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野生昆虫の活用へ マニュアルで訪花状況把握 農研機構

農研機構はこのほど、野生の花粉媒介昆虫を積極的に活用するための調査マニュアルの開発のなかでカキの花粉媒介に野生昆虫のコマルハナバチが全国的に大きく貢献していることを明らかにした。
 日本の農業生産において、花粉媒介昆虫がもたらす経済的価値は約4700億円であり、その70%は野生昆虫によるものと推定されているが、その実態は不明な点が多く、十分に活用されていなかった。このため調査手法を開発し生産者にも利用可能な「果樹・果菜類の受粉を助ける花粉媒介昆虫調査マニュアル増補改訂版」として今年3月に公開。同マニュアルのための調査・研究を進める中で全国的なカキの花粉媒介昆虫相が初めて明らかになり、野生のハナバチ類が果たしている役割が解明された。
 これを受け、農研機構は島根県農業技術センター、森林総合研究所と共同で東北から九州にわたってカキの訪花昆虫を調査し、飼養昆虫のセイヨウミツバチに加え、野生昆虫のコマルハナバチが主要な訪花昆虫であることを明らかにした。主要な甘柿品種である「富有」の着果率はコマルハナバチが1回でも雌花に訪花すると大幅に向上し、複数回の訪花によって更に高まった。両種が1回の訪花でおしべに付着させる花粉数はほぼ等しいことから「富有」の安定した着果のためには、これらのハチによる複数回の訪花が効果的であることが明らかになった。
 今後、マニュアルを活用して個々のカキ園における野生の花粉媒介昆虫の訪花状況を把握することで地域単位で導入すべきセイヨウミツバチの巣箱数を適正化でき、コマルハナバチのような野生の花粉媒介昆虫を活用した省力的な栽培が可能となると期待される。また、前述のマニュアルは花粉媒介昆虫の調査方法等が掲載されており、初心者でも簡単に花粉媒介昆虫の訪花状況を調査できることから、多くの果樹園で野生の花粉媒介昆虫の活用が進むことが期待される。

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