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「減肥基準」を策定 過剰蓄積ほ場で施肥削減 岩手県

わが国は化学肥料原料のほとんどを輸入に依存しており、肥料価格は国際的な価格動向の影響を受けやすい構造となっている。近年、肥料価格は横ばいで推移していたが、世界的な食料需要の増大、原油価格の上昇に伴う輸送コストの増加等から上昇。農業経営の圧迫が懸念されている。
 そのようななか、岩手県は令和4年1月、これまでに開発された肥料コスト低減に関する技術を「岩手県肥料コスト低減技術マニュアル」として取りまとめた。同マニュアルから肥料コスト低減手法・技術をみてみたい。
 マニュアルでは、同県の耕地土壌は長年の土づくりの結果、土壌養分が蓄積傾向にあると指摘。そのため、①土壌診断に基づく適正施肥の推進②たい肥等有機物の活用③施肥量低減技術の導入④肥料銘柄の見直しや調達方式の改善―の手法を中心に、肥料コスト低減の推進を促している。
 低減手法の主なポイントをみると、①では、県農業普及技術課などが実施している土壌診断は、診断結果の通知まで時間を要するため、農家自身で簡易土壌分析手法の活用も有効。また、土壌養分が過剰に蓄積しているほ場では、リン酸やカリなどの減肥を徹底するとともに、画一的なたい肥の施用などを見直す。
 ③では、肥効調節型肥料を利用する場合は、作物の種類や栽培時期、養分吸収特性に合致した溶出タイプの選択及び速効性肥料の配合割合などを考慮する。
 続いて、肥料コスト低減技術をみてみたい。
【土壌中の窒素・リン酸・カリの簡易分析法(全般)】土壌を電子レンジで加熱、振とうして得られた土壌抽出液のCOD値を簡易測定キットで測定することにより、土壌の可給態窒素を簡易に評価することが可能。また、同じ抽出液を用いて、土壌の可給態リン酸及び交換性カリが減肥基準に達しているかを判定することができる。
【減肥基準に基づく施肥(全般)】県では、土壌養分が過剰蓄積したほ場を対象に、リン酸、カリを主とした「減肥基準」を策定しており、この基準により施肥量を削減することができる。具体的な減肥基準をみると、水稲における可給態リン酸は、100g当たり6㎎未満は標準施肥で土壌改良は必要、同6㎎以上30㎎未満は標準施肥で土壌改良は不要、同30㎎以上は100%減肥となっている。
【可給態窒素を活用した雨よけトマトの窒素減肥技術(野菜)】雨よけトマト栽培において、土壌の可給態窒素が100g当たり4㎎以上の場合、窒素成分で10a当たり3~6㎏の追肥窒素を減肥しても、標準施肥と同等の可販果収量を得ることが可能。追肥窒素の減肥により、地上部窒素吸収量及びトマトの総収量は減少するが、裂果等の発生割合が低下することから、可販果率が向上する。
【窒素濃度の高いたい肥を用いた水稲50%減化学肥料栽培技術】水稲栽培において、乾物窒素濃度が2~3%前後のたい肥を、見かけ窒素肥効率を20~30%と推定し、化学肥料の50%を代替施用することで、慣行並みの収量を得ることができる。なお、「見かけの窒素肥効率」とは、たい肥と化学肥料を併用した場合の窒素肥効率。たい肥のみの窒素肥効率とは異なることに注意する。
【うね内部分施用技術(野菜)】露地野菜栽培において、うね立て時に肥料をうねの中央部だけに施用することで、慣行と同等の収量を確保しつつ、施肥量を低減できる。無駄に施用される資材が減り、単位面積当たりの施肥量を30%(条件によっては50%)低減可能。余剰成分の蓄積や降雨等による流出を防ぎ、環境負荷を低減できる。

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