クボタ GBスペシャルトークライブ 二極化のゆくえ探る 垂直統合することが重要
クボタ(花田晋吾社長)は6月10日、グラングリーン大阪の新本社に新設した協創スペースにおいて、「GROUNDBREAKERS(GB)スペシャルトークライブ」を開催した。当日は農業の従事者、関係者ら約60人が参加。日本農業の未来について自由闊達な議論と来場者との意見交換を行い、協創活動の中から課題を明確化し、そこから生まれる新たな価値を探った。
新本社のコンセプトは「Konnect field for Innovation」。多様な繋がりを通し、同社が新しい価値を生み出すための起点となる場所としており、それを象徴する協創スペースに、起業家精神に富み、リスクを恐れずにチャレンジし、持続可能な農業を実現しようとするGROUNDBREAKERS(先駆者の意)が集まった。
トークセッションのテーマは「日本農業の未来を考える~二極化する農業のゆくえ~」。先見性に富み、刺激的な議論が交わされた。
登壇者は、茨城県で年間100種類以上の露地野菜を生産し、個人や飲食店への直販でDtoCを展開する久松農園の久松達央氏と、滋賀県近江八幡市で300ha以上の大規模経営と徹底した改善で利益を追求するイカリファームの井狩篤士氏。両極のスタイルを持つ両氏が議論を深めた。
まずは今後の日本農業を展望。効率化と規模を追求する「企業型の超大規模農業」と、独自のこだわりで付加価値を磨く「職人型の小さな農業」へ完全に二極化していくと予測。久松氏は、農産物が工業製品のように定量・定価格・安定供給が求められ、より深くサプライチェーンに組み込まれていく中で、生産という一番利益率の低い部分だけを担う中途半端な農家は市場から淘汰されるという仮説を提唱した。製造業のスマイルカーブ理論を農業のサプライチェーンに当てはめ、川上の資材仕入れや川下の流通加工を自社に取り込み、垂直統合する経営体が出てきているとした。そのような状況下「条件不利地などの小さい生産者は、同業者が真似したいと思わないほど、独自の価値を磨くことが大事で、それが『美しい棲み分け』に繋がる」とした。
井狩氏も垂直統合に強く同意。自身は内製化と呼び、「本当のスケールメリットはバリューチェーンまで含めてコントロールしなければならない」としている。前工程になる資機材の調達では相見積りをとり、合理化を推進。後工程の出荷では卸売業者と直接取引し、小麦においても学校給食用やコンビニ用のパンなど独自ルートを開拓。それらの取り組みなどを行いながら18期連続の黒字を達成している。近江商人の「三方よし」の精神を大切にし、「取引先や地域の利益が、自分たちのリターンにも繋がる」と述べ、地域の基盤整備は同ファームの実費で請け負っている。今後は、人口増や温暖化の加速から食料確保の必要性が増すのは確実であり、他産業からの投資資金を呼び込み農業を強くしていく事が必要だと訴えた。
来場者との質疑応答では、「兼業農家の知恵を活かすには」という質問の中で、市況の変化に対応したり、従来の農産物にとらわれない、例えば農村の「場」を価値にするような経営感覚の有用性を示唆した。また人材の確保についての質問には会場の関心も高く、井狩氏は「他産業並の給与水準や20歳~65歳まで働いて7000万円規模の退職金を会社が資金運用によって捻出している」とし、安心して働ける環境の重要性を説いた。久松氏は「人材確保が難しいのは農業だけじゃない」とし、承継候補を得るのに約半年掛かったと実体験を述べた。
セッションの後は来場者を交えて交流・ネットワーキングを開催。多様な立場の人々が、知見を持ち寄り、日本農業の未来を共に考えた。






