2026新春インタビュー「激動の時代の舵をどう取るか」 ヤンマーアグリ代表取締役社長 所司ケマル氏に聞く
海外売上30年に2倍 国内はスマート・大型化
――2025年の概況。まず、国内について。
「国内は、米価高騰によって機械投資意欲が高まり、商品の購買だけでなく整備売上も増加した。一方で、加速度的に進む農業従事者減少への対応は急務で、スマート農業がキーとなっている。ヤンマーでは直進アシスト機能をトラクターでは全YTシリーズに装備、コンバイン、田植機、乗用移植機にも仕様設定しており、オート機能(ロボット)も、トラクター、田植機に加え、コンバインにも拡充している。今年、隅刈りまで自動化したオートコンバインも上市した。また、ラジコン草刈機も好調。これらが販売をけん引した。今後、この分野はさらに拡充していく必要がある。機械の大型化が進む中、それに対応できる整備士の教育も強化している。また、協力メーカーの作業機とヤンマー製品を組み合わせて販売する。一方で国内にない作業機は必要に応じて海外からスピーディーに調達して提供していくことは引き続き進めていく。ヤンマーの密苗は着実に普及が進み、当初の目標10%の普及率に対して現在9%となっている。販売現場ではそれをベースに直播とのコンビネーションの提案も始めている。今年、農機メーカーの責務として、我々が非常に苦心したのが、従業員のオーバーワークを回避しながら、お客様の需要に対してきちんと商品を提供できる生産体制づくりだ。生産のキャパを上げるべく柔軟な人員体制に努め、結果、納期を守れたと自負している」
――25年海外の状況。
「厳しい環境下にある北米、タイもここのところやや改善の兆しがみえる。トルコは依然厳しい。逆にブラジルは関税問題で米国の大豆が中国に輸出できない影響で好調。このように関税の影響や穀物価格、天候などによって世界各地の景気には波があるが、そのダメージを最小化するため、情報を迅速に捉えながら、効率的に事業拡大を進めている。今夏、横浜でTICAD9が開催され我々も参加したが、いいフィードバックを多く頂いた。アフリカは機械化が進んでおらず所得も低いが、経済成長率は世界一でありポテンシャルは高い。そのため、私たちは全面展開ではなく、まず西アフリカの16カ国に集中して取り組む戦略を取っている。コートジボワールを拠点に、現地パートナー企業と協力しながら、整備士や営業マンを育成し、ヤンマーのメンバーとして現地に根付かせることを重視している」
「インドはヤンマーにとって非常に重要な市場だ。インドには、ヤンマーのトラクターYMシリーズやSOLISを生産委託しているパートナー会社ITL社があるが、生産を徐々に伸ばし、YMシリーズは今後ラインナップを拡大。またCLAASIndiaを買収したことでホイールタイプのコンバインがラインナップに加わり、インド周辺国やアフリカへの販売に可能性が出てきた。さらにインドでは同国最大の作業機メーカー、shaktiman社にヤンマーのグローバルサウス向けサブブランドを生産委託。価格競争力が強く、頼もしいパートナーとなっている。また現在、ヤンマーでは国内の協力会社の作業機も海外で販売する体制づくりを進めている。海外に農機を販売するには部品、作業機などを含めた推進が大切と考えるからだ」
「ヤンマーは世界各地に現地法人を置いているが、現地法人がない国では、現地企業にディストリビューター(ディスト)を任せている。11月に東京で開催したグローバル重要パートナーズミーティングには、このディストを一堂に集めた。ヤンマーと資本関係がないディストがここまで尽力してくれる姿、そしてディストの力強さには涙が出るほど感動した。ネットワーク強化は、単にディストを増やすだけ、商品を売るだけではなく、信頼を獲得しブランド力を持つことが必要だ。商品の販売だけでなく、アフターサービスや部品供給を確実に行えるパートナーを慎重に選んでいる」
――2026年は。
「国内に関しては、不透明な要素が多い。米価の水準が来年も維持されるのか、新政権の政策が及ぼす影響も注視する必要がある。仮に米価が下落し市場が縮小したとしても、〝スマート農業〟と〝大型化〟は進んでいくだろう。これらは今後の農業技術の土台となるものであり、全体の台数が変動しても需要がなくなることはない。この分野に向けて新商品の開発や販売、顧客への提案活動を着実に実施していく。合わせて、整備事業にも力を入れ、十分な人員配置を行い、体制を強化する。海外に関して、不透明なのはトランプ関税の影響だが、世界展開する我々の目標は明確であり、2030年に海外売上高を2倍にするという大方針に変更はない。目標達成に向け、就任初日から取り組んできた〝種まき〟のスピードを上げ、水をやり肥料を与え大きく育つように集中していく。従来の延長線上の戦略や事業の進め方では、目標は達成できない。製造やアフターサービスまでを含めた『クルーシャルパートナー(極めて重要なパートナー)』によるエコシステムの構築を目指している。26年4月から新たな中期経営計画MTP2030がスタートする。決定したアクションプランを確実に実行し期待以上予算以上に、確実に収穫へとつなげていきたい」
――社会課題や環境への取り組みについて。
「25年6月から始まった〝未来の農地を守るプロジェクト『SAVE THE FARMS BY YANMAR』〟は循環再生型農業や営農型太陽光発電を使った食とエネルギーの自給率向上のモデル開発を行っている。ヤンマーグループ全体の取り組みで、非常に有意義なものと感じている。ヤンマーアグリとしても日本の農家や農地を守るという取り組みに貢献していく。淡路島ではパソナグループと連携し、新しい試みも進めている」
――今後を牽引する製品や脱炭素関連の動き。
「国内においては、先述の通りスマート農機と大型化が事業を牽引すると見ている。脱炭素に関しては、コンセプト電動農機EX01eなどの圃場実証を進めている。また水素やメタンを含めた多角的な研究開発を進めており、将来を見据えた準備を継続して進めている」
――2026年にかける思いを。
「海外での挑戦の一方で、国内に関しては、急激な売上数値目標を追うのではなく、岡山や高知の工場でしっかりとものづくりを行い、生産者の方々に商品を安定供給するというメーカーの責任を果たしていく。その上で市場環境が変化しても、社員が効率よく安全に働ける環境を守り、品質や納期を遵守することが一番重要だと考えている。2026年もこの姿勢を崩さず、国内外の事業に取り組んでいく」
※本インタビューは昨年12月に行ったものです。





