農水省が令和9年度から水田政策を見直し!新たな支援の方向性とは?
農水省が令和9年度から根本的に見直すこととしている水田政策について、その方向性がわかった。これまで水田を対象として支援してきた「水田活用の直接支払交付金(水活)」については、作物ごとの生産性向上等への支援へと転換する。そのため令和4年度から厳格化した「5年間水張りがなかった場合、交付対象から外す」との要件は求めないとの見通しを示した。これらの方向性はあくまで農水省が示したものであり、これをベースに今後議論が行われる予定だ。
見直しの具体的な方向性として、水田活用の直接支払交付金(以下、水活)については、「水田」を対象とする制度から作物ごとの生産性向上への支援へと転換する。このため、水活において、令和4年度から厳格化された「5年水張りの要件」については、令和9年度以降は求めない。新制度となるまでの令和7年・8年については、連作障害を回避する取組を行った場合、水張りをしなくとも交付対象とする。
令和9年度からの作物ごとの支援のうち、米については、国内外の需要拡大策、大区画化・スマート技術の活用・品種改良等の生産性向上策等を強力に推進。輸出を含めた米需要拡大を目指し、新市場開拓用米、米粉用米等を支援する。
国産飼料については、生産性向上を図るため、飼料用米中心の生産体系を見直し、青刈りとうもろこし等の生産振興を図る。
麦・大豆、飼料作物については、食料自給率向上の費用対効果を踏まえて、水田、畑にかかわらず生産性向上に取り組む者への支援へ見直すべく検討を進める。
このほか、有機や減農薬・減肥料については、主食用米も対象として支援を行う。
水活のうち、産地交付金については、現場の実態を調査・検証したうえで、水田・畑にかかわらず、中山間地域等の条件不利地域も含めて、地域の実情に応じた産地形成が促進される仕組みとするように見直しを検討する。
また、農業者が急減するなか、地域計画の実現に向け、担い手が生産性の向上を伴いながらより多くの離農農地の引受を進めていけるよう、農地の集約化等への支援制度についても、既存制度を見直して強化する。
このほか、日本型直接支払のうち、中山間地域等直接支払については、条件不利の実態に配慮し、支援を拡大。多面的機能支払については、活動組織の体制強化をより手厚く支援する。
これらの予算については、現行の水活の見直しや見直しに伴う既存施策の再編で得られた財源を活用、必要な予算を確保していく。
なお、今回の見直しの方向性については、あくまで方向性であり、これをベースに今後議論が行われる見込みだ。農水省では、7年度中に方向性をまとめるとしているが、現在検討中の食料・農業・農村基本計画に盛り込めるものは盛り込むため、企画部会での議論も行いたいとしている。 今回示された方向性について、江藤農相は2月4日の定例会見で「前回の水活の見直しは、やらなければ、農業者に大変な事態が予想され、間違いではなかった。一方で、例えば、畑で同じものを作っても、水田から転作すれば水活が出るが、畑で作っていたら出ないというのは、生産の現場から見れば、歪な構造だったと思う。だから、水田政策は水田政策、畑地(で作る作物)は畑地(で作る作物)と、これからはしっかり峻別して支援していく。予算については、令和9年度からの実施になるので、令和8年夏の概算要求に、検討内容をつなげる」などとした。