ヤンマー HD、売上高1兆814億円 過去最高売上・利益を更新 2024年3月期決算説明会開催
ヤンマーホールディングス(山岡健人社長)は6月19日、大阪市北区のヤンマー本社ビルにおいて、2024年3月期の決算及び中期戦略の進捗についての説明会を開いた。それによると売上高1兆814億円、前年同期比5.8%増、経常利益804億円、同30・1%増となり過去最高の売上げ、利益を更新した。国内売上高は4201億円、海外売上高は6613億円。
大川取締役
決算説明会には大川雅也取締役CFO、ジュリアーノ・パロディ取締役CSOが出席。大川取締役が決算概要と中期戦略の進捗について説明し、4月1日よりCSO(最高戦略責任者)となったパロディ取締役が就任の挨拶を行った。
【2024年3月期連結業績】事業別売上高は、アグリ事業は対前年同期比101%。国内市場は、資材価格の高騰による需要減退があり、微減。海外市場はトルコ・ブラジル等の新興国市場の堅調な需要により、増加した。最も良かったのはエネルギーシステム事業で同118%。国内のコロナで打撃を受けたホテルやレストランの需要が回復し、空調・発電機共に底堅く動いた。海外は地政学リスクに伴ってエネルギー設備に対する意識が高まり、発電機が好調に推移した。建機事業は108%。国内は底堅い需要があり、海外はブラジル、オセアニア地域を中心に売上が伸張、北米は前年並み、欧州は増加。エンジン事業は、小形産業用エンジンで、北米及び中国において需要の減退が見られるものの、堅調な需要を背景に増加。舶用エンジンは底堅い海運市場を背景とした建造需要を取り込み、増加。コンポーネント事業は88%、マリン事業は107%。
売上高全体は1兆814億円(前年同期比5.8%増)で、国内4201億円(同4.6%増)、海外6613億円(同6.6%増)。海外売上高比率は61・2%となった。
経常利益の増減分析では、増益要因として、価格改定、為替の影響を含む売上増が157億円、海上輸送などの運搬荷造費の減少が126億円。減益要因は海外を中心とした人件費の増加が92億円、支払利息増加が38億円。結果、経常利益は186億円増の804億円(同30・1%増)。
親会社株主に帰属する当期純利益は496億円(同18・1%増)。純資産は3944億円、営業キャッシュフローが449億円。投資活動では、電動化やDX、インド、水素、グリーン化などに注力し、結果、フリーキャッシュフローが46億円。
2025年3月期の業績見通しについては、農業機械は生産用資材価格の高止まりの影響で国内需要が伸び悩む一方、海外はインドITL社との協業によるトラクタの東南アジア、ブラジル、トルコ等での拡販を期待。産業用エンジン及び建設機械は、北米と欧州で在庫調整の局面にあり、中国も前年並みの需要水準が継続するとの見込み。結果、売上高は1兆500億円(同2.9%減)の見通し。利益についてはインフレや人件費の上昇などコストアップが継続し、為替レートが前期に比べ、円高に推移すると想定され、500億円(同37・8%減)の予想となっている。予想為替レートは1ドル140円、1ユーロ150円。
2025年度中期目標は売上高1兆1800億円、経常利益670億円に下方修正した。
【中期戦略の進捗】持続可能な社会の実現を目指し、2022年度から2025年度までの中期戦略「Change&Challenge MTP2025」について、実施状況を報告した。
同社ではグリーンチャレンジ2050を策定し、循環する資源を元にして、環境負荷フリー・GHGフリー企業への挑戦を行っている。GHG排出量低減では、Scope1&2のCO2排出量を着実に減少させ、サプライチェーン上のCO2排出量削減にも踏み込んでいる。またヤンマーアグリジャパンとフェイガー社の連携によるJクレジットの創出にも着手。
電動化に向けた取り組みでは第1&2世代電動パワートレインの開発に取り組み、オランダのグループ会社ELEO社のバッテリーシステムの拡充を図っている。またパリで開かれた世界最大級の建機展示会、インターマット2024で電動建機を発表した。農業機械では電動農機コンセプトモデルe―X1を発表。2025年に市場モニター機を投入する予定。運転席がなく、農作業時のオペレータの安全を確保し、自動運転機能の搭載も視野に開発を推進中。
水素・グリーン燃料戦略では、岡山のヤンマーエネルギーシステム製造の敷地内にYANMAR CLEAN ENERGY SITEを開設。水素エンジンコージェネレーションシステムや燃料電池発電システムなどの設備を設置し、水素エネルギーシステムの実証を進めている。
農作業の効率化、高精度化への貢献では、直進アシスト機能搭載トラクター「YT4R/5Rシリーズ」やオートコンバイン「YH6135,A/7135,A」などを展開しラインナップの充実に努めている。
新規事業創出に向けた取り組みでは、社員参加型のプロダクトアイデアコンテストを実施し、132件の応募があり、その内、7件が最終選考を通過。本年4月度より事業化に向けたプロジェクトが始まっている。
グローバル展開ではトルコ現地法人でトラクター工場を開設。YMシリーズ、Solis(16〜90HP)の製造を担う。年間生産能力は8500台。スペインのグループ会社HIMOINSA社で新工場を開設。製造品目はライトタワー、バッテリーエネルギー貯蔵システムで、年間生産能力は7000台。
デジタル中期戦略では、生成AIの活用を進め、ヤンマー版ChatGPTの利用者は1600名以上となり、業務への活用の適用件数が5件。販売や在庫の予測に使える予測AIの活用では業務への適用が8テーマとなっている。
〝人の可能性を信じ、挑戦を後押しする〟HANASAKAの活動では、社内コミュニケーションを促進するアプリの開発・導入を進め、グループ全体での文化醸成に向けワークショップを実施。
ヤン坊マー坊のリニューアルでは、Webサイトで一般投票を実施。グローバルで合計7万票を超える投票があり、最多得票を獲得したデザインが9代目となった。
【ジュリアーノ・パロディ取締役CSOの挨拶】ヤンマーにはグローバルリーダーになるための正しいビジョンと能力がある。そのヤンマーという会社、社員、お客様、そしてパートナーの成長と成功に貢献ができるこの機会を非常に嬉しく思っている。今世界は大きな変化の時を迎えている。私はヤンマーの社員や幹部と全力を尽くして、この難局を乗り切ることを確信し、約束する。(挨拶詳細は次号掲載)