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世界初の無人自動運転コンバイン 来年1月に上市 無人自動農機3機種揃う

世界初の無人自動運転コンバイン 来年1月に上市 無人自動農機3機種揃う
クボタ(北尾裕一社長)は6月14日、世界初(同社調べ)の無人自動運転でコメ・麦の収穫が可能な『アグリロボコンバインDRH1200A―A』を来年1月に発売すると発表した。同日、発売に先駆け、千葉県柏市の㈱柏染谷農場のほ場を借り受け、行政・報道関係者に実機と麦の収穫作業を披露した。価格は税込み2203万7400円から。これによりクボタはトラクタ、コンバイン、田植機の同社主要3機種全てで『無人自動運転仕様』をラインナップすることになる(関連記事1面)。


   AIカメラが人を検出し自動運転を停止


 
 無人自動運転農機トラ・コン・田の3機種揃う



発表会場入り口には無人自動運転仕様のトラクタ、アグリロボトラクタMR100AH、アグリロボ田植機NW8SA、アグリロボコンバインDHR1200A―Aの3機種が揃って展示されたが、これらは新型コンバインの実演後、ほ場をデモ走行。体験試乗も行われた。


  

 発表会の開会にあたり、クボタの谷和典・作業機事業部長が挨拶。
 
「担い手農家への農地集約が進み、人手不足や省力化、作業効率の向上による生産コストの低減等様々な経営課題を抱えている。その解決策としてICTやロボット技術を活用したスマート農業への取り組みが急務となっている。当社ではスマート農機の第1弾として、GPS搭載農機を2016年9月に直進キープ機能付きの発売を開始した。これを皮切りにこれまでスマート農機の開発を積極的に行い、アグリロボシリーズと称した自動運転農機の市場投入も進めてきた。その中で、唯一コンバインだけがオペレータが乗った状態で自動運転が可能となる有人仕様のみとなっていたが、この度ユーザーの監視下で無人運転が可能な『アグリロボコンバインDRH1200A―A』を2024年1月に発売を開始する。特に無人仕様のコンバインの開発・投入に時間を要したのは、トラクタや田植機がほ場に作物がない状態で作業を行うのに対して、コンバインは常に目の前に作物がある状態で作業を行う。収穫する作物やほ場に対する適合性、また作物と障害物とを識別する技術が必要となってくる。作物の中にいる人を検出するという点も大きな課題だった。今回開発したDRH1200無人仕様はICTとロボット技術を駆使して誰でも簡単に、楽に、上手に、安心して刈り取り作業ができるコンバインとなっている。無人自動運転コンバインは、乗車することでのオペレータの負担や乗車時間を大幅に軽減できることから軽労化や省力化に貢献できれるものと思っている。今回の主役となるアグリロボコンバインDRH1200A―Aの市場投入によりトラクタ、田植機、コンバインで無人仕様をラインナップするのはクボタだけとなる」と述べた。
 続いて、開発担当からDRH1200A―Aが説明された。
【作物のあるほ場において、人と障害物を検出することができる】コンバインの収穫作業の人・障害物検出における課題は⑴作物の中に立っている人を検出する⑵麦の収穫作業においてほ場内に籾車が入ることもあるので、ほ場内の車を検出する⑶作物に反応しないこと。また収穫時にほ場内に入ってくる鳥に反応しないこと―の3点だ。これらの課題を解決する『人・障害物検出センサ』としてDRH1200A―AはAI学習により作物中の人を認識する人検出用のAIカメラと、車両等の金属体を検出する『車両検出用のミリ波レーダ』を搭載した。AIカメラとミリ波レーダの搭載位置は、AIカメラは機体前方と後方、機体左右の4個、ミリ波レーダは機体前方と後方の2個。人検出用のAIカメラが人を検出すると自動走行停止。鳥は検出しない。また、ほ場内の車両をミリ波レーダで検出すると自動走行を停止する。
【自動運転領域が拡大】DRH1200A―Aは最外周を手動運転で刈取り後、2周目からは無人で自動運転ができる。ほ場面積1‌ha、刈取りヘッダー幅2.6mの条件における、ほ場内の自動運転領域は、DRH1200A―Aは90%、手動で3~4周走行する現行機WRH1200A2は71%で、DRH1200Aは現行機に比べ19%拡大している。
 DHR1200A―Aで新たに対応した周囲刈り2~3周。熟練者は作物に倣って刈取りし、刈取り部を上げて畦ギリギリまで前進することで旋回するスペースを確保。その後、後進しながら機体の向きを変え、次の刈取りラインに機体の向きを合わせる。これらの動作で切り返しの少ない効率的な旋回をしている。
 熟練者同等の周囲刈り2~3周の旋回を実現するため、機体前方に搭載したレーザーセンサ―で畦の高さを検出し、あぜが低い場合は、畦ギリギリまで前進し旋回。畦の高さは最外周を手動運転で刈取り時に取得するため、その際存在する人や障害物も畦の高さに含める(畦ギリギリまで旋回すると旋回時に接触してしまうため、あぜから離れた位置で旋回する)。低い畦では熟練者と同じ旋回動作を行う。
 まず作物に倣って刈り取る→旋回スペースを確保(後進し再度作物に倣って刈り取り)→旋回スペースを確保できたので、刈取り部を上げてギリギリまで前進→その後後進しながら次の刈取りラインに機体の向きを合わせ次のラインを刈る。
【倒伏した作物の刈取】熟練者は作物の高さによって刈取リール位置(高さ・前後)と車速を調整しながら刈り取る。立毛時はリール先端で作物の先を刈取り側に引き寄せるために刈取リールは上側にしている。一方、倒伏時はリール先端で作物を引き起こすために車速をおとして刈取リールを前方の下側に移動する。リールの位置が適正でないと、作物の刈り残しや刈取った作物をリールで巻き上げて刈取り部からこぼれてしまう。そこでDRH1200A―Aでは、機体前方に搭載したレーザーセンサにより作物の高さを検出することで熟練者同等の刈取を実現した。自動運転中に機体前方の作物をセンシングしながら、作物の高さに応じて、リール位置と車速を自動制御する。立毛時はリール位置を高く、倒伏時はリール位置を低くし、更に倒伏している場合は減速して刈取る(作物の高さを検出することで60度まで倒伏した作物の刈取りに対応した)。
【刈取り詰まり自動除去】刈取り部の詰まりを検知すると電動刈取逆転装置により、詰まりを自動除去後、刈取りを再開する。刈取り部の左側に搭載したつまり検知センサにより瞬時に詰まりを検知することでつまりが軽く済み、自動での除去をしやすくしている。詰まりを検知すると、走行と刈取を止める。そして穂先を切らないように少し後進してから、逆転を3回行う。その後つまりが除去できたことを、確認したら刈取を再開する。
【作業の仕方】①収穫するほ場内に入りマップの作成を開始→②手動でほ場の最外周1周の刈り取り。ルートの作成と排出位置を設定する→③自動運転開始位置にコンバインを移動させる→④オペレータはコンバインから降りる→⑤ほ場付近から自動運転用のリモコンで自動運転を開始→⑥コンバインは刈り取りしながらグレンタンクが満タンになるタイミングを予測し、最適なタイミングで指定した排出位置に自動で移動する→⑦移動後、ユーザーがリモコン操作により籾車にもみを排出→⑧全ての作物を刈り取り後、コンバインは自動で排出位置に移動し、収穫作業完了。
 ※自動運転開始後、収穫完了まで、コンバインに搭乗する必要はない。
【製品構成】前述のコンポーネントのほか▽車両の位置・方位情報を算出する『RTK―GNSS』▽自動運転全般の制御を行う『自動運転ECU』▽走行ルートの生成や作業設定、作業時の自動走行ルート・車両情報表示を行う『ターミナルモニタ』▽ロボット農機の運転状態を表示する『積層灯』▽遠隔で自動運転の開始・停止等の操作を行うための『リモコン』▽AI画像認識やミリ波レーダ、レーザーセンサを演算処理する『画像処理ECU』がある。
 税込み価格は2203万7400円(刈幅2.1m)~2332万円(同3.2m)。


