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万策尽きた後の僥倖 精米ロールをcBN砥石に あれっ?「扁平になってる!」 -真吟-

万策尽きた後の僥倖 精米ロールをcBN砥石に あれっ?「扁平になってる!」  -真吟-
写真説明 扁平精米と球形精米の違い

 サタケ=松本和久社長、広島県東広島市2―30=の醸造精米の画期的技術「真吟」を回を分け紹介する。
     ◇
 1993年、扁平精米に関する論文が初めて発表された。通常、酒米はサッカーボールのように球形に削られるが、扁平精米はラグビーボールのように米と同じ形に、かつ薄く削る。同じ精米歩合でも球形より雑味の元となるタンパク質が少なくなり、よりスッキリとした繊細な酒を醸すことができる。

 しかし、扁平精米は技術的に難しく、精米時間もかなり必要とされるため、一部の酒蔵を除いては実用化(商用化)されなかった。サタケでも扁平精米に挑戦したが、悉く失敗。いつしか扁平精米の名は社内から忘れ去られた。ところが論文発表から25年、サタケが扁平精米を可能にした。しかもそれは偶然の産物だった。
 扁平精米の記憶が消えた頃、従来機より少しでも効率よく砕米の少ない精米機を開発することになり、技術者は研究開発に勤しんだ。結果は胸を張れるものではなく、再び暗礁に乗り上げた。その時、精米機開発に直接関与していない技術者が「精米ロールの材質を全く違うものにしたらどうか」と提案した。ある意味、部外者からの提案だったので真摯に検討されることもなく採用は見送られた。おそらく「精米ロールは砥石製」であるという呪縛から離れられなかったのだろう。
 
 その後も、様々な実験が行われたが、思うような成果が得られず時間だけが空しく過ぎ去っていった。万策尽きたとは言わないまでも、仕方なく一旦は不採用となった精米ロールの材質を変更して実験した。すると予期せぬ事態が起こった。「おい!これを見てみい!」と興奮気味に話す技術者が並べた米が「扁平」になっていた。予想したものとまったく違う結果が突然目の前に現れ、技術者は興奮した。これが後の「真吟精米」につながる、cBN砥石(写真下)を使った扁平精米出現の日だったのだ。
 

 

 その後、再度実験をして再現性を確かめ、精米精度を高める改良を何度も繰り返し、2018年、ついに新型醸造用精米機が誕生した。まさに「瓢箪から駒」の出来事だった。サタケは創業以来、画期的と言われる製品を数多く世に送り出した。その多くは過去の知識や経験則を超えたものだった。扁平精米も、常識外の発想や事象が画期的な発明に繋がる代表例となった。
 次回は、この「画期的な製品が売れない!」という事態に直面するお話(サタケニュースレターから)。

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