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【特別寄稿】農業機械革新の歴史を語る -5- =農研機構革新工学センターシニアアドバイザー 鷹尾宏之進=

【特別寄稿】農業機械革新の歴史を語る -5- =農研機構革新工学センターシニアアドバイザー 鷹尾宏之進=
 農業を営む上で欠かすことのできない農業機械。時代ごとに現れる様々な課題を解決し、農家の「頼れるパートナー」としてわが国農業の効率化・農産物の高品質化に貢献してきた。そこで、農業機械の開発・改良を進めてきた農研機構革新工学研究センターの鷹尾宏之進シニアアドバイザーにその歴史を解説頂く。本紙では回を分けこれを紹介する。
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除草・収穫・脱穀 原動機でツラい作業省力化


人を動力源とする作業は辛いのが多い。例えば、中耕除草である。田植え後の田に這いつくばって、5本の指で条間、株間を掻き回して土を移動することにより、中耕、除草と根への酸素補給を兼ねた作業である。1950年(昭和25年)頃、人力式の回転型中耕除草機が登場し、条間を押して同様の効果を引き出すことができるようになり大きく省力化された。この除草機は小規模で除草剤を全くもしくは極力使用しない農家にとって、アイガモ農法などとともに現在でも利用されている。当時を知る者は「牛馬を原動機として中耕除草に使うと、人力の3~4倍能率が上がった」という。
 牛馬を使う場合は牛馬がよろけて苗を傷つけないよう牛馬が歩く条間は他より広めに取るように指導されている。作業者1人で牛馬に中耕除草機を曳かせる例がほとんどだが、鼻取付畜力式のように機械を操作する人と、牛が苗を踏まないよう鼻部につないだ横木を持って牛と並行して歩く人との2人組作業もある。これにより頭の動きを制限し直進性を維持している(写真)。
 稲麦収穫の場合は鎌で手刈りしていた時代が長いし、現在でも鎌は欠かせない道具だが、腰を曲げての作業なので省力化への意識が強く、1925年(大正14年)に稲麦収穫機設計(人・畜力用、応募102台、入賞6台)と1926年度に稲麦刈取機(応募198台、入賞2台、うち1台は1人用人力式)、1943年(昭和18年)には畜力利用稲麦刈取機(応募40台、入賞2台)の各懸賞募集が行われている。
 1926年(大正15年)農事試験場事務功程には型式の異なる稲麦人力用刈取機についての試験が報告されている。試験対象となったのは田中式収穫器(押刈式の刈倒型)と光成式収穫機(押刈式の集束型)について水稲刈取試験を実施している。なお、資料館にはこれらの刈取機が保管され、解説が付されている。
 次に、脱穀は千歯扱きの時代から足踏式回転脱穀機(開発当初は無蓋)、原動機を搭載した動力脱穀機へと発展していく。1922年(大正11年)には動力脱穀機(応募不詳、入賞5台)、1924年(大正13年)は自動脱穀機(応募63台、入賞6台)の各懸賞募集が行われた。1960年(昭和35年)代になると、バインダ体系(刈取・結束、圃場で1ヵ月弱の天日乾燥、圃場で脱穀)と、刈取部と脱穀部を1台の移動可能な台車に組み上げた自脱型コンバイン体系(刈取と同時に脱穀し農家に持ち帰って機械乾燥)の研究が全盛期を迎える。
 1965年(昭和40年)当時、早場米地帯の調査でこの2つの体系による作業を目にしたとき、その効率の違いに愕然としたのを覚えている。


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【鷹尾宏之進(たかお・ひろのしん)】


 農学博士。1968年東京教育大学大学院農学研究科修士課程修了農業工学専攻。特殊法人農業機械化研究所入所、主任研究員、研究調整役、1995年農水省食品総合研究所食品工学部長、1997年生研機構基礎技術研究部長、2003年退職。2006年日本食品科学工学会専務理事、2018年農研機構農業技術革新工学研究センターシニアアドバイザーとして現在に至る。学会活動により農業機械学会功績賞、農業施設学会貢献賞を受賞、日本食品科学工学会終身会員。

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