DHR1200A―Aの特長
 
 ①機体の前後左右に搭載するAIカメラと機体前後のミリ波レーダが周囲の状況を監視しており、無人での自動運転中に周辺の人や障害物を検知すると機体が自動で停止する。
 ②ほ場最外周の1周だけオペレータが運転して刈取り作業をすることで、機械が自動で最適な刈取りルートを作成する。2周目からはほ場周辺で使用者による監視の下、無人自動運転が可能。無人自動運転によって未熟練者でも熟練者と同等の刈取り作業を行うことができる。
 ③機体前方のレーザセンサ(レーザー光を使用して対象物までの距離や位置、形状を検出するセンサー)とRTK―GNSSアンテナにより、畔の高さと位置を検知し、畔が低い場合は熟練者のように機体の一部を飛び出して効率的な旋回を行う(クローラが畔を越えることはない)。また、レーザセンサは作物の高さも検知し、作物の高さに合わせて機体前方の刈取り部やリールの高さや車速を自動調整することで倒伏角度60度までの稲・麦の刈り取りが可能。
 ④無人自動運転時に刈取り部に稲・麦の詰まりを検知した場合には、自動で詰まりを除去して作業を再開するので、監視者が機体まで行くことなく、詰まりによる時間ロスを最小限にとどめる。
 ⑤通信距離約250mのリモコンにより、監視者は自動運転の開始や停止、モミ排出前の機体前後進等の遠隔操作が可能。

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