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5年度天皇杯等受賞者の横顔 効率高い苗木生産 現場ニーズを踏まえ技術改良

5年度天皇杯等受賞者の横顔 効率高い苗木生産 現場ニーズを踏まえ技術改良

 農林水産業において、特に優れた取組を表彰している農林水産祭天皇杯等。本紙では、受賞者の概要を紹介している。


【天皇杯林産部門=谷口淳一氏(北海道北斗市)】

出品財は技術・ほ場(苗ほ)。
 谷口氏は平成26年度から、気象害を受けにくく、また育苗作業を通年化できるコンテナ苗生産に着手した。トドマツコンテナ苗1200本から毎年生産規模を拡大し、令和4年度ではトドマツコンテナ苗30万本、カラマツやクリーンラーチのコンテナ苗を合わせると約52万本を作付け、コンテナ苗生産量としては道内3位。トドマツコンテナ苗は全道の約4割を占めている。積極的な設備投資による事業形態の刷新や労働環境の改善等により効率的な生産を行い、北海道の代表的なコンテナ苗生産者として優良なコンテナ苗を安定的に供給している。
 試験研究に熱心な谷口氏のコンテナ苗生産技術は全国的にみても非常に高い。特にトドマツコンテナ苗は、出荷までに概ね4年の長い育苗期間を要するほか、根鉢が中央から崩れやすいなどの特有の課題があるなか、植栽時の労働負荷や下刈り作業の軽減が期待できる大きい規格のコンテナ苗として苗長を揃えた出荷を可能にし、また根鉢を生分解性不織布で包むことで梱包や輸送、植栽の際に崩れないようにするなど、現場のニーズを踏まえ技術改良を重ねた結果、トドマツコンテナ苗は、植栽する事業体から高い評価を受けている。
 また、ほ場や施設内の舗装化や移動式レール台車、プラスチックパレットの育苗台の導入、ハウスについては遠隔操作による潅水、液肥、殺虫殺菌を可能とする設備の導入等、合理的な土地利用や苗木生産効率を高めるための創意工夫に徹底して取組むことで、高い苗木生産能力を生み出すとともに、労働負荷の低減を実現している。
 今後は、既に生産に取組んでいるクリーンラーチ及びトドマツのコンテナ苗生産施設を更に拡充し、大幅な生産増加を目指している。


【内閣総理大臣賞園芸部門=JAやさと有機栽培部会(代表:田中宏昌氏、茨城県石岡市)】出品財は経営(有機野菜)。
 

 1990年代に有機農業への関心が高まったことを機に、主要な取引先だった生協に有機野菜を提供するため、部会が設立された。JAやさと、石岡市の研修機関と連携して新規就農者を育成し、研修後に新たな部会員として迎え入れることで、生産規模を拡大。また、マーケット・インに基づく厳密な栽培計画、出荷・販売計画のもと、高位平準化された有機野菜を出荷・販売することで着実に事業規模を拡大しており、主要品目の作付面積、生産量、販売金額のいずれも年々増加している。
 具体的な取組としては、JAや市が設置する新規就農者の研修機関と連携して研修生に技術指導を行うほか、移住者が孤立することのないよう生活面も積極的に支援。また、研修終了後はほぼ全員が部会に加入しており、事業規模の拡大を図るだけではなく、新規就農者の定着や地域コミュニティの形成にも貢献している。
 更に、生産者の意識向上のため部会員全員が個人で有機JAS認証を取得することで、有機野菜の出荷先を確保。また、地域内で家畜糞や落ち葉、稲わら等を調達するほか、放置された竹林の竹を粉砕・発酵させ堆肥化を試みるなど、環境に配慮した持続可能な地域資源循環型農業に取組んでいる。
 今後は、作業の機械化による省力化やIT技術を活用した効率的な栽培体系を確立し、生産・安定供給を図ることで、信頼される有機野菜産地としての地位を確立していく。
【内閣総理大臣賞多角化経営部門=㈱デイリーファーム(代表:市田眞澄氏、愛知県常滑市)】出品財は経営(6次産業化)。
 

 同社は、代表取締役の市田氏の祖父が大正15年に養鶏業を開始し、平成3年に法人化して設立された。現在は、採卵鶏約16万羽を飼養し、年間約2800tの鶏卵を生産。6次産業化にも取組み、平成27年に卵を使った洋菓子の製造販売店舗、平成30年に卵料理を提供する農家レストラン、令和4年に卵を使った多様なパンを販売するベーカリーをオープンした。
 代表取締役及び専務取締役は獣医師の資格を有しており、鶏の健康に配慮した飼育を心がけるとともに安心・安全な卵を生産するため、第三者認証である、「ISO22000:2005」を平成20年に、「JGAP」を平成31年に取得。また、鶏の飼料にもこだわり独自配合したトウモロコシや大豆の他、近隣の農業者やJAと連携をして、地域の耕作放棄地で生産した飼料用米を10%以上配合したものを使うなど地域農業の活性化にも寄与している。
 また、鶏卵相場の影響が大きいBtoBの販路だけではなく、直売や6次産業化等のBtoCの販路を持つことで、経営の安定化に繋がった。また、6次産業化施設には、年間約15万人の観光客が訪れるなど、地域への観光誘客にも貢献している。
 今後は、より一層の地域の活性化や関係交流人口の増加を目指す。

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