JA帯広かわにし 未来農業スタート 大規模スマート実証実施
未来農業スタート 大規模スマート実証実施
帯広市川西農業協同組合(JA帯広かわにし)が管轄する当該地域では、『デジタル田園都市国家構想交付金』を活用することで、ロボットトラクタ18台と農業用ドローン25台を導入した。これを記念して7月21日には、北海道帯広市川西町の同農協本店において、「スマート農業オープニングセレモニー」を開催。スマート農業の現場実装を加速し、農業持続を図る。
セレモニー会場にはヤンマーアグリのロボットトラクタYT5114R、DJIのT25がずらりと並び、スマート農業の新しいステージの始まりを強く予感させる中、式典がスタート。出席者は約100名で同取り組みの関係者や地域生産者が集まった。
冒頭、同農協の有塚利宣代表理事組合長が登壇し、「今日は日本農業にとっても記念すべき式典だと思っている」と力強い第一声。国民の命を守る農業という観点から、食料安全保障の強化が基本法の改正に加えられ、これらを実現するためには地域農業の持続が不可欠であるという認識を示し、その上で「少子高齢化が進んでいる十勝では、その課題解決のためにいち早くデジタル農業に取り組み、『デジタル田園都市国家構想交付金』を活用することになった。今日、そのお披露目となる。また本日からスマート農業を現場実装するための実証に取り組んでいく。実際に使用する中で、新たな提言を行っていく」と取り組みへの思いや経緯を語った。
その後、出席者が見守る中、導入機によるデモンストレーションを実施。ロボットトラクタを無人走行させるスイッチを有塚組合長が押すと、ずらりと整列しているYT5114Rの右奥より、デモ機が無人で姿を現し、式典会場を半周ほどしてその性能を披露。1枚の圃場の9割を自動で無人作業ができるもので、スマートアシストにより、稼働状況やコンディションのモニタリングも行われる。また続いて農業用ドローンT25が2機舞い上がり、空中散布(当日は水を使用)を実施。地域農業の新しい力が鮮明に印象づけられた。
ロボトラの無人走行デモンストレーション
事業概要を説明する佐藤特任教授
デモの後は帯広市の米沢則寿市長が「今回の取り組みは、〝食料の安全保障の基をつくる幕開けとなる〟との組合長の言葉に心が震えた。これらの機械が川西地区の各所で稼働する姿を楽しみにしている。帯広市も、しっかりと役割を果たしていく」と挨拶。続いて十勝総合振興局の野口正浩局長が「今後、高度なスマート農業の確立・導入が図られ、十勝農業が将来に亘って全国に安全・安心で高品質な農産物を安定的に供給する役割を担っていけるよう、連携を図る」と意欲を示した。
今回の取り組みでは『デジタル田園都市国家構想交付金』を活用し、帯広市が展開する『帯広市スマート農業推進事業』に対して支援が行われ、スマート農機にかかる購入費用が約1/2補助され、地域の若手で意欲的な生産者が導入した。またこれと共に、スマート農機を活用した実証事業が対となっており、『地域デジタル基盤活用推進事業』が実施される。その代表機関がJA帯広かわにしで、帯広畜産大学、ヤンマーアグリ、ヤンマーアグリジャパン、東洋農機などがコンソーシアムに加わる。
実証事業の概要については、帯広畜産大学でロボットトラクタの研究をしている佐藤禎稔特任教授が説明を行った。「ロボットトラクタには通信距離の課題があり、今回は100~1000mの通信を可能にするWiFi―HaLow(ヘイロウ)という新技術の実証を行う。もう一つは無人ロボットトラクタの複数台同時制御により、作業効率の向上を検証する」。
規模拡大が進行する中、同地域でも人手不足は深刻であり、スマート農機による課題解決に大きな期待がかかっている。
ロボットトラクタは馬鈴薯栽培で実証が行われ、プラウ耕から整地、播種、早期培土、収穫の一連作業に対して活用され、隣接圃場で複数同時制御を行う。今回導入されたロボットトラクタはWiFi―HaLowなどの新技術に対応することが要件となっている。
ドローンでは映像解析による長いも罹病株判定・小麦登熟判定・倒伏判定が実施される。
メッセージを届ける北海道帯広農業高等学校の生徒達
式典には未来の農業を担う存在として北海道帯広農業高等学校の生徒も出席し、壇上より「最先端の機械が地域に導入され将来の担い手として大変嬉しい」と気持ちを伝え、同校に通い川西町育ちの川副誠志さん(3年生)が『未来の自分』と題し、「最先端技術を使った未来指向型の農業経営を目指している。この川西町が新たなステージへ進めるよう精一杯頑張っていく」と、熱くメッセージを届けた。
式典の最後は同地域でのスマート農業のスタートとして、出席者がクラッカーを鳴らし、新しい農業の始まりを告げる号砲とした。