Your essential partner 一丸となって変革を 25年ヰセキ全国表彰大会
一丸となって変革を 25年ヰセキ全国表彰大会
創立100周年のヰセキ全国表彰大会は、大スクリーンに映し出された創業者・井関邦三郎翁、「農家を過酷な労働から解放したい」という創業の理念、そして1926年のヰセキ農具商会創立から常に時代の先端を拓いてきた開発商品、「農家に一番に寄り添う精神」その伝統と変革、受け継がれてきたDNA、そしてプロジェクトZ、ISEKI Japan設立という現在までを映像でつなぎ、幕を開けた。
始めに冨安社長が登壇。「今、改めて100年の重みをひしひしと感じています。そしてこの100年の瞬間に立ち会えることに強い喜びを感じています。年初よりISEKI Japanがスタートしました」と感無量の面持ちで話し始め、井関農機を取り巻く環境と取組みを説明。「プロジェクトZの担い手として一丸となって変革を実行する年にしていきましょう」と呼びかけた(別掲)。
その後、石本徳秋・営業本部長が国内の営業方針を説明(別掲)。井関と同じ青いユニフォームのヤンキース・大谷選手を引き合いに出し、「彼が達成した50―50、合せて100にあやかり奮起しよう」と促した。
続いて、ISEKI Japanの社長として石本本部長が役員陣を登壇させ紹介した。(瀧澤雅彦・専務取締役関東甲信越カンパニー社長、土屋勝・専務取締役北海道カンパニー社長、加藤敏幸・常務取締役東北カンパニー社長、工藤和貴・常務取締役営業統括部長、曾我部智・取締役中四国カンパニー社長、南孝明・常務取締役関西中部カンパニー社長)、渥海裕彦・取締役管理部長はビデオレター。大志貴之取締役は欠席。
次に、渡部勉・開発製造本部長が挨拶。「プロジェクトZで掲げた〝最適化〟を達成するために変革と挑戦を続け成果を出すことが必須だ」と述べた(別掲)。
次に谷一哉・取締役常務執行役員海外営業本部長が挨拶。海外事業の足元と今後の事業展開について説明した(別掲)。
その後、石本本部長から認定及び表彰状授与。エクセレントサービスマンクラブ(ESC)222名、スーパールートセールスマンクラブ(SRC)8名が会員認定。トラクタ拡販賞22名、チャレンジ賞141名が表彰された。その後、SSC(スーパーセールスマンクラブ)171名が会員認定。また、今回、SSC会員認定が40回となったISEKI Japan中四国カンパニーの永井義正氏を特別表彰。石本本部長から表彰状とトロフィーが授与されると、会場から盛大な拍手が沸き上がった。
次に、イギリスから来日したプレミアム・ターフケア社の3名が登壇した。同社のウィザーズ社長は、プレミアム・ターフケア社の設立時から社長として活躍。過去には、ゴルフ場向け芝刈機メーカとして著名なランサムス・ジェイコブセン社のイギリス法人及びアメリカ本社の社長を歴任するなど、業界をリードしてきた。またアラン・プリケット本部長、グラハム・フーパー営業業務部長もランサムス・ジェイコブセン社で活躍していた経歴を持つ。フーパ―部長は現在、そうした経験を活かし、プレミアム・ターフケア社で事業拡大と市場戦略の最前線で活躍している。
ISEKIは欧州において、50年以上にわたり、エッセンシャルパートナーとして、住みよいまちづくりに貢献してきた。そうした中、プレミアム・ターフケア社は、ISEKIのパートナーとして、20名弱という少数精鋭のチームで、ウィザーズ社長のリーダーシップのもと、わずか7年で売上高を約2倍に、営業利益を約6倍にし、営業利益率は約20%と非常に高い水準を実現する見込みだ。また、プレミアム・ターフケア社の卸先であるディーラー数は、事業初年度の53軒からおよそ2倍の93軒に拡大し、イギリス、アイルランドにおいて確固たる販売・サービス網を築き上げてきた。そして同社は2025年から井関農機の完全連結子会社となり、井関グループの一員として新たなステージに進んでいく。既に連結子会社であるヰセキフランス社やヰセキドイツ社とともにグループ全体での連携を一層強化し欧州ビジネスの更なる成長を目指す。
