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信じがたい茶の〝粉引き〟制度 茶取引の強制値引き 悪しき習慣撤廃願う老舗茶園

 静岡県のお茶の令和元年産の産出額(生葉産出額+荒茶産出額)は251億円。かつてに比べればだいぶ減ったとはいえ今も全国1位(シェア12・68%)の作目だ。また、令和3年産荒茶生産量は2万9700tで全国1位、主産県に占める割合は42%だ。更に、同県には茶関連産業が集積し、茶の歴史、文化、景観などの優れた資源と共に「茶の都」である。
 
 ところで、茶業界には『粉引き』制度が残っている。粉引きとは、茶には粉があるからとして、生産者にその分を売立価格から3~8%を強制的に値引きさせる買い手優位の悪しき商習慣である。
この商習慣について、粉引き制度撤廃運動を展開する、同県袋井市の茶の自園自製の茶の老舗、荻原製茶の荻原克夫社長は「粉引きは100年前から続く悪しき商習慣。実体は粉引きという名を借りた強制的な値引き。ほかの農産物にはない。例えば、米からは『こぬか』が出るからと言って、『こぬか引き』はない。とうもろこしは芯の方が多いからといって、『芯引き』はない。茶業界のみ、100年来の理不尽な制度がまかり通っている。このことを多くの人達に知ってもらいたい」と。
 
 不公正な取引環境は茶業振興はもとより、農家所得や生産意欲にも関わってくる。「一生懸命つくったものを値引きされたのでは、農家はたまらない。しかも、根拠もなく粉引き撤廃と言っているわけではない。『農業競争力強化支援法』が成立。平成29年8月施行。法的根拠に基づいて訴えている」と荻原氏。同法律は、農業者が自らの努力のみでは対応できない『良質かつ低廉な農業資材の供給』と『農産物流通・加工の合理化』を図るため、農業資材・農産物流通等の事業者の事業再編等を促進するための措置を講ずることにより、農業者の競争力強化を図ることが目的。
 
 そのうえで、農業の持続的な発展を図るためため、農業者は生産と流通のコスト削減に取組み、農業所得の向上を実現していかなければならないとし、農業生産関連事業者には、法制度・規制等を活用し、農業者を支援していくよう促している。
 
 また、平成30年の改正に伴い、『食品流通構造改善促進法』から題名が改められた『食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律』も根拠の1つ。改正された内容には、農林水産大臣は、食品等の取引状況について、定期的な調査を行い、不公正な取引方法があると思料する場合には公正取引委員会に通知するとの項目が入っている。
 独占禁止法を運用する公正取引委員会では、取引上の地位が相手方に優越している事業者が、取引の相手方に対し、その地位を利用して、正常な商慣習に照らして不当に不利益を与えることを『優越的地位の濫用』とし、この行為を独占禁止法で規制している。
 
 この優越的地位の濫用は、①優越的地位②正常な商慣習に照らして不当に③濫用行為―の3つの要素から判断される。
 このうち、②の『正常な商慣習』とは、公正な競争秩序の維持・促進の立場から是認されるもので、現に存在する商慣習に合致しているからといって、直ちにその行為が正当化されることにはならないとしている。
 また、③の濫用行為のうち、『減額』で問題となるのは、正当な理由のない減額であって、相手方が、今後の取引に与える影響等を懸念してそれを受け入れざるを得ない場合としている。これらを踏まえ、荻原氏は関係省庁に粉引き撤廃を働きかけるとともに、農水省や県、県議会、経済連、茶業会議所等とも協議を重ねてきた。
 
 そのような中、わが国の農林水産物・食品輸出額が初めて1兆円を突破した2021年は、緑茶の輸出額は前年比26・1%増の204億1800万円。「TPPやFTAをわが国が先導するなか、日本の茶業界でまかり通っている100年来の粉引きのことを外国から指摘された時、何と説明すればいいのか」と荻原氏は憤る。
 
 また、静岡県の茶業も、担い手不足と高齢化の進展が課題。「後継者が激減し、茶農家の84%は後継者がいない状況。その希少な若い後継者達は、粉引きとは一体何なのか、何ゆえの制度なのか、不可解だと言っている。静岡県内JAグループは、我々の主張を取り上げて、2021年シーズンの新茶取引から、粉引きの商習慣を全て廃止した。当然のことであるし、残る買い取り先についても、理解を頂き、茶の取引で、若い後継者に説明できないような悪しき制度はなくし、ほかの農産物と同様な取引環境を次代の生産者に残していきたい。古い因習に縛られているようでは新しい発想は生まれてこない」と語った。

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