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地球温暖化と農業の課題:2023年の高温被害と農水省の対応策

今年の夏も記録的な暑さであった。気象庁によると、2023年の6月から8月にかけての気温は昨年と並び、観測史上最も高温であったという。

昨年の異常高温は作物にも大きな影響を与えた。たとえば、米の品質(1等比率)が低下した地域もあった。今年も同様に厳しい夏であったが、8月31日時点のデータでは、稲刈りが本格化する前の段階で1等米の比率は63.7%である。この数値は他の年と比較すると決して高くはないが、昨年よりは良い結果になるのではないかとの声もある。台風や大雨の影響は依然として懸念されるものの、昨年ほどの被害は避けたいところである。

とはいえ、異常気象や地球温暖化に対する対応は今後も長期的な課題であり、今年が少し良かったからといって対策が不要になるわけではない。いかに継続的に対策を講じていくかが重要であり、農林水産省にはそのための支援策の充実が求められる。

昨年の高温による被害について、農林水産省は9月30日に「令和5年地球温暖化影響調査レポート」を発表した。水稲では、出穂期以降の高温により白未熟粒が発生し、全国で約5割の影響が見られた。北日本・東日本では約5割、西日本では約4割の地域で影響が報告されている。これに対して、発生を抑えるための対策として、水管理の徹底、適期移植や収穫の実施、高温耐性品種の導入(令和5年産時点で約18万ヘクタール、主食用作付面積の約15%)が行われた。また、水稲以外では、りんごで着色不良や着色遅延が全国の3割程度、ぶどうでは約2割で確認されている。

高温対策については、各都道府県での支援が着実に進められているものの、農林水産省の予算には「高温対策」「気候変動対策」として明確に打ち出された項目はない。令和5年度補正予算では「高温対策栽培体系への転換支援」が実施されたが、当初予算には反映されておらず、昨年の急激な気温上昇に対する一時的な対応に過ぎない印象がある。

今後、気象がどのように変化していくかを見通すのは難しいが、平均気温の上昇が続くことは確実である。だからこそ、今のうちから長期的な視野で準備を進める必要がある。すでに令和7年度予算の概算要求は提出されているが、今後の補正予算や来年度以降の当初予算においても、高温対策や気候変動対策への支援を強化し、50年、100年先を見据えた農業の構築を目指すべきである。

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