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子実コーンの収穫実演 宮城で大規模実証 「国産」転換へ期待高まる

子実コーンの収穫実演 宮城で大規模実証 「国産」転換へ期待高まる
JA全農では、令和4年度から宮城県大崎市のJA古川管内で子実用とうもろこしの栽培体系に関する実証を進めている。本紙においても播種の様子について取材し5月31日号で紹介したが、9月13日には、関係者らを集めた現地見学会が開かれ、収穫の様子などが公開された。当日はJA関係者や試験研究機関のほか生産者など200人を超える人が集まった。また当日は、メディア向けにJA古川管内にある子実用とうもろこしの乾燥・調製施設も公開された。



 世界的に穀物相場が高騰するなか、「国産」への期待が高まっている。特に子実用とうもろこしについては、栽培面においても、労働時間が非常に短いうえ、残さをすき込むことで土づくりにも繋がり、麦や大豆を栽培していれば機械を汎用利用できるなどメリットも多いことから注目が集まっている。
 そうしたなかで今年からスタートしたJA古川管内における子実用とうもろこしの大規模実証は同地の大豆生産組合を中心にした31経営体が参加し、面積は合計で91・5ha、予定収量は10aあたり700㎏を目標として640tとして実施。作型はJA古川の基幹的な作目である水稲・大豆の作業時期が重複しないよう、2つの作型に分けて栽培。また、収穫後は管内の乾燥・調製施設で乾燥させ、JA全農北日本くみあい飼料が引き取り同社の石巻工場で配合飼料として加工。畜産農家に提供する。今回の実証では、栽培試験だけでなく、乾燥調製や輸送などの流通、飼料原料の適性試験などを実施するほか、獣害対策や後作大豆の生育に及ぼす影響なども含め複数年で実証し、経営評価を行うこととしている。
 見学会では、はじめにJA全農の桑田義文・代表理事専務が挨拶。「世界中で食料自給率の向上に躍起となるなか、わが国の食料安全保障という観点からいうと生産基盤の拡充が非常に重要となる。その実現に向けては生産者の労働力の軽減に加え、安心して耕作面積を増やすことができる品目の選定とその普及が不可欠と考えている。そうしたなかで子実用とうもろこしは注目されるべき品目。栽培から利用、更には国産子実用とうもろこしを活用した畜産物の開発・販売普及に向けて課題はまだ山積しているが、今回の大規模実証を通じノウハウを蓄積し、前進させていきたい。今回全国から多くの人に集まっていただいた。当地での取組を受け、子実用とうもろこし栽培が全国に広がることを期待したい」と述べた。
 その後、今回普通型コンバインを提供したヤンマーアグリジャパン農機推進部営業推進グループの渡瀬修梧氏が機械の概要を紹介。今回は収穫に普通型コンバインYH1150Aにコーンヘッダーを装着して使用。渡瀬氏は「普通型コンバインのリールヘッダーをコーンヘッダーに交換したほか、グレンシーブやコンケーブなどを子実用とうもろこし用のアタッチメントに取り替えている。コーンヘッダーはローリングカッターを装備し、茎葉部分を取り除いて子実のみを脱穀部におくることができる。作業条件としては、条間は60~75㎝、子実の水分は推奨で20~30%となっている。今回の圃場は条間75㎝で高さは2・3mほどなので問題なく作業できる」とした。また残稈の粉砕にはトラクタYT352AにIHIアグリテックのフレールモアを装着したものを使用した。
 今回の現地見学会の圃場を管理する富長生産組合の組合長でJA古川の大豆・麦・子実用トウモロコシ生産組織連絡協議会の会長も務める鈴木正一氏は今回の実証について「播種から収穫までの一連の作業でみると、水稲や大豆に比べ一番手間がかからない。播種したら2回雑草防除したくらい。そのため、大豆の中耕培土に力を注ぐことができ、大雨があっても品質を維持することができた。今回栽培するにあたって心配だったのが、台風と鳥獣被害。鳥獣害については、この辺で多いタヌキの被害は、タヌキの体高よりも雌穂の位置が高かったため、ほとんど影響がなかった。一方、台風や大雨については、当地では、7月に豪雨があったが、子実用とうもろこしへの被害はそこまでひどくなかった。特にこの圃場では播種前に明渠や弾丸暗渠を施工しており、排水性を高くしたことが功を奏したようだ。どの作物を作るにも排水性は重要。今回も水は溜まったが一晩でひいてくれた。また、風についても、根がしっかりと張っておりそこまで影響はなかった。周囲との関係もあるが、来年は面積を倍に増やしたい。ただ、今回、水田リノベーション事業に子実用とうもろこしが加えられたが、農家の経営も厳しいため、もう少し交付金なり助成なりを厚くしてもらいたい」と語った。
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 現地見学会終了後、JA古川の大豆センターの乾燥・調製施設(大豆センター自体はJA古川西部カントリーエレベーター敷地内に設置)がメディア向けに公開された。
 子実用とうもろこし向けに充てられていたのは、約7年前に整備された施設。乾燥機は子実用とうもろこし乾燥用に調整された最大8t乾燥可能なSDR80DM2(サタケ製)が計6台設置され、最大で48tの乾燥能力を持つ。取材当日は前日(9月12日)収穫した子実用とうもろこしが乾燥されており、JA古川の加藤勝・営農部長によると、温度は40℃超(取材時の乾燥機の表示は45℃)で13時間程度かけて乾燥を行う。張り込み時の水分は30%以下で14・5%まで下げる。通常の作業の流れとしては、夕方乾燥をスタートして、翌朝に終了。その後、飼料の調製を行うJA全農北日本くみあい飼料が同社の石巻工場に運ぶ。
 加藤部長は「乾燥能力は不満なく、掃除もしやすくて良い。ただ、現状の量であれば問題ないが、今後更に増えれば足りなくなる可能性もある。また、今は乾燥後はフレコンにいれて出荷しているが、できれば乾燥後そのままサイロに送りバラ出荷できるようになった方が良い。いずれにせよまだ1年目。これからしっかり頑張りたい」とした。

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