農研機構農業機械研究部門、令和6年度研究報告会を開催 – 新たな安全性検査制度と最新農業機械の開発動向を発表
農研機構農業機械研究部門(農機研、長﨑裕司所長)は3月6日、埼玉県さいたま市の同部門はなの木ホール及びオンラインで令和6年度研究報告会を開催。各研究部門の概要報告を行ったほか、トピックスとして、令和7年度からスタートする新たな安全性検査制度や開発中の両正条田植機について報告した。当日は、会場、オンライン合せて270人が参加した。
報告会でははじめに長﨑所長が「農業・食品分野のSociety5・0の実現に向け生産性の向上と環境保全の両立に取り組んでいる。それにあたっては、農業機械・設備や農作業のスマート化が欠かせない。我々はそれらに貢献する農業機械等の開発を進めている。皆様との連携を今後も強めていき、農業機械の開発、安全性の向上といった点で貢献していきたい」と挨拶。続いて農水省技術政策室の本間佳祐課長補佐が挨拶と情勢報告。スマート農業技術活用促進法について、生産方式革新実施計画、開発供給実施計画を紹介したほか、両計画の認定事例について紹介した。加えて、技術普及課の宮本英尚課長補佐が農業機械をめぐる動向を報告した。
その後、各部門から研究概要の説明。更にトピックスとして、令和7年度からスタートする新たな安全性検査制度について、農機研安全検査部の志藤博克部長が報告した。
令和7年度の安全性検査の対象となるのは①農用トラクター(乗用型)②農用トラクター(歩行型)③コンバイン(自脱型)④田植機⑤乾燥機(穀物用循環型)の5機種。基準の強化点として、農用トラクター(乗用型)の場合、シートベルトリマインダーとPTOインターロックの装備を新たに求めた。農用トラクター(歩行型)では、ハンドルを回動できるタイプでハンドルを正規の前進方向とは逆向きに回動したときに、機械の最高速度を基準値以下に自動でけん制する構造を求める。コンバイン(自脱型)及び田植機については、作用部インターロックの装備を求める(農用トラクター(歩行型)、コンバイン(自脱型)、田植機は令和9年度からの適用)。
なお、安全性検査対象以外の機種については、一般性能試験をこれまで以上に活用し、安全レベルの向上を図ることとしている。
加えて、受検のしやすさも向上。安全キャブ・フレーム検査における強度試験の省略条件を拡充するほか、手数料の減額、市販化前生産機での受検など依頼者の負担軽減についても見直した。
また、両正条田植機と直交機械除草技術の開発動向については、重松健太氏が報告。ポット苗とマット苗の両正条田植機(試作機)を開発、試作機で植付位置精度±3㎝以内を達成。また、実証により、直交除草を行うことで除草率85%以上、直交方向(2回目)除草の早期実施により更に除草効果が向上することなどがわかった。開発した両正条田植機は、クラスター事業の新規課題(公募中)で市販化に向けた共同開発を実施予定、などとした。
その後、個別研究報告として4件の研究成果が報告された。
なお、翌7日には、同所で農業機械技術クラスター総会も開かれた(詳細次号)。