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【特別寄稿】農業機械革新の歴史を語る -7- =農研機構革新工学センターシニアアドバイザー 鷹尾宏之進=

 農業を営む上で欠かすことのできない農業機械。時代ごとに現れる様々な課題を解決し、農家の「頼れるパートナー」としてわが国農業の効率化・農産物の高品質化に貢献してきた。そこで、農業機械の開発・改良を進めてきた農研機構革新工学研究センターの鷹尾宏之進シニアアドバイザーにその歴史を解説頂く。本紙では回を分けこれを紹介する。
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国産発動機が普及、大正期には性能が海外に比肩

発動機の発達には1920年(大正9年)に行われた小型発動機設計懸賞募集(応募52台、入賞5台)と、1921年(応募29台、入賞7台)、1925年(応募82台、入賞19台)、1930年(応募85台、入賞59台)及び1937年(重油発動機、応募61台、入賞10台)に実施された農業用小型発動機比較審査が大きく影響している(写真)。この間水冷式の石油発動機が殆どで、空冷式は1台のみである。1925年(大正14年)比較審査の緒言には「農業動力として発動機を利用するもの既に2万5千台以上に達し、近時益増加の趨勢に在り。然るに現今販売せらるる発動機は本邦製及外国製共にその種類頗る多く、而も機構複雑なる為専門的の知識を有するに非ざれば、容易にその優劣を判別し難きを以て、機械に関する知識に乏しき農業者は常にその選択に混迷しつつあり。依て農業用として最需要の多き制動馬力5馬力以内の発動機の比較審査を為し、農業者の選択上誤りなからしむる」とその意義を記し、審査概評では「1921年(大正10年)に比して内国製発動機の著しき進歩発達を見たるは喜ぶべき現象なり。最優良型式は外国製品に比し何等遜色なし。なお細部に至りては将来研究改良の余地あり」としている。また、1930年(昭和5年)比較審査の緒言では「本邦内地に於ける農業動力として小型発動機の利用は1919・20年に創り1927年9月既に4万台の普及に達し、先の1925年に比して著しく変化しているのでいつまでもその成績を規準とするのは困難」としている。特筆すべきは、1930年の比較審査で最上位の推薦と評価された19台は全て国産だったことである。審査概評には「1925年度に於ける比較審査に比し内国製発動機の著しき進歩発達を見、この推薦せられたるものに至りては設計、材料、工作共に大なる進歩を示し、運転確実、燃料消費量僅少にして農業用原動機としての用件を殆ど具備し、外国製品を遙かに凌駕するに至れるは意を強くする所なり」と記されていて、読んでいる方も気分が良い。1937年(昭和17年)小型重油発動機比較審査の緒言では「低級燃料たる重油を使用して動力発生費の経済化を図らんが為に各種重油発動機が製作され、増加の趨勢にある。運転に当たって特殊の知識を必要としているため、比較審査により選択上の指針たらしめんとする」と記されている。審査概評では「小型ディーゼル機関の製作は僅々数年を出ざるに拘らず、ある程度進歩発達を見たるは、今回の審査に於いて比較的喜びとする処なり。只惜むらくは出品機の多くが燃料噴射装置を外国製品に依存していることで、速やかに該装置の優秀なる国産品の出現を望む」と記されている。製品の信頼性を得て短期間に輸出されるまでに成長した。

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【鷹尾宏之進(たかお・ひろのしん)】


 農学博士。1968年東京教育大学大学院農学研究科修士課程修了農業工学専攻。特殊法人農業機械化研究所入所、主任研究員、研究調整役、1995年農水省食品総合研究所食品工学部長、1997年生研機構基礎技術研究部長、2003年退職。2006年日本食品科学工学会専務理事、2018年農研機構農業技術革新工学研究センターシニアアドバイザーとして現在に至る。学会活動により農業機械学会功績賞、農業施設学会貢献賞を受賞、日本食品科学工学会終身会員。

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