業績をここまで急伸できた秘訣をウィザーズ社長は「お客様が求めているのは信頼関係が築けるディーラー、ニーズを満たす機械とサービス体制だ。この3つを心がけ、我々は成果を上げ続けている」と。またブリケット本部長は「ディーラーは得意分野で設定、同地域で専門分野が異なる複数のディーラーが存在することもあるが、それが当社の成長の秘訣」と話した。更にISEKIブランドについてフーパー部長は「欧州においてトップブランドの1つとして確固たる地位を築いている。ISEKIほど優れた性能のブランドはない。またISEKIには欧州で長年築き上げてきたディーラーネットワークがある」と絶賛。冨安社長から同社にエクセレント・ビジネス・グロース賞が贈られた。
休憩を挟み、特約店表彰、金賞11社、銀賞8社、銅賞12社、努力賞21社の計52社。販売会社表彰3社。最優秀賞にはヰセキ関東甲信越が、その栄誉に輝いた(別掲)。
最後に小田切元代取専務・プロジェクトZリーダーが挨拶。受賞者の努力と家族の協力に敬意と、感謝の意を表した。その後、プロジェクトZについて「苦渋の決断と多くの痛み」という言葉を用いて振り返り、必ず成果に結びつけると強い決意を示した。ISEKI Japan初年度にふさわしい活躍を期待すると、奮起を促した(別掲)。
冨安社長 先端技術ベースに 大規模・畑作・環境に集中
新年にあたり、我々を取り巻く環境と当社の取組みの一端をお話しするとともに、皆様方へお願いを申し上げたいと思います。
【市場環境と対応の方向性】まず、市場環境につきましては、国内では足許の米価上昇に伴う担い手層を中心とした購買意欲の向上もあり、大型機械の需要が堅調となる一方、高齢化に伴う離農の加速等により、小型機械の需要減少は進んでいます。また、改正「食料・農業・農村基本法」では、食料安全保障が基本理念として打ち出され、農業の生産性向上に向けた「スマート農業技術活用促進法」も制定されました。日本農業は、引き続き農業人口の減少、農業の大規模化、先端技術活用、畑作への作付転換などの構造的な課題を抱えています。農機メーカーである当社の果たす役割は大変大きなものと考えており、先端技術をベースに「大型」「畑作」「環境」への取り組みを強化してまいります。
海外に目を向けますと、世界の食料増産ニーズ・気候変動への対応を始めとするSDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた取組が喫緊の課題です。農業機械の普及が進みつつあるアジアでは、国内で培った当社の技術・ノウハウを活かした製品・サービスの提供を通じ、農業の生産性向上や食料増産に貢献してまいります。また、欧州を中心とした環境重視ニーズの高まりから、それらに対応する商品の拡充などを図ってまいります。
【2025年度の取り組み】当社は一昨年、次の100年の礎づくりのため、「プロジェクトZ」を立ち上げ、昨年その具体的施策を公表いたしました。その柱は、短期集中的に取り組む「抜本的構造改革」と、長期ビジョン「食と農と大地のソリューションカンパニー」の実現に向けた「成長戦略」です。本日は、そのうち「成長戦略」に絞ってお話します。
「成長戦略」については、海外と国内に分けて進めています。当社グループの海外事業については、AgriとNon―Agriの分野に大別されますが、ここ数年の成長は欧州・北米市場を中心としたNon―Agri市場が牽引しています。中でも欧州では、ISEKIブランドの景観整備用トラクタや乗用芝刈機などを提供しており、成長戦略の重要なセグメントと位置付けています。高い環境意識に対応した電動芝刈機の限定販売を開始しており、こうした環境対応型商品の拡充を含め、更なる商品競争力の強化を図ってまいります。さらに地域戦略として、好調なISEKIフランス・ドイツに加え、この度、英国プレミアムターフケア社をISEKIグループの仲間にお迎えすることとなりました。強みである欧州事業の次なる成長ステージを目指してまいります。北米ではAGCO社との連携を一層強化し、新商品の投入による拡販と併せシェア拡大を目指します。それぞれの地域に応じた商品戦略や販売・サービスの強化を通じ、市場での更なる存在感アップとブランド拡大につなげてまいります。
