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水田メタン削減プロジェクト 日・フィリピンが協力 二国間クレジット制度始動

水田メタン削減プロジェクト 日・フィリピンが協力 二国間クレジット制度始動

水田メタン削減PJ 日・フィリピンが協力 二国間クレジット制度始動

       髙橋政務官も駆けつけた 

 農水省は、アジア開発銀行と協力して二国間クレジット制度(JCM)を活用した農業分野の温室効果ガス削減に向けて、フィリピンとの間で、水管理による水田メタン削減の具体的手法(方法論)案を公表した。間断かんがい技術(AWD)という水田の水管理手法で、これに基づく民間プロジェクトが進み、クレジットが発行されれば、農業分野では世界初となる。 アジアにおける農業分野のGHG排出量のうち、稲作による水田メタンは23%を占める。メタンの温室効果はCO2の28倍と言われ、アジアでの水田メタン削減は世界のGHG削減において重要な位置を占めている。水田からのメタン発生を減らすには、水を抜くこと(落水)が有効な手段で、日本ではJ―クレジット制度で「水稲栽培における中干し期間の延長」の方法論により、クレジットが発行されている。
 日本とフィリピンが活用するJCMは、2国間のクレジット協定によりメタン削減を目指すもので、農水省は令和5年度からアジア開発銀行(ADB)に資金を拠出。今年1月からフィリピン政府やベトナム政府、国際機関や研究機関を交えた有識者委員会を開催し、フィリピンとベトナムの水田からのメタン削減に関してJCMを活用した具体的手法(方法論)の作成を検討。そして6月25日の有識者委員会で、フィリピンにおける間断かんがい技術(AWD)による水田メタン削減に関する方法論案が合意された。AWDの方法論は、フィリピン現地の事情を勘案した削減方法であり、科学的エビデンスに基づき、さらに現地農家への過剰な負担はないとされ、生産性との両立も図っている。また実測と検証の仕組みを組み込んだという。
 ベトナムでの実証実験ではメタンを35%削減でき、収量も22%増加した。
 農水省は6月28日、この取組みを広く周知し、水田メタン削減を始めとした農業分野のJCMの活用を促進するため、国際農研及び農研機構と共催で記者発表会を開催した。
 冒頭、高橋光男農林水産大臣政務官が登壇し、「温室効果ガス削減に関心の高いパートナー国と協力して削減し、その成果を我が国とパートナー国で分け合う異国間クレジット制度が『JCM』だ。科学的根拠に基づく水田メタン削減の方法論を取りまとめることができた。日本とフィリピン両国の関係者にとってウィンウィンの関係を築き、農業分野での対策を通じた世界の気候変動対策に大きく貢献する契機となることを祈念している」と力強く述べた。
 続いて、フィリピン農業省事務次官のクリストファー・モラレス氏は「フィリピンは世界の温室効果ガス排出量に占める割合はわずかだが、気候変動の影響を強く受けている。気候変動に強い低炭素の未来を目指し、皆さまと相互に強力なパートナーシップを築いていきたい」と話した。
 チンフェン・シャンADB農業・食料・自然・農村開発室上級部長は「日本のみどりの食料システム戦略の取組みやアジア地域での活動も高く評価している。今後も日本政府及び日本の民間部門と緊密に協力し、日本の革新的な技術を活用してアジア及び太平洋地域でより持続的な食料・農業システムを構築していきたい」と述べた。
 その後、環境省、農林水産省、国際農研及び農研機構からJCMの取組や本方法論案の内容説明等の発表が行われた。
 国際農研の南川氏によると本方法論「水田水管理によるメタン排出削減」の内容はシンプルだが、捕捉手引きなど3つを付録として作成。このなかで、観測方法や排出量計算方法については、フィリピンに特化した内容にしたという。また水田の水位観測は農家が目視で行っているが、将来的にリモートセンシングのような高度な技術が使われることも想定している内容にしたという。
 民間プロジェクトの紹介では、現地フィリピンで水田メタン削減のプロジェクト参加を表明している各企業からフィリピンでの実施計画と今後の展望について発表が行われた。業界からはクボタ、ヤンマーが参加している。

 

