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農業技術10大ニュース 約30倍の作業能率 リンゴの落葉収集機など

リンゴの落葉収集機(写真:農水省資料より)
農水省農林水産技術会議は令和4年12月、「2022年農業技術10大ニュース」を公表した(本紙既報)。昨年1年間に新聞記事となった民間企業、大学、公立試験研究機関及び国立研究開発法人の農林水産研究成果のうち、内容に優れるとともに社会的関心が高いと考えられる成果10課題を農業技術クラブ(農業関係専門紙・誌など30社)の加盟会員による投票を得て選定したもの。手作業の約30倍の能率でリンゴの落葉を収集する機械など、改めて主な技術の内容をみてみたい。
【振動でトマト害虫を防除―コナジラミ類の発生抑制・トマトの授粉促進による安定生産へ―】電気通信大学等の振動農業技術コンソーシアムは、トマトの株に振動を与えて害虫のコナジラミ類を防除する技術を開発した。
 研究では、振動装置を設置したトマト栽培施設において、振動が害虫の発生を抑制することを解明。開発された技術は、トマト栽培施設内のパイプに設置した磁歪式振動装置(東北特殊鋼製)から、ワイヤー経由でトマト株に振動を伝達。害虫の密度を低減することで、農薬散布回数を削減できる。振動はトマトの授粉を促進するため、ダブル効果が期待される。
 また、振動に感受性を持つ昆虫は多いため、振動による防除は様々な害虫への応用が可能。同技術により化学農薬の低減と省力化が期待される。
【超音波を活用したヤガ類の防除技術を確立―開発した装置で農薬散布回数9割減―】農研機構、メムス・コア、京都府農林水産技術センターは、幅広い作物を食害する害虫のヤガ類を超音波で追い払う装置を開発し、防除技術として確立した。
 同技術は、ヤガ類(ハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウ等)がコウモリの発する超音波を回避する習性を利用し、ほ場への侵入を防止。コウモリと同様の超音波を発する装置1台、スピーカ最小4台で2500㎡のほ場をカバーできる。
 効果は、イチゴ栽培施設におけるハスモンヨトウの卵の数が9割以上減少。また、シロイチモジヨトウによる露地栽培ネギの被害株率を9割削減、農薬散布回数も約9割減となった。同技術は、環境保全と両立する害虫防除に貢献し、減農薬栽培の促進に寄与する。
【リンゴ黒星病の発生低減に貢献―リンゴの落葉収集機で効率よく9割除去―】農研機構、オーレック、青森県産業技術センターは、リンゴ黒星病の発生源となる落葉の収集機を開発した。
 同機は、接地輪の動力で回転するブラシの前方に20本のレーキを配置し、レーキでかき起こされた落葉を回転ブラシでバケットに収容する落葉収集機で、乗用型草刈機でけん引して走行することで、バケット内に落葉を収集。手作業の約30倍の作業能率でリンゴの落葉を収集できる。また、雪解け後の地面に張り付いた落葉に対し、8~9割の除去率を達成。落葉を収集することで、リンゴ黒星病の原因菌の飛散胞子数が大幅に減った。
 リンゴ黒星病の発生低減には、発生源となる落葉を収集し、樹園地の外に搬出することが有効であるが、作業従事者の減少により実施が困難となっていた。今回、効率的なリンゴの落葉収集機が開発されたことにより、発生低減に大きく寄与することが期待される。同機は2022年3月に市販が開始されている。

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