井関農機、2024年12月期決算を発表|売上高1684億円・プロジェクトZで構造改革推進
井関農機(冨安司郞社長)は2月14日、2024年12月期決算を発表した。売上高は前期比14億9000万円(0.9%)減の1684億2500万円、うち国内は同2900万円(0.0%)減の1130億3100万円、海外は同14億6000万円(2.6%)減の553億9400万円。海外売上比率は32・9%。営業利益は3億3300万円(14・8%)減の19億2000万円、当期純損失は30億2200万円。期末配当は1株30円を予定している。
オンラインで開催された決算説明会では、冨安社長が2024年12月期の決算概要及び「プロジェクトZ」の中間報告などについて、説明を行った。
冨安社長は、2024年12月期業績のポイントを「前期では減収減益。売上げ、利益ともほぼ昨年の7月の修正予想通りに近い線で着地した。海外は欧州で高水準を維持するも、北米、アジアの減収減少で減収。国内は農機需要の厳しさは続くものの、足元ではご案内の通り米価上昇もあり上向き、前期比横ばい」とまとめた。
一方、今期については、「増収増益の予想。利益面については、増収とプロジェクトZ効果が一部現れ、営業増益とした。一方、プロジェクトZにかかる一時的な費用もあり、増益幅は限定的となる見込み」とした。そのうえで、詳細について説明した。
【2024年12月期連結決算の概要】売上高は、前期比14億9000万円減少し、1684億2500万円(前期比0.9%減少)となった。
【国内売上高】同2900万円減少の1130億3100万円(前期比0.0%減少)となった。
農機製品は、第1四半期は需要低迷を受け減少となったが、年央以降の米価上昇による需要回復を捉え一部カバーし、通期では微減となった。
一方、収支構造改革の柱である補修用部品や修理整備等のメンテナンス収入は伸長し、国内売上高全体では前年並みとなった。
【海外売上高】同14億6000万円減少の553億9400万円(同2.6%減少)となった。
北米はコンパクトトラクタ市場が弱含みに推移、アジアは韓国での在庫調整実施とアセアンで需要軟調となった。一方、欧州は景観整備向け製品と仕入商品の売上が堅調に推移した。
【当期売上高の内訳】
《国内》▽整地用機械(トラクタ、乗用管理機等)=212億6400万円(同3.7%減)▽栽培用機械(田植機、野菜移植機)=65億7400万円(同9.1%減)▽収穫調製用機械(コンバインなど)=163億4600万円(同3.8%増)▽作業機・補修用部品・修理収入=442億7500万円(同4.2%増)▽その他農業関連(施設工事等)=245億7000万円(同3.6%減)。
《海外》▽整地用機械(トラクタ、芝刈機等)=360億3000万円(同8.6%減)▽栽培用機械(田植機等)=10億1900万円(同44・2%減)▽収穫調製用機械(コンバイン等)=5億8700万円(同56・7%減)▽作業機・補修用部品・修理収入=69億2700万円(同8.3%増)▽その他農業関連=108億2800万円(同37・6%増)。
【営業利益】営業利益の増減内訳は前期比で、減収減産による売上総利益の減少がマイナス19億。また、原材料価格高騰影響はマイナス1億円に対し、国内外の販売価格改定効果はプラス18億円となり、ネットで17億円のプラスとなった。
原材料価格の高騰が先行し、一方で、価格改定効果そのものは実際に販売会社で販売が行われてようやく現れてくるということで、どちらかというと遅れ目で進んでいる。2020年比の累計では69億円のプラスと原材料等仕入価格高騰影響の64億円を、当期をもって価格改定効果が上回ることができた。
このほか、為替影響がプラス9億円、その他がマイナス4億円で売上総利益は同2億円増の506億円。一方、販管費の増加等もあり、営業利益は同3億円減の19億円となった。
【経常利益・当期純利益】経常利益は、為替差益の減少等により、同5億円減益の15億円。親会社株主に帰属する当期純利益は、プロジェクトZの構造改革に伴う減損損失の計上等により、30億円減益のマイナス30億円となった。
【バランスシート(財政状態の概況)】総資産は、前期末比109億円減少の2061億円。
