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静岡製機、創業110周年記念式典を開催

静岡製機、創業110周年記念式典を開催

 守るべきDNA 弛まず新たな市場の開拓

静岡製機=鈴木直二郎社長、静岡県袋井市諸井1300=は3月6~7日、静岡県浜松市のアクトシティ浜松に全国の名だたる農機、産機の取引先、関連団体及び海外の取引先を招待し、創業110周年記念式典を開催した。また式典に先立ち別会場で製品展示を開催、安全作業のための取組と安全装備の充実を前面に、製品開発の姿勢と、多様な製品群を披露した。

 開会挨拶は宇野毅常務。「10年前、この浜松で〝お陰様で100年、心からの感謝を込めて〟をテーマに多くのお客様をお迎えし、式典を開催しました。そして本日、10年の節目にあたり、感謝と誇りを胸に、光・風・熱の技術で新たな未来へ向けてさらなる成長を目指し、一歩を踏み出す覚悟です。本年、展示では安全への取り組みについても発表させて頂きました。これには、引き続き取り組んでまいります。未来に向けて、皆様と共に迎えさせて頂いた記念すべき日を大切に、更なる高みを目指して努力を重ねていく所存でございます。これからも変わらぬご支援とご指導を賜りますようお願いを申し上げます」と述べた。
 続いて、『創業110周年ビデオメッセージ』。静岡製機の歴史を、創業の1914年から2014年までの100年とその後の10年に分けて映像で紹介。前半の100年は『高き志を抱いた小さな種からその歴史は始まった』『時代に翻弄されても成長の歩みは止まらない』『創業の想いは太い幹となり大地に揺るぎない根を張った』というフレーズを挟みながら紹介した。後半の10年については、『光・風・熱の技術で新たな未来へ』を基軸に、SDGsへの取組み、農機・産機・海外の3事業の歩みと開発製品を紹介した。
 その後、鈴木社長が登壇し、110周年の式辞を述べた。
【鈴木社長式辞】まずは、大船渡の火災に対し、お見舞い申し上げます。一日も早く日常をとり戻すことができますよう祈るばかりです。
 本日はお忙しい中、遠方からもご来臨下さりありがとうございました。また、皆様には、長い間本当にお世話になってきたこと、深く感謝申し上げます。先ほどのビデオの中で「1914」という数字が出ました。1914年6月に創業し、そこから数えると正確には今年は110年ではなく、111年になります。110年ということで昨年から様々なイベントやキャンペーンを実施してきましたが、111年という〝1並び〟の年も縁起が良いのではないかと思います。人間の年齢の77を喜寿、88を米寿と言いますが、111は「皇」という字の組み合わせに由来する「皇寿」というそうで、今年は非常に縁起の良い年ではないかと思う次第です。この記念すべき年を迎えるにあたり、我々は未来に向けて、皆様とともに努力してまいりたいと決意を新たにしております。
 さて、これまで受け継がれてきたDNAとは?を考えながらお話していきます。まず、創業期の製莚機(せいえんき)。我々の鈴木の家は、大工の家業からスタートし、木材を活かした製品を作ってきました。創業者は非常に品質に厳しく、納得のいかないものは斧で叩き壊したという逸話も残っています。創業以来、品質には一切の妥協を許さず、弊社は今もその精神を受け継いでいます。
 第2次大戦後の1950年以降、アメリカからビニールが輸入されるようになり、製莚機は不振になりました。次の製品を模索していたところ、農業機械化研究所(現在の農研機構)の渡辺鉄四郎先生から通風乾燥機の提案を頂き、機械化研究所の福田さんの入社支援を受け、その生産を開始しました。渡辺先生は当社の大恩人であり、人的ネットワークの大切さを実感しています。次に、それに手を加え平型乾燥機を作りました。1950年代は日本が高度成長期にあり、倍々ゲームでよく売れました。ところが1964年の東京五輪後、日本中が不景気になり、平型乾燥機の販売も急減し、在庫が膨れ上がり、経営危機に直面。取引先を回ってお願いし、現金・手形を貰い、銀行決済日に間に合わせたこともありました。取引先の皆様に助けられたと思うと同時に、以後、先代社長も堅実経営を肝に銘じ、また〝乾燥機1本足〟の不安定から脱却すべく製品の多角化を志向するようになりました。 
 1975年頃、アメリカの方の特許を使わせて頂き、改良を加え、赤外線ヒーター『VAL6』の販売を開始。自動車修理工場での乾燥に使ってみては、と『VAL6』の用途を見つけてくれたのは販売店の方でした。感謝しています。これをきっかけに海外への輸出も開始しました。
 次に太陽熱温水器『サニオンヒーター』です。オイルショック後の波に乗り好調でしたが、販売委託していた訪問販売会社がトラブル。別なルートでの販売であったら、良い商品に育ったかもしれないと残念に思っています。
 自動水分検知装置『コメットS』は、電子技術が注目され始めていたころ。静大工学部研究室と共同研究を開始。その後、研究生が入社し製品として完成。これは大ヒットしました。我々にとって誇るべき商品と思っています。この機械を基に取り組んだのが、乾燥機の自動化です。1985年頃、全自動乾燥機『ウルトラクリーン』を上市。ところがこれは構造的に不備があり、寒冷地で火災が発生し、営業マンが謝って回りました。ただ、チャレンジなくしては、新製品の開発はないと思っています。
 1990年代、乾燥機が好調、一方で共同乾燥施設が普及、農家向け乾燥機の需要が減ってしまう事態になりました。その後、自家飯米の貯蔵庫の需要の仮説をたて、様々な製品を開発。始めに開発したRB―210、その次のRB―105も、農家の需要に合わず、3回目の玄米低温長蔵菜庫『GB―1300』でようやく売れる商品に仕上がりました。初号機で売れなくても、市場の反応を見て改良型を出すことの重要性に気付きました。
 振り返ると失敗事例ばかりですが、我々のDNAは、ナンバーワンプライオリティ、お取引先様・業界団体・お役所との良好なネットワークコミュニケーション、新技術に強い関心を持つ〝進取の精神〟と成功するまであきらめない〝不屈の精神〟。これらが今後も引き継ぎたい弊社のDNAかと思います。
 これからの市場はどうなるかと言えば、色彩選別機を見てもわかるように、ICT・センサー技術の進展で全般的という表現はなくなり、1つ1つを見ていく、そういうものが、多分これからの技術になっていく。だから、そうしたものを開発していかなくてはならないと思います。そして環境、脱炭素への取組みと日本人、日本人労働者は減っていくことを前提に、日本農業、世界の農業、また日本・世界の作業環境の改善・発展に貢献してまいります。
    ◇
 その後、来賓挨拶。袋井市長・大場規之氏は「農業の担い手の高齢化や食料自給率の低下など、日本の農業が直面している課題に対して、御社が光と風と熱をテーマとして、創業から培われてきた確固たる技術を活用した高品質な製品を提供され、課題解決に大きく貢献をされていらっしゃることに敬意と感謝を申し上げます」と述べた。 
 また、日本農業機械化協会の菱沼義久会長は「水田農業は機械化、自動化のスマート農業が完成に近くなっております。この生産のイノベーションを乾燥調製、さらに貯蔵までつなげ、静岡製機様には新しいイノベーションを起こして頂けることを、期待しております」と述べた。
 休憩を挟み元ラグビー日本代表の五郎丸歩氏による記念講演。テーマは『日々の努力、夢への近道』。
 その後、会場を移し祝宴。賑やかに、和やかに歓談し、明日への鋭気を養った。翌日はゴルフコンペと観光に分かれ懇親をさらに深めた。