国内では、今後の成長分野である「大規模」「先端」「畑作」「環境」に人的資源・経営資源を投入してまいります。新商品として、有人監視型のロボットトラクタとしては国内最大級のTJW1233―Rを発売しました。人手不足に陥っている大規模農家を支え、畑作の管理作業においては曲線がある圃場にも対応できる商品です。また、本年初に、国内販売会社7社を統合し、ISEKIJapanを設立するとともに、営業本部の組織も再編しました。販売会社と営業本部が一体となり生み出されるエネルギーを成長分野に振り向け、成長を目指してまいります。一例を挙げますと、ISEKIJapanに「大規模企画室」を新設し、地域毎の特性を勘案した大規模農家へのソリューションの提供を通じ、新規大規模顧客の獲得に注力してまいります。そして、地域を越えた人材交流を積極的に行い、それぞれが持っている強み・ノウハウの水平展開により、更なるレベルアップを図ってまいります。今後も、さまざまなお客さまのニーズにお応えし、国内市場で戦うための商材と体制を整えてまいります。皆さまにも引続き、提案力・サポート力のさらなるレベルアップをお願いいたします。生産者の「夢ある農業」「儲かる農業」を実現する「食と農と大地のソリューションカンパニー」として、皆さまには更なるご奮闘をお願いします。ともに今期商戦を戦っていきましょう。
結びとなりますが、本年の創立100周年のスローガンは「Your essential partner」です。これまでの100年、この先の100年もかけがえのない存在でありたい、との想いを込めています。市場が厳しい今だからこそ、「食と農と大地」に関わる私たちの事業は、エッセンシャルビジネスとして継続させていく必要があります。ISEKIグループが、お客さまやすべてのステークホルダーにとってかけがえのない存在であり続けるためにも、本日ご出席の皆さま一人ひとりがプロジェクトZの担い手として、一丸となって「変革」を実行する年にしていきましょう。
そのためには、本日ご参加の特約店の皆さま、セールス・サービスの皆さまをはじめ、販売会社・関連会社の皆さま方のより一層のご活躍が原動力となります。さらに、ご来賓の皆さまには、引き続きのご支援、ご協力をどうか宜しくお願い申し上げます。
小田切専務 Z施策を実行・完遂 一人一人に浸透・共有する
輝かしい成績をあげられました皆様、受賞大変おめでとうございます。
昨年を振り返りますと世界各地では国際情勢不安が拡大・長期化し為替相場も不安定な1年でありました。日本では、全国各地で猛暑や豪雨などの気象災害に見舞われ、農業経営においても多大な影響を及ぼしました。
特に、原材料価格の高止まりや資材費の高騰含め農家の投資意欲低迷による営業活動に逆風が吹き荒れた状況下、昨年の熾烈な競争を勝ち抜いた、ここにお集まりの精鋭の方々には改めて敬意を表します。
一方、直近では、令和の米騒動とよばれる米の需給逼迫(スーパーからコメがなくなる)も記憶に新しく、食料安全保障の重要性が益々高まっており、今もなお社会に大きな影響を残しています。
私たちISEKIグループは農家の皆様のために、そして社会の中で益々重要な役割を果たしていくことが期待されています。
この状況の中で農家にとっては米の取引価格もやっと高値になってきており、昨年の秋ごろより農機需要を底上げしてきています。
本年も農機業界に吹くこの追い風を上手くとらえ、引き続きグループを牽引いただけるものと期待しています。
さて、我々は昨年、持続的な成長を目指して強靭な経営基盤を構築すること。そして、社会的使命を全うし続けるべく、未来に向かって全てをゼロから見直すとの決意を「Z」に込めて、「プロジェクトZ」を始動しました。
製造部門においては昨年7月にISEKI M&Dが発足し、国内営業部門においては今まさに「ISEKIJapan」が産声を上げました。
海外営業部門においても大きな成長戦略を描き、また、開発部門においても過去にない体制と発想でコスト削減に取り組んでいます。
今回のZの施策には苦渋の決断と多くの痛みすらをも生みましたが、だからこそ、その痛みを無にすることなく、これら施策を実行・完遂し、成果を生むことこそが我々の果たさねばならない使命であると、一層の覚悟を新たにしています。
その実現のためには、プロジェクトZの担い手たる皆さん一人一人が主役です。そしてZは特定の部門や担当者に限った活動ではなく全社的な取組です。
ただし、皆さんに対して、Zの目指していただきたいことを一人一人にご理解いただけるにはまだまだ十分に浸透・共有できていないと思っています。
今年度は、今まで以上に皆さんと積極的にディスカッションなどの様々な手法を用いて、目指すべき方向性を共有させていただきたいと考えています。
また本日、本会場には、各地の精鋭が集結しています。絶好の機会です。
普段は接しないグループの仲間とも井関グループは将来こうありたい、こうしたいなど是非交流を深めていただき、存分に想いを語り合う場としていただければ、嬉しく思います。
