線虫害や難防除雑草で 総合防除推進へ課題と展望 日植防
日本植物防疫協会は9月15日、東京都北区の北とぴあで「難防除病害虫・雑草の最前線」をテーマにシンポジウムを開催した。会場約140人、オンラインを合わせ900人超が参加し、気候変動や国際物流の活発化、人手不足などを背景に深刻化する病害虫・雑草問題と、総合防除(IPM)の推進に向けた最新の取り組みについて理解を深めた。
開会あいさつで早川泰弘理事長は、令和5年施行の改正植物防疫法により、総合防除を基本とした病害虫・雑草管理の重要性が高まっていると指摘。一方で、気候変動や国際物流の活発化などによって難防除病害虫・雑草を巡る問題は一段と複雑化しているとし、「各方面の対応状況や防除体系の構築について情報共有を行い、安定した農作物生産に向けた展望を考えたい」と述べた。
農林水産省消費・安全局植物防疫課の白石正美氏は「難防除病害虫・雑草防除の取り組み」と題して講演した。近年は気温上昇や降水量の増加により、害虫の発生時期の早期化・長期化や分布域の拡大が進み、従来の栽培・防除体系だけでは被害を抑え切れないケースが増えていると説明。
都道府県への調査では、土壌病害虫についても、発生状況を把握しにくく、密度が高まってからでは対応が難しいことに加え、有効な農薬が限られていることが課題として挙げられていると説明。土壌くん蒸剤については高い防除効果がある一方で、適正使用の徹底が求められることや作業負担の大きさなどから、使用環境が厳しくなっているとした。
難防除雑草については、47都道府県中39都道府県が課題として挙げていると紹介。稲、大豆、そば、飼料用トウモロコシなど土地利用型作物を中心に問題が深刻化しており、外来雑草への対応も重要になっていると述べた。
こうした状況を踏まえ、農水省では病害虫や雑草が発生しにくい環境づくりを行う「予防」と発生状況を把握する「予察」を重視し、化学的・物理的・耕種的・生物的防除を組み合わせる総合防除を推進している。農業者が実践しやすい「総合防除実践指標」の整備を進めるほか、難防除雑草の発生実態把握プロジェクトや、侵略的外来種の根絶技術の開発など新たな技術開発も進めていると説明した。
続いて、農研機構虫害・線虫基盤グループの酒井啓充上級研究員が「土壌線虫害の種類と対策」をテーマに講演した。
線虫は体長2.5㎜以下の土壌生物で、植物寄生性線虫は口針を根に突き刺して養分を吸収する。防除対象となる主な有害土壌線虫は、内部寄生性定着性のネコブセンチュウ、移動性のネグサレセンチュウ、半内部寄生性で定着性のシストセンチュウの3群に大別される。
線虫害は葉の黄化や萎凋など線虫特異的ではないため地上部の症状から原因を特定しにくく、発見が遅れやすいことが特徴だ。また、線虫の食害部から病原菌が侵入し、青枯病などとの複合病を引き起こす場合もある。
近年はジャガイモシロシストセンチュウやテンサイシストセンチュウ、アブラナシストセンチュウなど新たなシストセンチュウ類の侵入が相次ぐ。特にジャガイモシロシストセンチュウは従来の抵抗性バレイショ品種にも寄生する難防除害虫として問題視されている。
対策として酒井氏は、くん蒸剤や非くん蒸剤による化学的防除に加え、土壌還元消毒、対抗植物(緑肥)の活用、抵抗性品種の導入などを組み合わせたIPMの重要性を強調した。ただし、抵抗性品種の連用は抵抗性打破系統の発生につながるため、輪作を含めた計画的な作付けが必要だとした。
酒井氏は「原因不明の生育不良が見られる場合は線虫を疑うことが大切。各社の土壌診断サービスなども活用し、早期発見・早期対策に努めてほしい」と呼びかけた。
