クボタ(Kubota)2024年12月期決算発表:業績・成長戦略と次期見通し
クボタ(北尾裕一社長)は2月13日、2024年12月期連結決算(IFRS)を発表した。売上高は前期比44億円(0.1%)減の3兆163億円、営業利益は同132億円(4.0%)減の3156億円、純利益は同80億円(3.4%)減の2304億円。配当は期末1株25円、年間50円。次期は売上高337億円(1.1%)増の3兆500億円、純利益1960億円を見込んでいる。
13日に行われたオンライン発表会の席には、花田晋吾副社長機械事業本部長、鶴田慎哉エグゼクティブオフィサー農機国内本部長、横溝敏久農機国内企画部長が出席。始めに花田副社長が全体説明を、続いて鶴田農機国内本部長が国内の状況を説明した。
2024年12月期の売上高は3兆163億円。国内売上高は機械部門、水・環境部門、その他部門共に減収となり、前期比107億円(1.7%)減の6325億円。海外売上高は、機械部門、水・環境部門とも増収となり同62億円(0.3%)増の2兆3838億円。海外売上高比率は同0.3ポイント上昇して79・0%。
営業利益は値上げ効果や為替変動などの増益要因はあったが、欧州、北米を中心とした機械部門での減販損やインセンティブコストの増加等により同132億円(4.0%)減の3156億円。純利益は同80億円(3.4%)下回る2304億円。
【機械部門】(農業機械及び農業関連商品、エンジン、建設機械など)。売上高は前期と同水準の2兆6369億円(売上高全体の87・4%)。国内売上高は同1.2%減の3119億円。主に農業機械及び建設機械の減少により減収となった。
海外売上高は為替変動の影響もあり、同0.2%増の2兆3250億円。北米では建設機械の販売は政府のインフラ開発需要を背景に堅調に推移したが、トラクタはレジデンシャル市場の低迷や農産物価格の下落の影響を受け苦戦した。欧州では、建設機械及びエンジンは経済の減速に伴う市場縮小が続いたことで販売が減少し、トラクタも需要が弱く低迷。アジアは、タイでは一部洪水の影響が残るものの、農業機械は稲作向け製品を中心に販売が回復し、建設機械も販売が増加した。インドでは当第2四半期までは干ばつや総選挙の影響により市場が縮小したが、当第3四半期以降は十分な降雨と収穫量により回復に転じた。
当部門のセグメント利益は値上げ効果や為替変動などの増益要因はあったが、主に欧州や北米での減販損やインセンティブコストの増加などにより前期比2.4%減少して3474億円となった。
【財政状態】資産合計は、前期末比6594億円増加し、6兆187億円。
資産の部では、主に北米で金融債権が増加し、有形固定資産も生産体制強化や災害対策のための投資などにより増加した。
キャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが2821億円の収入増となった。主に運転資本の改善により前期比では2944億円の収入増となった。投資活動によるキャッシュ・フローは2089億円の支出。これに伴い、キャッシュ・フローが4年ぶりにプラスに転じた。
【クボタの成長ドライバーについて】クボタの強みはグローバルで事業展開し、そこでの健全な財務基盤と成長により、それをベースに国内事業を支えていくことにある。その中期の成長ドライバーとなっている主に海外の事業について説明する。
建設機械は、現在一時的に市場は調整局面に入っているものの、中長期的には、人口増加に伴い世界各地域で都市化が進み、これに伴い建機需要は拡大すると考えている。特に、人口増による底堅い住宅市場や、政府の積極的な公共投資が行われている北米、また、中古機から新車市場へ徐々に移行が見込まれているアジア地域などで市場の成長が期待できると考えている。また、強い製品力に支えられた更なるマーケットシェアの獲得による伸びも大きく期待できる。
人口増加による都市化を背景に、先進国、発展途上国ともに小型建機市場が拡大する。その中で、特に北米におけるコンパクトトラックローダー(CTL)の市場拡大及び我々の事業の成長にフォーカスしている。過去5年間で米国のCTLの市場は30%増え、現在9万台を超える市場に育っている。この中で、クボタは過去5年間に、売上高を280%に増やしている(ミニバックホー含む)。CTLの市場の中で、クボタはまだラインナップが不十分なため、市場全体の4分の1が未参入となっている。さらにラインナップ強化することによって、我々の現在のシェアをさらに30%へと数年のうちに目指していくことで、事業を急拡大していきたい。そのために、建設機械の開発、製造にかなりリソースを投入していく。
続いて、インド事業とそこをベースとしたベーシックトラクター市場への参入について。インド市場は、今年1月に本格的に発売を開始したファームトラックのプロマックスシリーズで、エントリープレミアム市場にフルモデルチェンジした新しい製品を導入することができた。これにより今年は、従来カバーできなかったような顧客へのアプローチを開始して、インド国内市場でのシェア拡大による事業の拡大を狙っている。インドの国内市場はまだまだ非常に大きいものがあり、製品ラインナップを拡大するとともにディーラーのアウトレットを増やし、それとともに、ディーラーの中のサービス体制を構築するなど様々なことをやりながら販売を伸ばしていきたい。また、そのためにしっかりと、十分な製品量を供給するということが必要になるので、EKLという我々の子会社、そこの工場の改善活動に対してクボタからかなりの人数を供給し、その成果が如実にでてきている。さらに、販売面においては、今年から小売金融サービスを開始し、販売をサポートするとともに、当地の情報を直接得られるツールとしても期待されている。
更に我々はこのインドの拠点を使いながら、グローバルな市場での様々な製品開発とその他調達力の強化等々にこの拠点を使っていくということを踏まえ、グローバルな農機事業の拡大を図ろうとしている。例えば、トラクタ事業に関しては、昨年から始めたGIT(グローバルイノベーティヴトラクター)プロジェクトを立ち上げた。これは、世界各国の色々な要望を、最初から聞き、そのパックに適した、かつ共通のプラットフォームを作って、プラットフォームを増さずにに各地の要望を取り入れた製品を作り上げていくことを目的にしている。これによりシェアを10%アップ、コストを約20%削減、開発リードタイムを30%削減するというような大きな目標を掲げて活動を進めている。こうしたことをすることにより、グローバルでの製品開発を強化し、それがひいては国内市場の強化にも繋がっていくと考えている。期待して欲しい。
【次期の見通し】次期の売上高は当期比337億円増の3兆500億円を見込んでいる。機械部門は、欧州市場は引き続き低迷が続く見通しだが、堅調な北米の建設機械とタイ、インドを中心としたアジアでの販売回復などで増収を見込む。
営業利益は値上げや北米の建設機械及びアジアを中心とした増販などの増益要因はあるが、為替変動やインフレーションの影響などによる経費の増加などにより2800億円を見込む。税引前利益は2970億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1960億円を予想。
業績見通しにおける想定為替レートは、1米ドル=145円、1ユーロ=152円。