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MAM、岡山市で実証試験披露 ペースト肥料で全量基肥栽培 省力と環境性両立 緩効性ペースト肥料2段施肥

三菱マヒンドラ農機(齋藤徹社長)はペースト2段施肥技術と緩効性の液状ペースト肥料を用い、環境破壊に繋がるプラスチックの被覆殻が出るコーティング肥料を使わない全量基肥栽培の田植え実証試験を片倉コープアグリと今年、全国8カ所で開始。省力化と環境性の両立が可能なこの技術を実証し、普及を促す。6月21日には、岡山県で実証実演会を行った。

 同社は1974年に業界で初めてペースト側条施肥機を開発・発売。環境負荷の低いペースト施肥機を用いた農法に取り組んできた。近年、農業で使われるコーティング肥料の被覆殻流出によるマイクロプラスチックの海洋汚染に関心が高まる中で、2段施肥技術により一発施肥を可能にする新しいペースト肥料が片倉コープアグリにより開発された。粒状のコーティング肥料と同様に施肥効率が高く、マイクロプラスチックの流出が抑えられることから、みどりの食料システム戦略の推進上も注目を集めている。
 実証試験にあたり、三菱農機販売の長島史治・西日本支社長が挨拶。「今日はあいにくの雨天だが、ペースト肥料なので問題なく田植えができる(粒状肥料の場合は、雨天は水分を含むと目詰まりする)。本日はこの機械を使い、今問題となっているマイクロプラスチックの環境問題に配慮した田植技術を確認してほしい。2段施肥なので肥効も長い」と。また片倉コープアグリの塚田悟専務は「ペースト肥料は40年以上前からあるが、知名度はいま一つだった。開発した『てまいらずペースト488』で2段施肥をすれば追肥要らず。更に大容量パックなら包装資材からの廃プラも出ない、みどりの食料システム戦略にも合った肥料ということを実証し普及させたい」と述べた。
 その後、三菱マヒンドラ農機(以下、MAM)の内田営業戦略室長が実機を前にペースト施肥田植機と片倉コープアグリの新肥料を説明。その後ほ場に移り実演。当日はTV、新聞などの報道関係のほか県の普及指導員など30名余りが見守る中、協力農家・寺見真人さんの約30aのほ場に水稲品種『アケボノ』を三菱田植機LE60AD2で田植え。今回はノズルを上段5㎝、下段は9㎝と15㎝の2通りに設定した。
 寺見さんは「週末兼業農家で雨が降ると田植えが1週間以上遅れてしまうため、これまでもペースト側条施肥でやってきた。ペーストなら、雨でもできる。掃除が簡単なのもいい。タンクに水を入れて1日回せばキレイになる。今回、三菱さんから機械を借り2段施肥+緩効性ペースト肥料で田植えしたわけだが、今後を見ていきたい」と話していた。
【田植機(LE60AD2)の説明】①機体前方の左右にあるペースト肥料用の大容量タンク(1つ36ℓ、左右で72ℓ)に投入された肥料はサブタンクで合流し、CCポンプを通り(ステータ内部のロータが回動及び上下運動することにより吸入側から肥料を吸い込み、吐出側に吐出する)条止め部を経由して各条に届く。ポンプから送り出す量は座席下のギヤで行うが、添付してある表で下段・上段それぞれ設定する。2段施肥の深さは上段(3/5/7㎝に調整可能)下段は(9/12/15㎝に調整可能)それぞれ圃場に合わせてセット。今回の肥料の比重は1.3。水より重いため地中に留まり、そこで肥効を発揮する。下段のほうが気温の影響を受けにくいため長く効く。また深いところの肥料を求めて根が伸び根張りが良くなる。
【ペースト肥料が普及しなかったのはなぜか】ペースト肥料は粘度のある液体。プラスチックは含まない。東北地方などの寒冷地で稲の初期生育を良くするため、先に導入が進んだ。一方、コーティング粒状肥料は肥料成分がプラスチックでコーティングされている(生分解性のものも一部ある)が、肥料成分が溶出した後の殻が川に残る(近隣の川から採取した殻を見せた)。ところが、一発BB肥料(粒状肥料)が登場すると、それまで3回必要だった肥料散布が春先に1回で済むようになり、急速に普及、それに伴って価格メリットも生まれた。一方、ペースト肥料は、天気により肥効速度が安定しなかったため2段施肥であっても緩効はできず、1回全量散布は難しかった。
【今後の展望】「今回の実証試験で、緩効ペースト肥料2段施肥の効果を証明しつつ、環境に優しい農業への理解を拡げ普及を図っていきたい」と同社。ただ、粒状肥料との価格差はまだ大きい。導入面積拡大によるペースト肥料価格の低減に期待がかかる。

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