シンポジウムではこのほか、土壌病害や難防除雑草をテーマに農研機構や都道府県試験研究機関、関係団体の専門家が講演。総合討論では、化学防除だけに依存しない総合防除体系の確立や、農水省だけでなく他の省庁との連携が必要との指摘のほか、現場への技術普及の重要性について意見が交わされた。
各講演の詳細については次号以降。
開会あいさつで早川泰弘理事長は、令和5年施行の改正植物防疫法により、総合防除を基本とした病害虫・雑草管理の重要性が高まっていると指摘。一方で、気候変動や国際物流の活発化などによって難防除病害虫・雑草を巡る問題は一段と複雑化しているとし、「各方面の対応状況や防除体系の構築について情報共有を行い、安定した農作物生産に向けた展望を考えたい」と述べた。
農林水産省消費・安全局植物防疫課の白石正美氏は「難防除病害虫・雑草防除の取り組み」と題して講演した。近年は気温上昇や降水量の増加により、害虫の発生時期の早期化・長期化や分布域の拡大が進み、従来の栽培・防除体系だけでは被害を抑え切れないケースが増えていると説明。
都道府県への調査では、土壌病害虫についても、発生状況を把握しにくく、密度が高まってからでは対応が難しいことに加え、有効な農薬が限られていることが課題として挙げられていると説明。土壌くん蒸剤については高い防除効果がある一方で、適正使用の徹底が求められることや作業負担の大きさなどから、使用環境が厳しくなっているとした。
難防除雑草については、47都道府県中39都道府県が課題として挙げていると紹介。稲、大豆、そば、飼料用トウモロコシなど土地利用型作物を中心に問題が深刻化しており、外来雑草への対応も重要になっていると述べた。
こうした状況を踏まえ、農水省では病害虫や雑草が発生しにくい環境づくりを行う「予防」と発生状況を把握する「予察」を重視し、化学的・物理的・耕種的・生物的防除を組み合わせる総合防除を推進している。農業者が実践しやすい「総合防除実践指標」の整備を進めるほか、難防除雑草の発生実態把握プロジェクトや、侵略的外来種の根絶技術の開発など新たな技術開発も進めていると説明した。
続いて、農研機構虫害・線虫基盤グループの酒井啓充上級研究員が「土壌線虫害の種類と対策」をテーマに講演した。
線虫は体長2.5㎜以下の土壌生物で、植物寄生性線虫は口針を根に突き刺して養分を吸収する。防除対象となる主な有害土壌線虫は、内部寄生性定着性のネコブセンチュウ、移動性のネグサレセンチュウ、半内部寄生性で定着性のシストセンチュウの3群に大別される。
線虫害は葉の黄化や萎凋など線虫特異的ではないため地上部の症状から原因を特定しにくく、発見が遅れやすいことが特徴だ。また、線虫の食害部から病原菌が侵入し、青枯病などとの複合病を引き起こす場合もある。
近年はジャガイモシロシストセンチュウやテンサイシストセンチュウ、アブラナシストセンチュウなど新たなシストセンチュウ類の侵入が相次ぐ。特にジャガイモシロシストセンチュウは従来の抵抗性バレイショ品種にも寄生する難防除害虫として問題視されている。
対策として酒井氏は、くん蒸剤や非くん蒸剤による化学的防除に加え、土壌還元消毒、対抗植物(緑肥)の活用、抵抗性品種の導入などを組み合わせたIPMの重要性を強調した。ただし、抵抗性品種の連用は抵抗性打破系統の発生につながるため、輪作を含めた計画的な作付けが必要だとした。
酒井氏は「原因不明の生育不良が見られる場合は線虫を疑うことが大切。各社の土壌診断サービスなども活用し、早期発見・早期対策に努めてほしい」と呼びかけた。
シンポジウムではこのほか、土壌病害や難防除雑草をテーマに農研機構や都道府県試験研究機関、関係団体の専門家が講演。総合討論では、化学防除だけに依存しない総合防除体系の確立や、農水省だけでなく他の省庁との連携が必要との指摘のほか、現場への技術普及の重要性について意見が交わされた。
各講演の詳細については次号以降。