本年の干支は巳(ヘビ)。巳(ヘビ)が脱皮する特性と併せ「再生と誕生」を意味し、また、干支では巳(み)と果実の実(み)を掛けて「実を結ぶ」年とも言われています。
繰り返しになりますが重要なことは実行と成果、すなわち「実を結ぶ」ことにあります。キーワードは「実行」。ISEKIの未来は、その先にあります。我々一人一人の未来も、そこにあります。
グループに所属する全員がプロジェクトのメンバーとして使命を果たし、我々の活動が実を結ぶ年にして参りましょう。
最後に、本日ご参加の皆様が、それぞれのステークホルダーの「Your essential partner」として、歴史に残るISEKI Japan初年度にふさわしい輝かしいご活躍により目標を達成されますこと。そして、ご列席の皆様のご多幸と益々のご健勝と井関グループの発展を心より祈念申し上げ閉会の挨拶とさせていただきます。
石本営業本部長の挨拶 国内営業を深化 ISEKI Japan発進
本年、井関農機は創立100周年を迎えます。この記念の年に、国内広域販売会社6社と三重ヰセキ販売、井関農機営業本部の一部の機能を残して統合し、売上高1000億円以上、社員約3600名の「ISEKIJapan」として新たにスタートします。
私は井関農機の営業本部長として、またISEKIJapanの新社長として、「国内営業深化」に短期集中で取組み、全員が一丸となって目標達成に向けて邁進できる体制を整える所存です。
【営業本部方針】昨年は秋時期前より米価が高騰、市場環境が好転し、8月以降井関製品を中心に契約実売が大きく伸長し、農機事業全体でも売上を伸ばすことができました。昨年本格稼働を迎えた新製品のBFトラクタ、FMコンバイン、また、低価格コンバインのHFR4050/4042が実績をけん引しました。12月末の末までの皆様の懸命の努力により、1―3月の大きな出遅れを何とか挽回することができました。本当にありがとうございました。本年も米価高止まりの追い風があると見込まれ、これ以上ない年初のスタートを切れる環境にあると感じています。営業本部では、以下の「成長戦略」で、さらなる成長と発展を目指してまいります。
まず、大型・先端・畑作・環境等の各成長分野に注力し、持続可能な農業の実現に向けた取り組みを強化してまいります。新たにISEKIJapanに大規模企画室を設置し、大規模生産者の期待に応える高品質なソリューションの提供を図ります。また、アイガモロボ2の販売や、環境に配慮した電動商品、草刈関連商品の拡販を通じて、有機農機ビジネスや農外市場へ挑戦し、新たな成長機会を追求して参ります。
【ISEKIJapan発足にあたっての抱負】ISEKIJapanはこれまで各地域で営業していた販売会社が一つに統合されてできあがった会社です。これまでも、これからも、私たちの「地域で農業を営む皆さまを一番近くで支えていきたい」という熱い思いは変わりません。
日本国内では、農業従事者が今後20年間で更に減少するとの推計もあり、農業の生産性を上げなければ食糧の安定供給ができなくなるのではという大きな危機感があります。
この課題に対応するため、近年ではスマート農業と称し先端技術を活用し、農業の大規模化や自動化が進んでおります。農業機械が大型化、複雑化する中で、私たち農機販売会社の果たす役割はますます重要となってきていると感じています。
また、我々の目指すところとして、ノウハウを共有し、各カンパニーの強みを水平展開し、他のカンパニーに浸透させて強い会社、強い井関グループにしていく事も実行してまいります。
更にISEKIJapanになったことも含め組織体制の再編と経営資源の集中を図り、効率的な運営を実現します。調達、物流体制の見直しを行うことで、コストを削減し、成長分野へ経営資源を振り向けることで更なる成長を目指します。
これまでの100年、この先の100年も、かけがえのない存在でありたいという思いを胸に、農業に関わるあらゆる場面で、お客様と関わる皆様のお役に立てるよう努めて参ります。
さて、昨年、私はこの場で、大谷選手がドジャースに移籍し、青いユニフォームに袖を通した会見で「勝つことが僕にとっていま一番大事なこと」と発言されたことについてお話しし、「営業は勝てば官軍です」というエールを皆様にお贈りしました。その大谷選手は9月19日6打数6安打10打点の活躍で、3打席連続ホームランの2本目のホームランで50―50を達成し、10月30日にはヤンキースを打ち破ってワールドシリーズを制覇しました。打撃専念のシーズンでしたが、その活躍、勝利への執念は凄まじいものがあったと感じます。やはり我々と同じ青いユニフォームは素晴らしいと感じました。