昨年から進めているプロジェクトZでは、収益性の改善とともに、総資産回転率、資産回転率の向上、改善を進めている。ここ数年、総資産は増加傾向だったが、減少に転じた。棚卸資産の圧縮に加え、固定資産減損損失の計上影響もあった。また最終損失もあり、利益剰余金、純資産、自己資本は減少した。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ109億6900万円減少し2061億3200万円。負債の部は、前連結会計年度末に比べ85億9200万円減少し1342億9400万円。純資産の部は、前連結会計年度末に比べ23億7700万円減少し718億3700万円となった。
【有利子負債・自己資本比率・配当】有利子負債は減少したが、純資産の減少の方が大きくD/Eレシオは前期並み1・05倍。自己資本比率は32・8%と、前期比若干改善している。期末配当は、昨年の決算発表及び7月の業績修正時の通り30円を予定。
【キャッシュフロー】営業活動キャッシュによるキャッシュフローは2期連続赤字で進んでいたが、当期は棚卸資産の圧縮により88億円の黒字、これに伴いフリーキャッシュフローは29億円の黒字となった。
【2025年の業績見通し】次期の売上高は当期比20億7400万円増の1705億円を見込んでいる。
《国内市場》農機製品は足許で購買意欲が回復基調にあることから、同3億円の増収で445億円。作業機・部品は同12億円の減収で368億円、修理収入は前年並みの62億円と見込んだ。また、施設工事については市場環境の好転が予測されることから同18億円増収の60億円。その他農業関連は同4億円減収の200億円。この結果、国内全体では4億円の増収を見込み1135億円と予想した。
《海外市場》地域別には、北米はコンパクトトラクタ市場の底打ちを見込み12億円の増収。欧州は傾向としての堅調は維持するものの、前期の仕入れ商品のうち電動商品で特需があったため、今期は15億円の減収と慎重にみている。アジアは、韓国における在庫調整の解消等によりプラスに転じると見込み21億円の増収。結果、海外全体では16億円の増収を見込み、570億円と予想。
《収益面》営業利益増減要因として、価格改定効果と原価高騰の影響はほぼ同額と見込んだ。
また、今期はプロジェクトZによる施策効果がトータルで15億円ほど現れる。内訳として、製品利益率の改善・固定費の圧縮、イギリスの販売会社・プレミアムターフケア社の連結化など。
一方、プロジェクトZ遂行にかかる一時費用として、ISEKI Japanの合併統合費用、熊本から松山への生産移管にかかる諸費用などでトータル8億円を見込む。
結果、営業利益は前期対比で6億円増益の26億円を見込む。当期純利益は、前期の特別損失がなくなり、前期比43億円増収の13億円を予想している。
業績見通しにおける想定為替レートは、1米ドル=150円、1ユーロ=157円。
【質疑応答】▽井関農機における電動化への対応=欧州のポイントと日本のポイント、あるいは世界に向けてとそれぞれ異なる。欧州では、いわゆる景観整備用の機械、具体的には乗用草刈機、そして公園や道路の清掃用の作業機を牽引する小型のトラクタ、こういったものを中心としてビジネスを展開している。我々の成長戦略の核である、欧州戦略の核となるものは「電動」につながっている。欧州では電動でしっかりやっていきたい。
欧州以外のアメリカでも基本的には同様だと思っているが、トランプ政権になってそのあたりにブレーキがかかることも予想される。
一方、日本においては、みどり戦略もあり、今後電動化が鍵になるのではないかと考えている。井関としては、すでに欧州向けで発売している乗用草刈機の本格販売化、あるいは品揃えの強化を進めていきたい。
農業機械は自動車と異なりすべてを電動化するのは難しいが、やれるところからしっかりやっていきたい。
【冨安社長の閉会挨拶】もともと業績修正で想定していた通りではあるが、減収減益で最終損失という厳しい決算。しっかりとプロジェクトZを完遂することできちっとした決算ができるよう、改めて経営陣一同しっかりと歩んでいきたい。