諸岡 現場で自動運転フォワーダ実演
製品化へ一歩前進 省人化と生産性向上へ期待
諸岡=諸岡正美代表取締役CEO、茨城県龍ケ崎市庄兵衛新田町358=は1月26日、茨城県常陸太田市内の国有林現場で森林総研などと共に開発を進めている「自動運転フォワーダ」の現場デモンストレーション・説明会を行った。全長約1.6㎞、高低差50mの作業道を木材を積み込み走行。諸岡社長自らも体感して有人と遜色ない作業が行えることを披露した。
諸岡社長も自ら体感
林業従事者の減少や無くならない労働災害といった課題解決に向け、諸岡では令和2年度から林野庁補助事業を通じて3D―LiDARとSLAM技術を活用したフォワーダの自動運転技術の開発を進めている。昨年度の開発実証では森林総合研究所、パナソニックアドバンストテクノロジー、東京農工大学、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)と共同で、自動走行の精度向上を目指した取り組みに着手。その結果発表を兼ねてメディアを招きデモンストレーションを行った。
自動運転の構成は、従来の油圧パイロット式走行レバーから電子制御式の走行レバーに改良してスムーズで快適な操作感を実現した最大積載量5.5tの最新フォワーダMST―1000VDLに3D―LiDARとSLAM技術を駆使した自動運転キットを搭載。自動運転を担当するパナソニックアドバンストテクノロジーの松井敦史課長によると「3D―LiDARで点群マップを作成し、SLAMによりマップ上で位置情報を特定できることを活用し、自動運転を行う前に人の手で走行して記録した経路や速度をそっくり忠実に再現する。自動化の取組みはキャリアダンプで2018年から着手し、林業機械では4年目。今年度から材を積み込んでの試験を開始した。昨年度より制御も高度化させ、初めて乗る人も上手に運転しやすくなるよう図っている」と説明した。
デモンストレーションは林道を含めた全長約1.6㎞の作業道。幅員は3m強で、途中にS字カーブを含めた上り勾配や約25度の傾斜地点を含む高低差50mの現場を木材を積み込んで走行した。途中のポイントで走行している様子を見ると、想像していた以上に安定しつつ軽快に進んでいたことに驚きの声が上がった。デモでは監視役として運転席にオペレータが乗り込んだが、もう1周目には諸岡社長自ら乗り込み自動運転を体感。「自分より上手で、通常の有人でのオペレーションと何ら変わらない」と笑顔で感想を述べた。
林内の通信網を整備してGNSSを併用すれば、更に精度の高い作業とトラブル発生時の対応も迅速に行えるようになるとのこと。「林業現場は時間と共に状況が刻々と変化する。そうした変化にも対応できる可能性が見えた」と森林総合研究所林業工学研究領域収穫システム研究室の中澤昌彦室長。関係者いずれも無人走行については手応えを感じており、伐採した木材を自動運転で運ぶフォワーダが活躍するのが遠くないことを感じさせた。
今後の課題に上げたのが予防安全と運用方法。市販化に向けて現場に導入できる価格の実現も一つであり、今回も自動化機器について低価格の製品で試していた。
現場を提供した堀江林業の堀江賢一社長(57歳)は「ウチの現場ではトップクラスの急な場所でテストを行ったなと感心した」と述べた上で、「若い作業員を希望しているがなかなか入ってこないのが現状。人材集めが難しい中で人が減らせる機械はありがたい。フォワーダは操作しやすいが人手がかかる。ウチは現在4台のフォワーダが稼働しているが、無人化できれば、その分を伐採に回すことができ生産性を上げられる」などと期待感を示していた。
諸岡社長は「林業ではオペレータ不足が大きな課題であり、こうした自動化技術が求められるのではないかと森林総研様をはじめ協力企業の皆様と取り組み、今回お披露目できる形にまで持ってくることができた。自動運転フォワーダは人手不足解消だけでなく、安全作業の実現にも役立つので、より精度の高く安全な自動運転化を図り、3年後を目途に販売化を目指したい」「今後はフォワーダ複数台での連動やハーベスタオペレータなど別の重機から監視または操作するといった応用利用について森林総研様などからアドバイスをいただきながら製品化に向けて進めていく」と意気込みを述べた。