農林業機械・農薬・資材についての動向を紹介する

受付時間 平日9:30~17:00

TEL 03-3831-5281

毎週 火曜日発行
 >  > 業務用IH炊飯機SILKひと粒も一杯もおいしく サタケプラント事業本部 炊飯プラント部·部長能登正紀氏

業務用IH炊飯機SILKひと粒も一杯もおいしく サタケプラント事業本部 炊飯プラント部·部長能登正紀氏

業務用IH炊飯機SILKひと粒も一杯もおいしく サタケプラント事業本部 炊飯プラント部·部長能登正紀氏

 サタケ=松本和久社長、広島県東広島市=が開発した業界初の業務用加圧式IH炊飯機『SILK(シルク)』は〝1.2気圧、106℃〟で一気に炊き上げることで「ムラが少なくふっくら炊き上がり、時間が経っても美味しい」というのが特長。キャッチコピーは「ひと粒も一杯もおいしく」。同炊飯機をベースにした業務用炊飯設備はSDGs、脱炭素、働き方改革、人手不足対策、チルド流通など今の時代の要請に応えたコト売り商材として、期待が大きい。広島本社を訪ね、プラント事業本部炊飯プラント部の能登正紀部長に、開発の背景、優れた性能と革新性、今後の展望などを聞いた。

 

  ――業務用加圧式IH炊飯機開発の背景は。

「サタケはポストハーベストで128年の歴史を有し、収穫~食卓に届くまでの川上から川下まで、ほぼ全てを事業範囲としていますが、炊飯機については後発(歴史もまだ25年)でした。その中で、他との差別化を図らねばならないということで検討を重ね、SDGs、脱炭素、働き方改革、求められる米飯の形態の変化(チルド流通)など時代の要請に応えた開発を目指し行き着いたのがこの業務用加圧炊飯機でした」

 ――なぜ加圧式IH炊飯機だったのですか?

「1つは、IHは家庭用ではその炊き上がりの良さで主流になっているのに、業務用ではいまだにガスが主流。何とかIH炊飯を業務用でできないものかと開発を続けてきました。IH(電磁誘導加熱)の炊飯はCO2が抑制され今の脱炭素の考え方にも合致します。ところが、家庭用は小さいので炊くのは簡単ですが、業務用は1釜7㎏、ご飯にすると15㎏にもなるので、これをIHで炊くのは大変難しかったのです。それを可能にしたのが、サタケが世界初で開発した『加圧式IH炊飯機』です」


 ――〝求められる米飯の形態変化(チルド流通など)〟と加圧式IH炊飯設備。


「コンビニなどはこれまで常温流通が主流でしたが、常温だと劣化が激しく廃棄ロスが多い。そこで今、コンビニやスーパーマーケットでは、廃棄ロスを大幅に減らせるチルド流通(工場で炊きあがったご飯をおむすびやお弁当に加工してから配送、店舗の棚まで一定のチルド帯で保たれる)を導入するところが増えてきています。チルド流通では、通常短期間で廃棄になっていたものが長期間品質(美味しさ)を保てます。そのチルド流通の効果をいかんなく高めるのが、この炊飯機の〝1.2気圧、106℃〟の機構で、導入は全国、また海外でも進んでいます」


 ――〝1.2気圧、106℃〟の機構とは?


「1.2気圧の高圧、106℃の高温で炊飯することでご飯に〝はり〟と〝つや〟を生み出します。釜の底面と側面それぞれを発熱制御し釜全体をムラなく一気に加熱して炊き上げることで、ムラなくα化し時間が経過しても、食味劣化の少ないご飯になるのです」
「よくお客様から、1.5気圧や110℃などではダメなのかと聞かれますが、ご飯は生き物ですからね。106℃より上げると粘りが出すぎ、おむすびやお弁当の形が整わなくなります。1.2気圧、106℃という最適値を見出すには1年ほどかかりました。それを1年現場に入れて実証試験を行い3年目でテスト機。勿論、食味の判定は食味計とご飯ソムリエによる味覚試験と両方で行っています」


 ――この加圧式IH炊飯機を核とした『加圧式IH炊飯設備』が人手不足、働き方改革などにも非常に有効だそうですね。


「人手がほぼ不要の全自動、約40%の省スペース、8割の節水(一般的には米1に対し水8だがサタケの場合、米1対水1)が可能で、更には労働環境の改善にもつながります。同炊飯設備は、一定水温で効率よく短時間で洗米。浸漬についても丸釜ではなく長方体の容器にし更にこれをゴンドラ式にすることによって省スペース化を実現していますが、実はこれには水稲の温湯種子消毒機の技術が、カスタマイズされています。簡単な発想のようで、なかなかできないことで、2000種類(型式まで含め)にも及ぶ機械開発のアイデアを持つサタケならではな総合力の強みと自負しています。また加圧式単釜炊飯方式のため単体炊飯機ごとに炊き分けができ、小ロット多品種にも対応できます」


 ――この炊飯機と働き方改革、人手不足対策にはどんな関係が。


「ガスの場合、炊飯中に熱や蒸気が逃げ、部屋全体が息苦しいほど熱くなります。加圧式IH炊飯機の場合は、発生する蒸気を逃がさず集中排気することで、ドライな環境を作り、それが労働環境改善に繋がると同時に空調費も削減できます。また手間のかかる吹きこぼれの清掃も不要です」


 ――コスト的にはどうですか?将来展望は?

「ランニングコストでは電気料金の体系は地域によって異なるので、一概にガスとの比較はできませんが、ほぼ変わりないと思います。また、弊社の炊飯システムは省スペース(機械の設置面積が約40%小さい)なため、地価の高い地域では、特に建築のイニシャルコストが大きく変わってきます。そうした意味では香港、シンガポールなどは非常に有望です。シンガポールからは既に多くの引き合いを頂いています。機械の価格はやや高いですが、美味しさ、その食味維持、それによるフードロス削減、環境性や労働環境改善、自動化による労働力削減、SDGsなど総合的な価値を認めて頂ければ、今後、導入件数は必ず伸ばせると確信しています」


 ――能登半島地震の被害が甚大です。東日本大震災でもこの炊飯機が活躍したそうですね。

「災害時にガスはなかなか復旧に時間を要します。その点、IHは大型の発電機さえあれば、どこでも炊き出しができます。余談ですが、東日本大震災、熊本地震の折の石原軍団の炊き出しには当社の炊飯機を提供していたんですよ」


 ――今後の抱負を。


「SILKは本当にいい!現在の納入実績は70ライン、国内シェアは15%ほどですが、これをなんとか早く50%台までもっていき、業務用炊飯のスタンダードにしたい!するぞ!が今後の目標です」。 

関連記事

諸岡 2つの展示会に出展 最新キャリア、破砕機展示

諸岡 2つの展示会に出展 最新キャリア、破砕機展示

〝チャレンジ〟掲げ新生諸岡始動 35年ぶり社長交代 海外、国内林業部門強化へ

〝チャレンジ〟掲げ新生諸岡始動 35年ぶり社長交代 海外、国内林業部門強化へ

アイデック 安全講習会で講演 安全な草刈りをサポート

アイデック 安全講習会で講演 安全な草刈りをサポート

ビコンジャパン GPS連動型スマート農機 畑作「三種の神器」 機能拡張しより使いやすく

ビコンジャパン GPS連動型スマート農機 畑作「三種の神器」 機能拡張しより使いやすく