ヤンマー PT 水素4ストローク高速エンジン
陸上実証試験に成功 定格出力500kWでの運転
ヤンマーホールディングスのグループ会社、ヤンマーパワーテクノロジーは、(公財)日本財団の「ゼロエミッション船の実証実験にかかる技術開発助成プログラム」で、内航船舶向け「発電用パイロット着火式水素4ストローク高速エンジン」の陸上実証試験を進め、定格出力約500kWでの運転に成功した。
今回実証したパイロット着火式水素エンジンは、少量のディーゼル油を点火源(パイロット燃料)として、水素燃料と空気の予混合気を燃焼させる方式になる。この運転により、本方式の水素エンジンとしては、世界最高レベルの水素燃料比率と約500kWの出力を、業界に先駆けて実現した(同社調べ)。
今後は、パイロット燃料としてバイオ燃料を用いることによるゼロエミッション化試験を引き続き実施する一方で、2026年の実証運航に向け船級認証の取得を目指す。
【ゼロエミッション船プロジェクトについて】日本財団による水素を燃料としたゼロエミッション船の開発に焦点を当て、当該技術開発を支援するプロジェクト。本プロジェクトでは、水素エンジンの開発と同時に、水素エンジン発電機とバッテリーの組み合わせによる「水素エンジン対応のハイブリッド電気推進船」を開発中だ。これは「水素燃料エンジン」と「水素燃料供給システム」を、コンテナユニット型の水素発電装置として上甲板部分に搭載することができる新たな船舶。船舶の開発・建造は、上野グループの海運会社である上野トランステックが担当している。
同プロジェクトのなかで、ヤンマーパワーテクノロジーは、水素インフラ普及までの船舶運航を考慮し、少量の着火用バイオ燃料と水素の混焼によりゼロエミッション化を図る「パイロット着火式」エンジンと「火花点火式」による水素専焼エンジンを同型式で開発している。
2024年からパイロット着火式の6気筒水素エンジンの陸上実証試験を開始し、2026年の実証運航を計画。加えて、同型式の火花点火式水素専焼エンジンによる陸上実証試験を同時並行で進め、水素エンジン対応電気推進船舶の普及を図るべく、その先駆けとして2030年頃からの水素エネルギーを基にした内航船舶のゼロエミッション化に貢献していく。
【コンソーシアムメンバー(2024年9月時点)】①ヤンマーパワーテクノロジー(代表)②上野トランステック③国立大学法人京都大学④福岡造船(船舶の詳細設計・建造)⑤三井E&S造船(船舶の基本計画・基本設計)⑥みらい造船(水素エンジンコンテナの詳細設計・製造)⑦国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所・海上技術安全研究所(火花点火式水素専焼エンジンの技術開発)。
※上野グループ(神奈川県横浜市中区)は、産業や市民生活に欠くことのできない石油製品、ケミカル製品の輸送・貯蔵・販売、ソーラー事業、海洋環境事業などに従事する35社で構成。1869年の創業以来、150年以上に渡り経験、知見を積み上げてきたエネルギー関連事業を核に、多様な事業分野で社会の発展に広く貢献している。