みどりの食料システム戦略:持続性の成果と生産力向上への課題
みどりの食料システム戦略では、持続性と生産力の向上の両立に向けた取組が進んでいる。特に「持続性」に関しては、一歩一歩ではあるが着実に成果を上げている。しかし、生産力の向上についてはどうだろうか。食料自給率や食料自給力指標が示すように、順調とは言い難い状況である。最近公表された新規就農者の減少(関連記事別掲)や、近年の高温や大雨といった気候変動への対応、さらには生産性向上の鍵として期待されるスマート農業の普及といった課題が山積している。これらの解決には、迅速な対応が求められる。
先ごろ発表された「みどり戦略」の進捗状況(本紙一部既報)では、2022年の実績として有機農業面積3万ヘクタール、CO2削減13.8%、化学肥料使用量削減11%、加温面積におけるハイブリッド型園芸施設の割合10.7%、食品ロス削減56%、林業用苗木のエリートツリー割合7.8%など、各種KPIにおいて一定の前進が確認された。
さらに、KPI以外にも、みどりの食料システム法に基づく生産者認定者数が令和6年7月末時点で1万7723人に達し、地域で環境負荷低減に取り組む特定区域(モデル地区)が16道県30区域で設定された(令和6年8月時点)。また、基盤確立事業の認定は累計82事業者、みどり税制の対象農機80機種、みどり法に基づく税制特例の活用は22道府県で53件、融資特例は14府県で26件(令和6年7月末時点)。加えて、J―クレジット制度のもと、水稲栽培における中干し期間の延長が23道府県の水田約4600ヘクタールで実施され、1万4996トンのCO2削減につながった。これらの成果はまだ十分とはいえないものの、費用対効果を考慮しつつも一定の評価ができるだろう。
一方で、生産力の向上に関してはどうか。みどり戦略において「生産力の向上」に関するKPIは設定されておらず、進捗状況を確認しにくいのが現状だ。食料自給率はほぼ横ばいの状態が続いており、さらに食料自給力指標も、いも類中心の作付けで令和5年度は2362キロカロリーと10年前から312キロカロリー減少し、米・麦中心の作付けでは1752キロカロリーで横ばいの状態である。生産力向上の兆しは見えず、昨年の高温のように異常気象が常態化する中、生産環境も厳しさを増している。この状況に対する対策は急務である。
今後、「持続性」におけるこれまでの取組をさらに強化すると同時に、「生産力の向上」に向けては、抜本的な施策や支援内容の見直しが必要だろう。