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労働時間削減を実証 単収も1割の増加 スマート農業実証PJ成果

スマート農業の導入により水田作で、平均で総労働時間が約1割削減、単収は約1割増加することが明らかになった。農林水産技術会議事務局と農研機構による令和元年度から2年間のスマート農業実証プロジェクトでの成果をまとめたものによる。報告書は水田作とそれ以外に分けられて公表されており、水田作については、前述の成果のほか、自動運転トラクタと直進アシスト田植機をセット導入することで平均18%と大きな労働時間削減効果を得られることもわかった。

 スマート農業実証プロジェクトはロボット・AI・IoT等の先端技術を実際の生産現場に導入して技術の導入による経営改善の効果を明らかにすることを目的に令和元年からスタート。元年度69地区、2年度55地区、2年度補正24地区、3年度34地区、4年度23地区の合計205地区で実証が進められている。いずれも実証期間は2年間で令和元年度スタートの実証は昨年度で終了しており、その成果の取りまとめが進められていた。
 公表された資料のうち、水田作を見てみると、導入状況としては自動運転トラクタ・自動操舵システムは27地区、自動水管理システム(水位センサーのみも含む)27地区、食味・収量コンバイン26地区、田植機(直進キープ等)24地区、ドローン(農薬散布)21地区、ドローン(センシング)21地区、営農管理システム18地区、可変施肥システム12地区、リモコン式草刈機11地区、ドローン(肥料散布)6地区、生育予測システム5地区などとなっている(いずれも30地区中)。これらの導入の成果として、各実証地区における総労働時間は平均9%削減した一方、単収は平均9%増加した。また、実証地区の約3割で10%以上の労働時間の削減効果が見られた。総労働時間に占める割合が高い「耕起・代かき」及び「田植」において、自動運転トラクタ及び直進アシスト田植機をセット導入した地区では、平均約18%と大きな労働時間削減を達成した。単収増加については、センシングデータ等に基づく可変施肥や、それに加えて品種構成・施肥設計を改善した地区で成果がより顕著に表れた。
 一方、水田作以外では、9つの実証事例を紹介している。ネギのスマート農業技術による大苗栽培の実証事例では直進アシストトラクタで大苗を高精度に効率的に定植したことで、ある作型では単収が25%増加。大苗定植で生育初期から機械除草が可能となり除草作業が軽減。また、半自動根葉切り皮むき機で調製時間も削減。全体の作業時間は17%削減できた。同事例について、機械・施設費の増加に伴い10aあたりの利益は減少したが、機械の利用面積を増やすことで経費を抑え、利益を向上させることが可能。大苗栽培について増収・省力効果が明らかとなったことから、今後大苗の供給体制を強化することで規模拡大につながると考察している。
 なお、令和5年度予算でも実証は継続される予定となっており、先ごろ公表された概算要求では「みどりの食料システム戦略実現技術開発・実証事業」に位置づけられた「スマート農業総合推進対策」のなかで「スマート農業産地モデル実証」に2億9972万円計上。このほか、スマート農業の実証としては環境保全型スマート農業技術の実証に13億円を計上している。前者は昨年から引き続き行われるもので産地における複数の経営体がサービス事業体等を活用して作業集約化等を図り、スマート農業技術の導入による各種作業の効率化やコスト低減等の効果を最大限に発揮する持続可能なスマート農業産地をモデル的に実証するもの。後者は環境負荷低減効果が期待されるスマート農業技術について、技術的課題を検証しつつ環境負荷低減効果と生産性向上効果を合わせて実証する「環境保全型技術実証」とデータを活用し、海外依存度の高い農業資材や労働力の削減、自給率の低い作物の生産性向上等を目指す取組の実証を行う「データ駆動型資材低減技術実証」などがある。

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