IHI アグリテック ラフ向け無人芝刈機発売
初披露した同機と磯本社長
2025年量産化へ 夜間も無人で芝草管理実現
IHIアグリテック=磯本聡一社長、長野県松本市石芝1―1―1=は、ゴルフ場のラフ向けの無人芝刈機を開発。2023ジャパンターフショーで試作機を初披露した。マミヤ・オーピー(埼玉県飯能市)と共同開発した自律走行式3連ロータリーモアで、高い刈り込み精度を両立。同機は2024年度に市場投入し、2025年度には量産化を目指すとしている。
ゴルフ場の芝草管理においては傾斜面での作業や、地形に合わせた刈込作業といった熟練の技術が必要とされる一方で、担い手不足や高齢化などから作業者の確保が年々難しくなっている状況にある。自動芝刈機の導入は、この状況を解決し、省人化・無人化の切り札として自動芝刈機の導入が期待されている。
そこで同社は、フェアウェイ芝刈り機の自動化で実績があるマミヤ・オーピーの自律走行制御システム「I―GINS(アイジンス)」を搭載したラフ向けの無人3連ロータリーモア「SG250iG」を開発。RTK―GNSSと慣性航法を組み合わせた高精度な走行制御システムにより、夜間や霧などで視界が悪い環境下やアンジュレーションのきつい地形でも機体の位置や姿勢を正確に知ることができるため、プログラムどおりに機体を誘導することが可能で、無人での芝草管理を実現した。
車体には障害物検知センサーとバンパーセンサーを搭載することで進行方向に障害物を検出した場合、機体を自動で減速・停止させ、登録のスマートフォンに通知が可能。また、ロータリーデッキの昇降・回転・旋回の加減速を自由に調整できる機能を加えることで、芝草を傷つけない良質な芝刈りを可能とした。さらに、刈り取り中に機体が停止した場合は、刈り残しがないよう少し後退してから作業を継続できることから芝草管理においての省人化と、均一な芝刈りを両立させ、一定の景観を保つことができる。
同機は、ゴルフ場のみならず、面積が広い平地向けにも拡販する予定。主な特長は次の通り。
【スマホで作業指示と遠隔操作が簡単にでき、素人でも作業可能】作業者は、スマホのアプリ上から予め用意された経路のセット(好みのターンや運転角度、速さ)を選択し、簡単に操作し作業指示ができる。熟練者ではないクラブハウス従業員でもラフ刈りが可能。
【夜間刈りが可能となり、集客率を向上】コース管理作業を行う夕方には顧客を入れられず、集客機会を逃していたのが現状。同社の無人芝刈機を使うことで、高精度できれいなライン作りができ、夜間でも作業を行えることで、日暮れギリギリまでプレーできるため、集客率向上に貢献。
【マッピング方式から、芝刈りにおいて走行経路の変更も自由自在】GPSの測位データを取り込んでコースマップを作成し、芝を刈る範囲を特定。その後、芝草の状況に合わせ、どのように刈るのか、角度や速度、ターンの方法など、キーパーの考えを反映した走行経路を専用の経路作成ソフトで作成し、これをもとに自動走行させる。
これまでない開発スピードで進めている、と磯本社長。「ラフは一番面積があり、管理作業において悩みどころの部分。その場所を機械に任せられれば人手不足が加速している中で省人化を図ることができる。今回初披露したことで多くの方から期待の声をいただいた。同機で最も強調したいのが作業精度。RTK―GNSSを使用することでプラスマイナス25㎜前後の精度を実現した。来年の春にはモニター機として使っていただく予定で、2025年には量産に持っていきたいと考えているので、期待いただきたい」と述べた。
《主要な諸元》▽全長=2620㎜▽全幅(モア付)=1910㎜▽全高=2020㎜▽質量(モア付)=1058㎏▽走行駆動方式=HST油圧無段変速(2WD/4WD切替式)▽変速=L:低速(4駆)、H:高速(2駆)▽速度=前進L:0~8・0㎞/時H:0~16・0㎞/時、後進L:0~5.3㎞/時H:0~10・5㎞/時▽モア刃数=3枚▽刈幅=1524㎜▽刈高=25~110㎜(11段階)▽作業能力=6100㎡/時(走行速度5㎞/時、効率0.8の時)。