多用途電動ビークル等 みどり戦略実現へ 7年度予算で研究開始土壌全面被覆敷設技術

農水省は令和7年度予算で、新たに中山間地域に対応したマルチユース電動ビークルの開発など、環境負荷低減対策研究に前年度当初比1億2000万円増額の9億3200万円を要求。みどりの食料システム戦略に対応した技術の研究開発を推進することとした。今回の「環境負荷低減対策研究」では、前述の電動ビークルのほか、計8件の新規研究をスタート。継続課題の計12件とあわせて20件の研究に取り組む。いずれの研究も農水省の委託プロジェクト研究となる。
先ごろ明らかになった農水省農林水産技術会議事務局所管の令和7年度予算概算要求のうち、環境負荷低減対策研究では、8件の新規研究をスタートさせる。そのうちの一つが中山間地域に対応したマルチユース電動ビークルの開発だ。概算要求額は、5000万円を計上した。
中山間地域は耕地面積、農家数、農業産出額の約4割を占め、我が国農業において重要な役割を果たしている。一方で、中山間地域は作業道が狭く傾斜していたり、多様な品目が生産されていて人力での運搬作業が多く、労力がかかっているが大型農機は導入しづらい。また、近年は人口減少に伴い、給油所も減少しており、農機への給油も大変になっている。こうしたことから、様々な農機を効果的に電化し、導入・運用することが求められている。電動農機については小型の運搬台車などで民間の開発例があるが、メーカーにより仕様がバラバラで共通化されておらず、共通仕様等による低コスト化とそれによる農業の生産性向上が求められている。
今回の研究開発では、小型電動農機の開発において心臓部となる動力供給部を電化、ユニット化。現場ニーズを踏まえ、共通ユニットと作業環境に応じた足回り等を適切に組み合わせることのできるシステムを構築することでマルチユースに活用可能な電動ビークルを開発する。その際には現場のフィードバックを得つつシステム開発するとともに、試作機による検証も行う。
このほかの技術開発では、「環境低負荷型の化学農薬施用技術の開発」には4000万円を計上。畑作物や園芸作物栽培において、土壌くん蒸剤の使用量を削減するため、地下深層への施用技術と有効成分の揮散を抑えるガスバリアーフィルム性能の評価基準、土壌全面被覆の敷設技術を開発する。加えて、環境低負荷型の施用技術の導入による病害虫防除効果の持続性と環境負荷低減効果を分かりやすく評価する手法の開発に取り組む。
このほかにも、「化石燃料不使用園芸施設への移行のための周年安定生産システムの開発」に5900万円、「化学肥料低投入型の高品質国産飼料の生産と飼料品質の迅速評価技術の開発」に3600万円、「有機農業の安定生産に資する畑作物を核とした次世代水田輪作モデル体型の構築」に4700万円、「有機農業の定着に活用可能な土づくり推進技術及び土壌生物性指標の開発」に5700万円を計上している。
いずれの研究課題についても期間は令和7年度から9年度。
なお、継続課題としては、省力的なIPMを実現する病害虫予報技術の開発(令和8年度まで)、子実用とうもろこしを導入した高収益・低投入型大規模ブロックローテーション体系の構築プロジェクト(令和7年度まで)、園芸作物における有機栽培に対応した病害虫対策の構築(令和7年度まで)など12件がラインナップされている。