未来につながる今 農機・産機・海外の製品展示

 

 鈴木直二郎社長(左)と鈴木弘憲社長室長(右)。「創」の書の前で

式典に先立って行われた製品展示のホールには、農機・産機・海外製品が一堂に並び、静岡製機の〝未来につながる今〟を見せ、担当社員が来場者個々に丁寧に説明した。
会場に入って正面には、静岡製機の社是『創意を発揚し社会に進歩と安定を』からとった『創』の書(大杉弘子氏)。
 また入口正面には世界地図。製品分野ごとの拠点が記され、世界中に広がる同社の市場を実感させた。同社の海外売上比率は、10年前と比べ3ポイント上昇し10%に届いている。
 その奥には産機の『ほかっと』。外のガードは触れてもやけどしにくく、ガードの奥のヒーターも直に触れても燃えにくいという安全性も評価されている。そしてその隣には東日本大震災、能登半島地震の被災地にこの暖房器具を贈ったことに対し経産省から贈られた感謝状。
 また、注目を集めたのは乾燥機の安全作業のための取組みと安全装備の充実だ。現場でみるリアリティは説得力があった。
 そのほか色彩選別機、食品乾燥機、冷風機、炭酸ガス発生装置など光・風・熱に着目した製品群を展示。また、同社が農家、地域との良好なネットワークコニュニケーションを目指して18年前に地産地消応援団として創業した『とれたて食楽部』も出店、農産物・農産加工品を販売、PRした。

裸火でない安全暖房遠赤ヒーター「ほかっと」

気化式冷風機。今年は大阪関西万博でも活躍する

 とれたて食楽部

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