クレジット発行への展望 クボタ、ヤンマーも参画

        民間プロジェクトの参加企業 

 農水省は、フィリピンの水田で間断かんがい技術(AWD)を用いてメタン削減を図る二国間クレジット制度(JCM)の方法論を完成させた。現地の民間プロジェクトでは、クレジット発行のデベロッパー以外にも農機、ガス、損害保険など、さまざまな企業が連携し取組んでいる。業界からは、クボタ、ヤンマーも参画。同省が開催した発表会(関連記事1面)では、各グループの連携状況やプロジェクトのねらい等を共有。そのなかで「クレジットの信頼性の確保」にも言及された。【クレアトゥラ・クボタ・東京ガスの取組み】クレアトゥラは、フィリピンで2023年10月から1300‌haで実証を行い、5000‌haへの拡大も順調に進んでいる。現地では、水管理や種子選択、肥料のやり方などの総合的なスクールプログラムを実施し、技術向上と所得向上を図っている。メリットとしては、かんがい水の効率化により節水ができたことで、他の生産者の水不足を解消できることにもつながった。また、販売手数料の還元や農業スクールのスタッフの雇用など経済的なインセンティブも生み出すことができた。
 クボタはアジア地域で年間6000億円の売上げがあり、その価値を届けてきた。その一環としてこの事業を位置づけている。アジアにおける販売ネットワークや60年以上の事業実績を活用して、活動を進めていくとした。
 東京ガスグループは、「信頼性の高いオフセット手段の拡大」を位置付け、今回のプロジェクトに参画。信頼性の高いクレジットを活用するための仕組み作りを推進する。フィリピンでのAWD実証においては、農家のインタビューを通じてAWDの効果を確認。そして生物多様性への影響について現地専門家の意見を収集した。JCMの普及拡大には、クレジット創出コストと信頼性確保のバランスが非常に重要になるとした。
【グリーンカーボン・大阪ガス・三井住友海上・兼松・日本工営の取組み】フィリピンのバタンガス州でのプロジェクトは1000‌haから2万‌haに拡大していく予定だ。フィリピン大学とのAWD実証実験で収量向上とメタン削減効果を確認。
 重要なポイントとして、水管理と農家のマネジメント、継続性、グリーンウォッシュ対策、リスク対策を挙げ、各社の協力が必要であるとした。例えば、日本工営のかんがい技術や兼松との協力で環境配慮米としての価値を作り、農家の収入源を増加させる。また作業実施記録のプラットフォーム「Agreen」での管理。
 三井住友海上は、天候指数保険を提供し、雨天時のクレジット創出リスクを軽減する。
 大阪ガスは、グリーンカーボンの活動で創出したクレジットを国内企業に広めていく。クレジットの品質や背景に関心を持つ企業のニーズに対応していくとした。
【フェイガー・ヤンマーアグリの取組み】ベトナムでのプロジェクトは最終目標100万‌ha、年間600万tの削減を目指している。ベトナムの国営農業機関との連携で、信頼性の高いクレジットを創出する。フィリピンではヤンマーと協力し、15万‌haを目標に推進していく。ヤンマーは、フィリピンでの農機販売とアフターセールスで事業展開。ヤンマーフィリピンも加わり幅広い顧客との信頼関係を基にAWDの活動を支援していく。

 

AWDとは?

 

           国際農研資料より

AWD(Alternate Wetting and Drying)は、水稲栽培における水管理手法の一つ。この方法では、水稲の栽培期間中に水田の水を抜いて地表面を十分乾燥させた後、再度潅水するというプロセスを複数回繰り返す。環境保護と水資源の節約、そして稲作の安定を同時に実現できる有効な技術だ。
【AWDの主な利点】①メタン排出の削減=水田に水を張りっぱなしにしないことで、メタン生成を抑え、温室効果ガスの排出を減らす。メタンは二酸化炭素の28倍の温室効果を持ち、地球温暖化に大きく影響する。フィリピンでは全産業の温室効果ガス排出量の約20%が水田由来のメタン。AWDにより、このメタン排出量を約30%削減できる②水の節約=かんがい用水の使用量を6~47%削減できる。特に水資源が限られている地域で有効で、ASEAN地域の多期作で水不足が懸念される地域では特に注目されている③稲作の安定=水管理で適切な稲の成長を促進し、収穫量も増加する。

 

異業種連携、各社に問う

 農林水産省輸出・国際局国際戦略グループの米田グループ長は、プレゼンテーションの後、プロジェクトに参画する各社に質問を投げかけた。


 ――フィリピンの農家に対し行動変容を促していくコツは。


 クレアトゥラ「エビデンスに基づいた丁寧な説明に加え、実際に取組み、収穫量が増えることを実感してもらうことで徐々に広がっていく。地道な努力が必要だ」


 ――企業間の連携が重要になるが、どのように連携先の企業を見つけるといいか。


 フェイガー「目指すところが同じで、思いが共通していることが大事。生産者含めてハッピーになる取組みをしていきたい」


 ――他業種の企業は、プロジェクトのどのような点に魅力を感じているのか。


 クボタ「我々の農機を使っていただき、農業の近代化や効率化を進めてもらいたい。国内ではKSASという農業ソリューションサービスを展開しているが、これにクレジットシステムを組み合わせることで、より利便性の高いものになると考えている。」


 ヤンマー「クレジットの信頼性を重視しているため、最新の機器を使って様々な情報や記録をサポートできる」


 ――クレジットの創出において信頼性を重視しているが、AWDはその要件を満たしているか。


 東京ガス「AWDは信頼性の確保ができる方法論だと思う。ただし、信頼性を追求するほど高品質になるが、コストとのバランスを見極めることも重要だ」
 大阪ガス「顧客企業のヒアリングでは、誰がクレジットを提供しているのかも評価している。また、AWDは自然系のクレジットであることに加えて、JCMで2国間認証を受けている点も信頼性につながっている」


 ――天候指数保険をクレジットと組み合わせる発想と、リスクについてどう考えているか。


 三井住友海上「農家からもニーズがあり、特に海外では特に契約が多く、ノウハウは十分」。

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