農林業機械・農薬・資材についての動向を紹介する

受付時間 平日9:30~17:00

TEL 03-3831-5281

毎週 火曜日発行
 >  > 農研機構 高精度な生育予測へ 光合成速度の推定法開発

農研機構 高精度な生育予測へ 光合成速度の推定法開発

農研機構 高精度な生育予測へ 光合成速度の推定法開発
農研機構はこのほど、ガス交換測定を行わず、複数のセンシング技術を組み合わせることで光合成速度を推定する手法を開発した。
 近年、様々なデータを用いて農業生産の向上を図る、データ駆動型農業が推進されており、気象データや土壌データが作物の育種や栽培管理等に役立てられるようになっている。一方で、作物の健康状態や生産性に直接影響を与えるものは、作物自身の生理生体反応(光合成、蒸散、転流など)であり、それらのデータをうまく活用できれば、更なる生産性の向上が期待できる。しかしながら、日本の農業において作物の生理生体反応のデータを利用している例は少ないのが現状。この原因としては、気象や土壌のデータの取得と比較して、より多くのコスト・労力・時間がかかることが挙げられる。
 例えば、光合成の研究において最もよく利用される市販のガス交換測定装置は高精度なガス分析計と高度な環境制御機能を内蔵しており、非常に高価で重量も約10㎏と重く、ほ場内を移動しながら測定するには労力を要する。また、装置内の環境と光合成速度が安定するまでに数分から数十分の時間を要するため、大量のデータ取得には向いていない。そのため、低コスト・簡易・迅速に、作物自身の生理生体反応の情報を取得する手法が求められている。
 開発した手法は、光合成生化学モデルと複数のセンシング技術(クロロフィル蛍光、分光反射率、葉温、環境要素の計測)を組み合わせて、ガス交換測定を行わずに葉の光合成速度を低コスト・低労力・高速で推定するもの。同手法にかかるコストは、全ての測器を合わせてもガス交換測定装置の5分の1から10分の1程度。更に、同手法に必要なセンサは軽量化が進んでおり、全てのセンサを合わせて1㎏程度にすることもできる。また、用いられるセンシング技術は全て数秒以内に計測が完了するため非常に高速であり、葉に非接触で測定可能なので近年発展が著しいリモートセンシング技術との相性も良いと考えられる。
 今後、実用的な装置の開発や、更に簡易な手法の開発を行うことで、光合成の情報を用いた育種・栽培研究の高速化や生育予測の高精度化が期待される。

関連記事

農研機構 茶園除草機を開発 手取作業を大幅に省力化

農研機構 茶園除草機を開発 手取作業を大幅に省力化

農研機構 データ連携更に加速 農機API利活用コンソ設立

メロン4品種育成 世界初、退緑黄化病に抵抗性 

メロン4品種育成 世界初、退緑黄化病に抵抗性 

農研機構 有機の大豆拡大へ 関東向け標準作業手順書

農研機構 有機の大豆拡大へ 関東向け標準作業手順書