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【新春インタビュー】JA全農常務理事日比 健氏 

【新春インタビュー】JA全農常務理事日比 健氏 

2024年の概況


「11月末現在の取扱実績は、計画比103%、前年比102%。販売の単価が上昇し、実績の数字としては順調にきている。私の担当する耕種生産事業は、計画比は101%だが、前年比は98%。これは、資材価格、特に肥料の価格が令和5年から徐々に下がってきていることもあり、前年を下回っている」
 

最終年度を迎えた中期事業計画(令和4~6年度)の達成状況


「3年前に立てた6つの全体戦略(①生産振興②食農バリューチェーンの構築③海外事業展開④地域共生・地域活性化⑤環境問題など社会課題への対応⑥JAグループ・全農グループの最適な事業体制の構築)について、着実に取組んでいる。耕種生産事業でみると、今年度は更に一定の成果が得られたと手応えを感じている状況だ。具体的には、生産振興について、Z―GIS及びザルビオフィールドマネージャー(以下、ザルビオ)といった営農管理システムが非常に普及・拡大している。また、農薬の担い手直送規格についても、順調に取り扱いが拡大。肥料に関しても、堆肥や回収リンなど、国内の地域資源を活用した銘柄の普及も着実に進んできた」
「食農バリューチェーンの構築でみると、一番大きいのは米の統一フレコン。この3カ年で急拡大した。物流問題の課題解決に寄与しており、着実に取組が進んできたと思っている。海外事業展開については、肥料原料の安定確保に向け、令和5年度から備蓄事業にも取組んでいる」
「社会課題の対応ということでは、環境調和型農業に関する技術・資材を体系化した『グリーンメニュー』を、6年度実証として48のモデルJAで176のメニューに取組んでもらっている」
「最適な事業体制の構築について、営農指導DXとあわせて、受発注センターシステムにより、業務の効率化にかなり寄与できており、その普及も一気に拡大し始めている。ただ、組合員からウェブで注文を取るというところに課題があり、更に取組を進めなければならない。例えば、肥料や農薬は、JA・地域ごとに商品が異なるので、使い勝手の良いシステムにどう取組んでいくのか考えている」
 

次期中期事業計画について


「現在策定中だが、2030年の全農グループの目指す姿は、今次中期事業計画と同じ『持続可能な農業と食の提供のために〝なくてはならない全農〟であり続ける』を継続していく。耕種生産事業については、2030年のあるべき姿として4点にまとめている。1つ目が、『生産者から販売先までの情報をJAグループで共有・活用し、大規模生産者・法人や家族経営など、各経営形態に応じた最適な営農支援と、消費者ニーズや地域の特性を踏まえた生産振興を行っている』。2つ目が、『生産から保管・物流・製造・加工・商品開発・販売までのバリューチェーンにおいて一貫した事業体制を構築し、商品開発や販売提案を通じて産地と実需者を〝つなぐ〟ことで、国産農産物の価値を向上させている』。3つ目は、『気候変動や環境負荷、労働力不足などの食と農を取り巻く社会課題に対応し、かつ持続可能な環境調和型農業や輸入依存作物の国産への切り替えなど、安定的な食料供給の確立に向けて事業を進めている』。4つ目が、『デジタル技術の活用や、スマート農業の普及など生産現場の省力化やJAグループの業務効率化を図っている』。次期中期計画では、このような姿を目指していきたい」
 

Z―GIS・ザルビオについて


「全農では土地利用型作物(米・麦・大豆など)を中心に、PCやスマートフォンなどを活用したスマート農業に取組むため、Z―GIS及びザルビオの普及を進めている。また、これらシステムをJA単位で営農指導に導入する『JA営農指導DX』にも取組んでいる。Z―GISの活用事例の一端を紹介すると、中山間地対策・担い手の高齢化問題への対策として、地域全体でZ―GISを導入し、ドローンを活用したセンシング・穂肥指導で収量と労働生産性の向上に繋げた」
「ザルビオを活用した『JA営農指導DX』の取組事例では、衛星センシングによる『地力マップ』と『生育マップ』を活用した可変施肥で単収が向上。この『JA営農指導DX』の取組は全国8JAに広がり、ザルビオの有料会員の半分を占めるまでになっている」
 

施設園芸分野におけるスマート農業の取組について


「ゆめファーム全農は、施設園芸先進国であるオランダのデータ駆動型環境制御や高軒高ハウスなどの最新の施設と、日本の篤農家の優れた観察力・栽培管理を組み合わせた大規模施設園芸。全農では、全国3カ所(栃木、高知、佐賀)に実証ほ場を設け、大規模施設での運営ノウハウを構築してきた。結果として、品質は従来栽培と同等で、収量は2倍から4倍となる多収栽培技術を確立。加えて、高軒高による高温の影響の緩和や、大規模で集中して栽培することによる高い生産性による温室効果ガスの削減といった効果が期待できる」
「全農では、『ゆめファーム全農構想』として、①研究・開発②実証③育成④普及・展開――の4つのステージを設け、構想の実現を進めている。令和8年には、ゆめファーム全農による就農を希望する人向けに、育成ステージとなるトレーニングセンターを埼玉県幸手市に設置する。今後も、労務管理システム・遠隔栽培支援システムの開発・実証、葉かき・収穫ロボットの開発、温室効果ガスの削減と、作物に利用される二酸化炭素を大気から直接回収する分離膜型DAC装置の実用化を研究していく」
 

共同購入コンバインの進捗状況


「目標台数は、令和6年1月から令和9年5月の3カ年で1350台とした。11月19日現在の受注実績は475台。6年度の目標が430台なので、既に上回っており、順調な滑り出し。今後は、実販の促進として、全国2カ所で推進研修会をJA向けに実施することを企画している」
 

2025年の抱負


「農畜産物の適正な価格形成に向け、実需者、消費者への理解促進・理解醸成が非常に重要な事項だと思っている。同様に、生産者を支援する我々の立場からすると、生産者が消費者の要望に見合った作物や価格を実現できる営農技術、品目といったものを追求していきたい。生産者側、消費者側が努力・納得する形での取組になればと期待している。また、生産現場では急激に農業従事者が減少する中、JAグループの職員も減少し営農指導や担い手に対応する人員が不足しており、システムのスマート化やDXを進めることで、より効率的に対応していきたい。最後に、平穏な1年であることを願っている」。
 ※本インタビューは昨年12月に行ったものです。

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