伐って・使って・植えて・育てる 再造林の加速化に向けて
わが国では、戦後造成された人工林が伐採期を迎えている。二酸化炭素の吸収や国土保全といった森林の持つ機能の発揮、次世代への持続的な林業の継承のためには、「伐って・使って・植えて・育てる」という森林資源の循環利用を進めることが重要。一方で、主伐面積に対する造林面積は近年約3~4割で推移しており、主伐後の再造林の促進が喫緊の課題となっている。そのようななか、林野庁では低コスト造林技術など、再造林対策の推進に向けた取組事例をまとめた。
林野庁のまとめた取組事例から、主な取組をみてみたい。
【一貫作業システムの取組事例】(島根県出雲市)。
スギ裸苗を0・25ha植栽(植栽密度:1ha当たり2000本)。主伐の素材生産者と造林・保育を担う森林組合で協定を締結した後、現場ごとの地拵え状況を確認し合うことで現場作業の効率化を図り、再造林の低コスト化に取組んだ。
作業内容は、伐倒(チェンソー)―集材(グラップル、フェラーバンチャ)―造材(チェンソー)―積み込み(グラップル)―苗木運搬・植栽(人力)。
伐採者と造林者による事務協議と現場協議を繰り返し行うことで、人員や機械の工程調整が図られ、約2割のコスト低減に繋がった。また、伐採者が機械やチェンソーを用いて残材を細かくすることにより、造林者の作業が刈り払いとレーキによる軽作業のみに軽減。更に、苗木の仮植場所を伐採者の機械で耕す等、建設的なアイデアが提案され、現場における工夫と改善意識が進んだ。
【ドローン運搬と人力運搬の比較事例】(広島県庄原市東城町)。
ドローンの運搬効果が低いとされる近距離での効果を実証。1・4haのヒノキ植栽地(1ha当たり2000本)を概ね同面積に分割し、ドローン運搬と人力運搬の作業効率を比較した。平均勾配19度、植栽地中央までの運搬距離124・5m。
比較の結果は、ドローン運搬が人力運搬に比べて約1・6倍の作業効率、運搬距離が短くても一定の効果がある。今後、現場条件を変えて検証を重ね、ドローン運搬がどのような条件で効率的かを明らかにするとともに、成果の普及に努める。