「ヤマハ発動機の最新小型低速EV『ディアパソンC580』—農業・林業・畜産業での活用と未来展望」
ヤマハ発動機(静岡県磐田市)は1月10日~12日、千葉市の幕張メッセで開催された「東京オートサロン2025」に、研究開発中の小型低速EV汎用プラットフォーム「DIAPASON(ディアパソン)C580」の拡張モデル「C580Fork1」と「C580Fork2」などを出展した。ヤマハらしく〝格好よさ〟と〝かわいらしさ〟を両立しつつ、人間の〝Well―being〟を斬新な発想と技術で支えようとする確かな〝実用性〟が多くの来場者を惹きつけた。
ディアパソン「C580」は、畑地や不整地など多様な路面環境での優れた走破性とスマートな使い勝手を兼ね備えたモデル。バイク技術で培った超軽量(車両本体重量:約250㎏)、軽トラにも積める超コンパクト設計も特長だ。1充電で約2時間走行できる。アイデア次第で多くの分野での活用が期待できるが、まずは各地の春以降の農機展で実演・試乗会を行い、丁寧に顧客の声を聞き取りながら農業周辺領域での2026年上市を目指す。今回はAI技術の活用と、共創パートナーと実現した農業バージョンの拡張モデル(イメージしやすいよう車体前方に三陽機器のドーザー、後方の専用トレーラーには丸山製作所の動噴を装備、ルーフキャリアにはスコップなど)を展示した。
ディアパソンC580について、ヤマハ発動機の共創・新ビジネス開発部の丸山陽平主務は「ディアパソンは昨年も同展に出展、その後、開発の方向性を、日本初の〝電動の小型特殊自動車〟(同社調べ)・農業周辺領域向けとした。多くの農家へインタビューを行っていった中で、アクティブなシニア農業者には「まだまだ働きたい、でもリタイヤのイメージがあるシニアカーには乗りたくない」というインサイトがあるのを強く感じた。普通自動車免許を返納予定でも小型特殊免許を残してもらえば運転でき働く事ができる。そうした方達の気持ちを押し上げるようなカッコよくてバリバリ働けるモビリティを作ろうと考えた。更に人手不足が進む中、小型特殊免許は16歳以上の高校生でも取得できるのもメリットだと思う」と説明した。また、「使い方は無限大だが、それを決めるのはお客様。〝お客様と共に創る〟を基本に、多くのメーカーとも共創していきたい」と話した。
初日、開幕と同時に来場していた風丸農場(青森県、主に加工りんごの生産販売)の木村氏もディアパソンC580を高く評価。「これを軽トラで運んでいけば、傾斜がある細い道にも入っていける。防除もだが、低床の運搬車を引かせたら収穫したりんごのコンテナを軽トラまで何度も運ぶ重労働からも解放される。この他にもいろいろな作業機のベースマシンとしても期待できる。また近年はガソリンスタンドも次々閉店。自宅での充電で済む電動はいい」と話していた。
また、同社の共創・新ビジネス開発部の大東淳・新規事業開発シニアストラテジーリードは「顧客の〝Well―being〟を重視し、その観点から事業を設計している。目指すのは〝人が乗って楽しく作業する、未来を耕すカルツヨ(軽・強)モビリティ〟だ。車体が軽いため芝を傷めずゴルフ場の管理作業に良い、静音・クリーンで小回りが利くため畜舎の清掃・給餌作業にも最適、獣道にも入れるので林業でも活躍できそうだと、様々な分野から、また海外からも引き合いが数多く寄せられている。こうした〝農業周辺領域〟に幅広く訴求していきたい」と話した。
「C580」の名の由来ともなった小屋孝男・CV開発部EV設計1グループマネージャーは「2023年末に二人乗りの開発を委嘱され、軽い機体、作業ができる、更に軽トラ並みの価格に挑んだ。乗り心地の確保にも苦心した」と話していた。