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岩手県で広がるスマート農業 岩手県農林水産部農業普及技術課 総括課長・竹澤利和

岩手県で広がるスマート農業 岩手県農林水産部農業普及技術課 総括課長・竹澤利和
中山間地での技術確立
県農業の実情に即し普及へ

スマート農業は、ICT(情報通信技術)やロボット技術などを活用した農業で、これにより作業の高精度化や自動化、省力化等が期待されています。これらの新技術を労働力不足への対応や生産性向上、安心・安全な農産物生産につなげていくため、県としてスマート農業技術の導入推進を図っているところです。
 平成29年度には、産学官民が幅広く参集した「いわてスマート農業推進研究会」を設立し、最先端のスマート農業機械や新技術を展示する「いわてスマート農業祭」を3年間、開催してきました(写真1)。この農業祭では、参加企業90社程度の出展と毎年2万人を超える来場者があり、スマート農業の周知を図ってきました。また、平成30年度以降は、農業祭とは別に「いわてスマート農業推進シンポジウム」を開催し、スマート農業技術の実証や導入事例を発表し、活用策について農業者や関係機関・団体の皆様と意見交換を行ってきました。本年のシンポジウムでは「データを活用したスマート農業の実践」をテーマとして、スマート農業導入経営体のトップランナーを招いた事例報告の他、スマート農業製品等の展示会、企業によるミニセミナー、出前講座等を予定しています。また、75回目の岩手県全国農業機械実演展示会も併催となります。改めて、本全国農機展の3年ぶりの開催を心よりお喜び申し上げるとともに、主催の岩手県農業機械協会を始めとする関係各位の御尽力に敬意を表し、展示会の御成功を祈念いたします。
【岩手県のスマート農業の現状】
《人工衛星による高精度測位を利用した自動操舵システム》自動操舵システムにより高精度に直進作業できる田植機やトラクタの導入が県内でも増えてきています。また、無人運転も可能なロボットトラクタも導入が始まっています。この他、既存のトラクタに後付けできる自動操舵システムの導入も進んでいます。高精度な作業を行うために必要なRTK基地局は、花巻市が先行設置してからは、県内各地に設置され、主要な水田地域で自動操舵システムによる高精度作業が可能となっています。また、携帯電話等を利用したネットワーク型RTK測位方式により高価な固定基地局が不要な高精度測位サービスが提供されるようになり、露地野菜作のような固定基地局のエリア外となる地域でも導入が始まっています。今後は、スマート農業の効果的な展開に向けて、スマート農機に対応した圃場整備が求められるところです。
《施設園芸での環境モニタリングと環境制御》県では、これまでに県内数カ所で、産学官が共同で製品化した複合環境制御盤「FARMATE」の導入実証を行い、飛躍的に増収益する結果が得られています。また、中小規模のパイプハウスでも低コストで環境制御技術を導入できる取組を始め、研究機関や普及組織が地元の民間企業等と連携し、低コストで導入できる加湿システム「プラントミスト」、小型光合成促進機「KCA―1000」を製品化し、県内6カ所で導入実証を行っています。その他にも、環境モニタリングと生育調査データを用いて、ウィークリーレポートを作成し、グループで意見交換することで栽培技術の向上を図る取組も行われています。
《家畜の遠隔監視》牛に体温センサや加速度センサを装着して、発情や疾病を早期検知するシステムの実証が行われています。また、ネットワークカメラを牛舎に設置し、分娩を遠隔監視する技術も急速に普及しています。近年は、安価なネットワークカメラが流通するようになり、少ない投資で監視負担の軽減や分娩事故の減少につながることから、現場での評価も高いです。
《マルチローター(ドローン)による防除》水稲や畑作では、農薬散布用ドローンの導入が進んでおり、従来の産業用無人ヘリコプターよりも手軽に導入・運用できることが評価されています。最近は、大規模圃場では無人ヘリコプター、中山間地域の高低差のある圃場や分散圃場では農薬散布用ドローンを利用するといった使い分けがされるようになっています。近年では、自動操縦タイプのドローンの活用も始まっています。
《水田の水管理システム》水田水位を遠隔監視できる水位センサは、安価な製品を中心に県内では300台以上導入されています。自動給水栓は花巻市や陸前高田市での実証事例があり、開水路に対応した安価な製品の普及が始まっています。省力化を目的に導入されていますが、今後は圃場の大区画化による導入コストの低減や適切な水管理による収量と品質の向上、温室効果ガスの排出削減等につながると考えられ、更なる普及が期待されます。
《生産管理システム》地理情報システム(GIS)を利用した生産管理について、様々なシステムが導入されています。水田での利用が中心ですが、露地野菜や果樹などの露地園芸圃場での利用も始まっています。従来の紙による煩雑な圃場管理や作業の進捗管理等が、クラウドを介して情報共有、集中管理できることが利点と考えています。今後は、集約したデータを分析し経営改善に繋げることが課題と考えています。また、データ駆動型農業を今後推進していく上で、生産管理システムの活用は、重要な取組と考えているところです。
《遠隔操作やロボット草刈機》ラジコンタイプの草刈機が導入されつつあり、りんご園ではロボット草刈機の導入が始まっています。りんご園において、下草を高刈で管理することで土着天敵のカブリダニ類を保護し、ハダニ類の発生抑制や防除の低減につながることが分かっており、ロボット草刈機を活用した下草管理の実証などの取組が始まっています。
【県による普及推進の取組】国の「スマート農業実証プロジェクト」を活用し、令和元年度から2年度まで、「ロボット技術・ICT利用による中山間地域における省力・高能率輪作体系の実証」を、北上市の㈱西部開発農産で行いました。この実証では、中山間地域で高低差のある中小区画の水田転作圃場を、自動操舵システムやRTK―GNSSロガーで得られる高低差情報から高低差マップを作成し、大豆作の排水対策に活用したところ、地域の平年収量から大きく増収できる結果が得られました。令和4年度からは、「ICT利用による東北地域における畑作物(大豆・小麦)収量向上サービスの実証・実装」として、この排水対策の成果を農業支援サービスとして横展開することを目的とした実証を始めているところです。
県では、令和2年度から県北地域を中心とする中山間地域に適合したスマート農業技術の確立と普及拡大を目指す「北いわてスマート農業プラットフォーム創造事業」に取り組んでおり、農業研究センター県北農業研究所を技術開発及び普及拠点と位置付けて、RTK基地局や高規格の環境制御ハウスを整備しました(写真2)。この拠点では、傾斜地における自動操舵農機の適応性実証、木質チップボイラ―等を活用した施設きゅうりの環境制御技術の実証等を行っています。また、産学官民によるサロンを立ち上げ、セミナーや研修会などを通じて地域ならではのスマート農業技術を推進しているところです。
このほかにも、県内各地で様々な品目でスマート農業技術の実証事例を取りまとめた「岩手県スマート農業事例集」を発行しています。この事例集等を農業者の方々に広く情報提供し、活用いただくことで、引き続き本県農業の実情に即したスマート農業技術の普及推進に積極的に取組んでいくこととしています。

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