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2026新春インタビュー「激動の時代の舵をどう取るか」 三菱マヒンドラ農機CEO取締役社長 齋藤徹氏に聞く

2026新春インタビュー「激動の時代の舵をどう取るか」 三菱マヒンドラ農機CEO取締役社長 齋藤徹氏に聞く

農家目線の機械提供 本業守りながら多角化を

 ――2025年の概況。

「国内は、主食用米の高値が農機業界を元気にしている。2024年の秋頃から需要が戻ってきた。それまで、農家は低米価のため、効率を上げられる機械が欲しいと思っても我慢、更新が必要になっていても我慢、というようにしてきたのだろうが、いまはその反動とも言っていいほどの購買意欲の力強さを感じている。特に年末までは旺盛な注文が続くのではないかと思っている。当社は年内納品の要望に応えられる機種を提案するなど営業現場も対応に追われており、極力、お客様にご迷惑をおかけすることのないよう生産・供給体制を整えるよう努めている。一方、米の乾燥・調製関係の需給は別で、今年納品できなくても、来シーズンのために発注していく農家も多い。今発注しておかないと、来シーズンも手に入らない場合があるようだ。来年度まではそのような受注残もあるので、比較的安定した状況で推移するだろうとみている。ただし、令和7年産米は作柄が良く、かつ大豆や酒米・飼料用米から主食用米に転換した農家さえもあって増産が進み流通在庫も積み増されているだろうから、米価が高止まりを維持することは考えにくく、市場動向は読めない。消費者が買える価格で、かつ生産者である農家が生産意欲を維持していける価格に早く落ち着いてくれることを願っている」
「新商品では、好評のディスクハロー『KUSANAGI』の第2弾として、ボリュームゾーンである60~105馬力トラクタに適応する『KUSANAGI Plus MDH2022』を昨年8月に発売したが、反響が非常に良い。発売直後にもかかわらず、ホームページの動画再生回数がすでに160万回を超えた。農機の動画で100万回を超えるものはそうそうないらしく、農家の方々に興味を持っていただけていると思っており期待している。実績はこれからだが、実演依頼を確実に実績に結び付けていきたい。良い土を、速く(一般的なロータリ―の1/4の高速作業)、簡単に作れるので実演を通じて広くお勧めしていきたい。また、水田適用性も十分に向上させた小型トラクタXS(クロスエス)も順調に実績を伸ばしている。もう1機種、田植機XPS6とXPS8。これらは、今後益々大型化していく稲作にぴったりの機械だ。疎植も密植も同じミッションでできる、また業界最高速の1・95m/s。SEナビ仕様も準備万端にして、春に向けて積極的に売っていきたい」

 ――会社の構造改革。

「引き続き事業の効率化も進めてきた。営業拠点の統廃合・再編もその一つだ。やはり農家も減り、お客様も減っていく中でこれまでのような多店舗展開は難しくなっている。現在全国の拠点数が80くらい。これくらいがベストの体制だと考えている」

 ――海外は。

「輸出は相変わらず厳しい状況が続いている。我々の海外事業のほとんどは米国向けのトラクタだ。トランプ関税は一般的には相互関税15%に落ち着いたが、農機は一般的な相互関税の対象外の鉄・アルミの派生製品部分が9割近くあり、すべて日本製造の弊社のトラクタは関税のインパクトが大きい。関税を負担するのはマヒンドラの現地法人だが、価格転嫁をせざるを得ず、そういうことからも販売にブレーキがかかっている。もうしばらくは我慢、様子見をするしかないと思っている。北米向けトラクタの輸出は2021年がこれまでのピークで9500台ほどだったが、今は大きく落としている。そこを何とか国内事業で補っている状況だ。市場動向を注視しつつ在庫調整は進めており、その調整が終われば出荷も増えていく。今が底だと思っている。米国以外については、私が就任以来開拓してきたベネルクスやトルコへの輸出地域拡大をしてきた」

 ――2026年の展望。

「国内は米価がカギになる。KUSANAGI Plusのような新商品もある。また市場も大きく冷え込むことはないと思うので、今の勢いを維持できると考えている。そして海外、北米は在庫調整も進んでいるので2026年にはさすがに上向いてくるだろうと期待を持って見ている」

 ――2026年の事業方針。

「まずは、我々らしい、農家のニーズに根差した農機の提供をしっかりとやっていく。身の丈を超える、スマート農機やITを追いかけなくとも、我々が培ってきた農機本来の基本技術の深化で、農家のお役に立てる農機の提供はできる。また、これからも海外から、日本の農業に役立つ作業機なども持ってくる。さらに三菱重工とのコラボレーションも我々の強みだ。その1つが三菱重工製の空調機と秀でた空調制御技術とに我々の施設園芸のノウハウでハウスや栽培棚などメカニカルな部分を組み合わせた夏秋イチゴの施設。これが軌道に乗りつつある。京都・八幡市の観光農園『おさぜん農園』が8月に実証試験として使用したハウスを私共で商業用に改修した施設を使って夏秋イチゴの観光農園をオープンしたが、そのイチゴの出来が素晴らしい。事業としても採算性に優れ、さらに拡大したいといわれている。美味しいイチゴが夏でも提供できるとなれば、その市場規模は大きい。この展開にはかなり期待している。もう1つ、紙マルチ田植機。ここのところの米価高騰で有機米の需要は落ちるのではないかと危惧する声も頂いたが、有機米生産をやる人は自分なりの信念やこだわりを持っている人。落ち込みはない。先日、協定締結している埼玉県幸手市は学校給食に広げていく話がまとまった」

 ――2026年は創業111周年にあたりますね。始まりを意味する1が3つ。111周年への想いを。

「日本の農機業界には100年を超える老舗企業が多い。長く続いていくためには、伝統に裏打ちされた自社の本業をしっかりと守りながらも、事業の多角化を進めていくことが必要だと感じている。農機の市場が縮小する中、日農工の会員さんでも農機だけで成り立っている会社は多くない。我々も農機で培った専門性と技術力、エンジン以外は全て自前で鈑金・塗装まで賄える製造業の一貫技術を持っているという強みを生かせる事業展開も模索している。あわせて、自動車や電機など様々な業界ともコンタクトを取り、連携について具体的な話も進んでいる。他企業のものを請け負う時の難しさの1つは企業ごとに異なる品質基準の考え方だと感じている。ただ、困難はあれどもやっていく価値があると思っている。〝Together We Challenge~挑戦する喜びの共創~〟。全社員とともに、これを念頭に2026年も前進していきたい」

 ※本インタビューは昨年12月に行ったものです。

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