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民間JCM1号へ クボタ など3社比で水田メタン削減実証

民間JCM1号へ クボタ など3社比で水田メタン削減実証
クボタ(北尾裕一社長、大阪市浪速区)、クレアトゥラ(服部倫康CEO、東京都港区)及び東京ガス(笹山晋一社長、東京都港区)の3社は、水田由来のメタン排出削減が期待される水管理手法「Alternate Wetting and Drying(以下、AWD)」のフィリピンにおける普及および民間JCM(二国間クレジット制度)プロジェクト登録に向けた実証事業に取り組んでいる。
【AWDとは】AWDは、水稲の栽培期間中、水を抜いて水田の地表面を十分乾燥させた後、再度湛水するという潅水制御を複数回にわたって繰り返す水管理手法。水田土壌内にはメタン生成菌が存在し、嫌気条件下では稲わらなどの有機物を餌に温室効果ガスであるメタンを発生させるが、一時的に水田から水を抜くことで常時湛水時より土壌中により多くの酸素を供給すると、メタン生成菌の活動が抑制され、メタン排出量が低減する。
 メタンは二酸化炭素の28倍の温室効果を持ち、地球温暖化において二酸化炭素の次に大きい寄与因子と言われている。稲作が盛んなフィリピンでは、全産業で排出される温室効果ガスのうち約20%が水田由来のメタンと推定されている。
 AWDにより、水田由来のメタン排出量を約30%、かんがい用水の使用量を6―47%削減できるとされる。このため、ASEAN内の多期作で水不足の懸念のある地域において、農業分野における温室効果ガス削減の有効な手段として注目されており、さらにAWDに適した栽培管理により収量増加も期待できることから農家の収入向上への貢献も期待される。
【民間JCMプロジェクト化への期待】日本の農林水産省は、2022年にアジア開発銀行(以下、ADB)と締結した協力覚書(MOC)に基づき、ADBを事務局として農業分野におけるJCM活用推進に向けた専門家委員会を設置。ASEAN地域の水田由来のメタン排出量削減およびAWD普及促進のためのMRV構築を検討しており、JCM方法論へのAWDの採用が期待されている。
【実証事業の概要】同実証事業では、農家に対し種子の選定方法や土壌の管理方法、AWD実施方法を含む農業の高度化に資するトレーニングを実施し、AWDの普及や農家の収益拡大、カーボンクレジット創出に必要なデータ取得に向けた施策の検証により課題やリスクを抽出する。実証の成果に基づいて、より実効性と信頼性が担保された方法論を構築し、ASEAN地域での農業分野における初の民間JCMプロジェクト登録および高品質なカーボンクレジットの創出を目指す。
 ▽期間=2023年9月~2024年5月▽場所=フィリピン共和国パンガシナン州▽水田面積=約1300‌ha▽参加農家=約600軒。
 クボタの農業分野、特にASEANの水稲栽培における知見およびネットワーク、クレアトゥラのカーボンクレジット分野におけるプロジェクト開発およびクレジット創出の知見、東京ガスのカーボンクレジット分野の信頼性確保に向けた取り組みにおける知見を活用した3社での価値共創により、ASEAN地域での農業分野における初の民間JCMプロジェクト登録をめざすとともに、フィリピンにおける持続可能な農業の普及と社会全体での温室効果ガス排出削減に取り組む。

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