2026新春インタビュー「激動の時代の舵をどう取るか」 井関農機 代表取締役社長 冨安司郎氏に聞く
ZEROから見直す 創業的変革をリードする
――創立101年、新たなステージに新年の抱負を。
「お客さまをはじめ、全てのステークホルダーの皆さまのご愛顧とご支援に改めて心より御礼申し上げます。当社は、創業者・井関邦三郎の『農家を過酷な労働から解放したい』という熱い想いから始まり、その想いを連綿と受け継ぎ、農業の生産性向上や住みよい村や街の実現への一翼を担ってきた。いま、農業や景観整備事業は、食や人々の暮らしを支えるエッセンシャルビジネスとして重要性が再認識されている。これらを支える井関グループは、皆さまの〝Your essential partner〟として、これまでの100年、この先の100年も「かけがえのない」存在であり続けるため、お客さまに寄り添う事業活動を通じて、豊かな「食と農と大地」の創造に貢献していきたい」
――2025年の概況。
「米国の通商政策の影響や物価上昇による景気下振れのリスク、異常気象の常態化や食料安全保障の問題が顕在化した年となった。その中、当社は、2024年から、次の100年につながるプロジェクトZ施策を進め、当初2年間を抜本的な構造改革に集中的に取組む期間と位置付けてきたが、主要施策の打ち手はほぼ計画通り進んだ。その成果が本格的に出てくるのは26年以降になるものの、国内は米価の回復による購買意欲の増、また欧州の堅調な販売実績に支えられて、第3四半期(1~9月)業績は増収増益、通期連結業績予想も売上高を前年同期比125億円増の1810億円と発表、連結化後過去最高となる見込みだ」
――26年の業界展望。
「日本農業の最大の課題は、農業就業人口の減少。限られた人数で耕作面積を維持するためには大規模化と先端技術を活用した効率的で生産性の高い農業が不可欠だ。農業によるCO2排出の抑制、有機など環境への取り組みも必須だ。今後24年~26年度の試行実施を経て、全ての補助事業等に対し、最低限行うべき環境負荷低減の実践を要件化(愛称:みどりチェック)され、農水省の補助金等の交付を受ける場合には、環境負荷低減の実践が必須となる」
――プロジェクトZ。
「当社の課題である、収益性と資産効率の低さを改善すべく2024年に『プロジェクトZ』施策を策定・始動した。聖域なき事業構造改革を実行し、並行して、次の100年の礎をつくるため成長戦略をしっかりと打っていき、成長セグメントに経営資源を集中させる。25年までの2年間を抜本的な構造改革に集中的に取組む期間と位置付けてきたが、主要施策の打ち手はほぼ計画通り進んだ」
――構造改革について具体的には。
「具体的には生産最適化・開発最適化・国内営業深化が3本の柱だ。生産最適化では、生産を集約することで生産の効率化や平準化を図る。併せて間接業務の効率化や在庫の圧縮と効率運用につなげる。松山・重信・新潟の建屋新設に着手した。12月熊本での生産を終了し、26年に松山へ移管。開発最適化は設計の仕方をゼロから見直す。グローバル設計を進め、機種・型式を削減(30%以上)、部品1つ1つの見直しまで着実に進めた。国内営業深化は、販売会社の経営統合を行い、1月1日にISEKI Japanを発足、井関農機との重複業務の見直し、在庫拠点・運用の最適化や物流体制見直しによる物流費の圧縮等を図るとともに、成長戦略への基盤を構築。また大規模企画室が稼働し計画通りに進捗。ただし、これらの施策の効果はすぐには出てこない。26年以降、本格的に結果を出していく」
――国内の成長戦略。
「国内では、大型・先端・畑作・環境を成長分野として注力する。また、草刈事業も展開していく。
大規模企画室で従来の販売会社が持つ商品や地域特有の環境や作物に対するノウハウと先端・環境技術の現場普及で実績のある夢ある農業総合研究所が持つノウハウを結集させていく。担い手へのマーケティングの強化や農業に参入する企業向けBtoBあるいは自治体向けBtoG取引拡大に向けた推進を強化する。大型商品の投入も順次進めていく。昨年の国内の販売実績に大きく貢献したのも、大型スマート農機『JAPANシリーズ』だったが、大型機種の売上高比率は2030年に5割以上に引き上げる。また、大規模イベント『ISKEIアグリJAPANフェスタ』を各地で開催。大規模経営の生産者様とのコミュケーションの拡大を目的に、全国各地での実演やソリューションの提案など、新たな価値を提案していく。自動化技術やセンシング技術、データを活用したスマート農機は省力化・省人化など効率的で精密な生産性の高い農業の実現に不可欠だ。自動化は、田植機8条クラスでは約7割が直進アシスト仕様となっており、今後、更に伸びると考える。センシング技術では、可変施肥による効果は、生育面だけではなく環境面やコスト面等でも大きい。環境では「環境保全型スマート農業」を推進、アイガモロボIGAM2は、軽量・低価格で有機栽培だけでなく、慣行栽培での導入も出てきている。また欧州を中心に実績のある景観整備商品を日本国内へも展開し、2030年に24年比2.5倍の100億円を目指す」
――海外の成長戦略。
「欧州市場は、進出から60年近い歴史があり、井関ブランドが一番定着している。今後は、25年1月に連結化したISEKI UK社、ISEKIフランス社、ISEKIドイツ社を含めた欧州3社体制で共同購買を通じた商材の拡充、今までできていない地域への展開などビジネスの拡大を進めていく。北米市場は、AGCO社にOEM供給しており、地域特性に応じた製品拡充を進めている。アジアは東アジアとアセアン。東アジアは韓国が中心となるが、日本同様に大型化が進展している。大型・高性能クラスの農機を使用するプロユーザー層をターゲットに、現地販売代理店と協力しながら、ニーズに合った商品を開発導入していく。アセアンはタイ・インドネシアが中心だが、更なる新規取引国拡大を図り、タイのIST社と生産拠点のインドネシアを核に周辺諸国へ販売・サービスの供給体制を構築していく。低価格・高耐久製品への需要が根強い。こうしたニーズには、2018年に技術・業務提携契約したインドの大手農業機械メーカーTAFE社からの部品供給やOEM製品の導入により、製品ラインアップを拡充していく」
――2026年へ向けて抱負を。
「変化の激しい時代だからこそ次の100年に向けて変えていかなくてはいけない。「ゼロ(ZERO)」から見直す「創業的変革」をリードしていく」
※本インタビューは昨年12月に行ったものです。





