JA全農 共通農機利用で目指す 子実とうもろこしと水田輪作 宮城県JA古川での大規模実証
JA全農は2日、宮城県大崎合同庁舎で令和4年度から大規模実証に取り組んでいる子実とうもろこしについて研究会を開催した。また同日、カビ毒対策のためプレバソンをドローン散布し、アワノメイガを防除した。飼料用とうもろこしは海外への輸入依存度が高く、国産とうもろこしの栽培面積は少ない。水田輪作の中で栽培することで、大豆作との農業機械の共通利用の促進、水田経営の新たなメニューとして期待できるとして、JA全農は、事業化に向けた取組みを進めている。
研究会では、まずJA全農の耕種総合対策部から、JA古川での子実とうもろこしの大規模実証の取組みについて発表された。
昨年の栽培面積は約108haで、初年度の91haから増えた。風水害などの問題はなく、計画通りに栽培できた。排水対策をしっかり行ったことで、苗立ちが安定し、収量も改善した。さらに、雄穂の抽出期前に殺虫剤(プレバソン)をドローン散布したことで、カビ毒(フモニシン)を基準値(4PPM)以下まで減らすことができた。
作業時間については10aあたり2.2時間かかった(空中散布の時間は含まない)。そのうち、収穫と運搬に34分、除草剤散布に22分かかった。
収支の試算では、機械費が大きな部分を占めるため、大豆栽培で使用する農機を共用することで、機械費を算出。汎用コンバインのレンタル料や、カビ毒検査の外注料金も含めた。結果として、単一作物の収支では、大豆作の交付金(数量払い等)が無いため、子実とうもろこしの導入メリットは「見劣りする」結果になった。このため輪作で後作の大豆や乾田直播を組み合わせることが重要であるとした。
令和6年度は、カビ毒の低減、帰化アサガオ対策でゲザプリム、早生品種の導入、後作大豆の収量確認、飼料としての品質確認を実施する。
「子実とうもろこしの乾燥調製にかかわる課題と対応」については、JA古川の大豆乾燥施設(RC)を効率的に運用する方法や、実運用につなげていくための運用方法や、改修(プール処理・出荷の合理化)について検討するとした。
また、飼料利用に関する実態と課題についても紹介された。輸入とうもろこしは関税が免税されているため、配合飼料工場では、輸入品と国産品の使用履歴を追跡できる体制が求められる。併用する場合は、税関当局の承認が必要だ。課題として①飼料安全法を守るための検査体制の整備②配合飼料工場までの遠距離輸送や保管施設の確保、荷姿変更の確認が必要。その他、国産とうもろこしの価値を理解してくれる畜産農家や消費者とのマッチングが必要。地元での流通が最も合理的な場合もあるとした。
子実とうもろこしのカビ毒検査の簡易的な分析方法については営農技術センター残留農薬室が「イムノクロマト定量システム」を使うことで定量的に測定できるとした。