農水省 播種前契約を促す 米取引の事前契約 需要に応じた生産へ
米の需要に応じた生産・販売に向けては、豊凶変動や価格変動リスクに対応しつつ、事前に販売先や販売する量等を見通すことができる事前契約の拡大が重要となる。このため、農水省は、事前契約の状況について調査を行うとともに、米取引に関する目標値等を設定した。それによると、仕入計画数量に占める播種前契約の割合は令和3年産で28%。これに対し、目標値を令和8年産において50%に拡大するとし、令和6年度予算概算要求に向けて具体的な施策の検討を進める。
人口減少が進むわが国において、主食用米の国内消費量減少は今後も続く。そのため、米の需要に応じた生産と販売を徹底していく観点からは、川下のニーズが作付に反映されるよう、実需者等のニーズを生産に反映させるための事前契約を拡大するとともに、播種前契約への転換を進めていくことが重要。また、播種前契約は、生産者が主食用米以外へ作付転換する際の判断にも繋がる。
こうしたことから、農水省では、年間玄米取扱量500t以上の集出荷業者の協力を得て、事前契約の状況について調査を実施した。それによると、仕入計画数量に占める播種前契約(複数年契約を含む)の割合は、令和3年産は28%、4年産は29%。このうち、実需者と結びついたものの割合は、3年産は5%、4年産は3%だった。
この結果を受け、農水省は令和8年産において、播種前契約(同)の比率について、基準値の令和3年産における収穫前契約(同)の比率(47%)と同程度の50%に拡大と目標値を設定。また、実需と結びついた契約の比率については、同様に10%へ拡大するとした。
そのうえで、令和6年度予算概算要求に向け、播種前契約への転換を促す施策については、米穀周年供給・需要拡大支援事業による長期計画的な販売の支援(保管料等の支援)における加算措置のあり方などを検討する。
また、農水省は3月30日に「米取引の事前契約研究会(令和4年度第3回)」を開催し、生産者等と意見交換。目標値に関しては、「妥当」が共通の意見だった。また、生産者からは「播種前契約の比率(50%)については、更に高ければ、需要に応じた生産にもより繋がるものとなり、また、作付もしやすくなる」との声。集出荷業者・米卸売業者からは「実需と結びついた契約を令和8年産までに10%とするのは容易ではないが、指標を広く示すことで、実需も含めた播種前契約への動きが進むことを期待」などの意見があった。
一方、施策の方向性については、生産者から「生産コストをベースにした価格による取引が望ましい一方で、播種前契約が進まない要因として、価格や作況の変動が考えられる。特に、中食・外食等の実需からの引き合いが強いが利益幅の小さいB銘柄について、価格が安定することが望ましい」などの意見が出た。