており、令和5年産を上回る水準になることは確実だ。しかし、こうした価格上昇が十分かというと、まだ不十分である。生産コストは上昇を続けており、それが価格に適切に反映されていないのが現状だ。

 

消費者理解と適正価格の重要性

こうした状況にもかかわらず、消費者の理解はまだ十分とは言えない。農林水産省では、令和7年度予算の適正取引推進・消費者理解促進対策事業に4億円を計上し、価格転嫁に向けた消費者理解を促進する方針だ。我々農業関係者も、米価の適正な上昇に向けた理解を広めていく必要がある。

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