我々はどうだったのか。MLB開幕前の3月までは、価格改定前の需要の前寄せの波も作れず惨敗でした。しかしながら4月以降、毎月前年を超える契約売上で遅れを取り戻し、我々のシーズン終了の12月末まで諦めず、粘りに粘って総売上としては、昨年を超えることができました。
くしくも大谷選手の達成した50―50は合わせて100となります。いよいよ、本年は100周年の記念の年、またISEKIJapanの門出の年となります。青いユニフォームの大谷選手にあやかり、我々ヰセキグループの営業は、100周年とISEKIJapan設立記念の二刀流で本年は走って参りたいと思います。
谷海外営業本部長の挨拶 課題を明らかにし 海外売上高800億円を確実に
2021年にスタートした中期経営計画は、海外事業においては売上・収益面について、その最終目標を達成したといって良いかと思います。一方で計画した残課題も少なからずあります。今後はこれらの反省点を明らかにし、今後大きく変化する環境にも素早く対応しながら、プロジェクトZ目標値の一つである海外売上高800億円を確実なものにして参ります。
まずは北米です。コロナ禍の特需において北米コンパクトトラクタ市場は急伸長しました。当社も他社同様に販売台数を伸ばし、更にその勢いを背景に様々なシェアアップ策を企画してきました。しかし急激な需要増もあり、目先のトラクタ供給不足解消に翻弄され、市場と歩調を合せた各シェアアップ策の実行が不十分、スピードが遅かったと言わざるを得ません。
その中でも資材高騰に伴う原価アップに見合う値上げを確実に実行できたのはポジティブな実績だったと考えています。現在市場は軟調ではありますが、プロジェクトZの施策として立案されたシェアアップ策を確実に実行し、巨大なコンパクトトラクタ市場でさらなる存在感を示せるよう努力して参ります。
次に欧州ですが、本業の充実によるオーガニックな成長と、M&Aなどの非オーガニックな成長によって、事業環境が必ずしも良い状況ではない中でCAGR、年平均成長率10%以上の成長を遂げてきました。特に本日お招きしているイギリス、プレミアム・ターフケア社の躍進は目覚ましいものがありました。売り上げでは一人当たり2億円近い生産性、営業利益率では常にダブルデジット、マーケットシェアは倍増と、他優良企業に勝るとも劣らないスピードで成長を遂げました。サービスを含め市場から一層の信頼感を得て、販売店の拡充に努めて頂いたデビッド社長の経営手腕に、改めて深く感謝申し上げます。今年度よりプレミアム・ターフケア社を加えて、ヰセキフランス、ドイツIMG社の3社体制は始まります。この3社を通じて、表面、また潜在的な需要をこれまで以上に精緻にとらえ、欧州市場に最適なソリューションを提供し続けることで、一層の企業成長に貢献して参ります。
アジアは、HJコンバインが引き続き順調な東アジア、そして競争が激化しながらも、高いシェアを維持できたインドネシア政府入札事業において成果があった一方で、タイの販売子会社IST社は大苦戦を強いられました。経済紙等の報道通り、タイ経済は失速気味であり、稲作農家を取り巻く環境も大変厳しく、そんな中でもIST社は製糖工場を中心とした法人向け営業に活路を見出し、着々と挽回の体制を整えています。昨年は新たに当社国内営業の精鋭もISTに加わりました。引き続き国内営業の知見を賜りながらアジアにおいての事業成長を図りたく頑張って参ります。
さて、百周年のスローガンである〝Your essential partner〟は、ワーキンググループによる検討の際、コロナ禍でも生活にどうしても継続が必要であった農業および景観整備事業に係るビジネスが、エッセンシャルビジネス、重要な事業として欧米で認定されていた事例がその端緒だったと聞いています。
〝Essential〟の語源は「存在や本質」を表すessentialis、動詞ではesseがベースになっているようです。私がこの語源から喚起されるのは、ミクロではお客様にとって堅固なパートナーである存在のイメージであり、マクロでもステークホルダーとして社是の一層の具現化を目指す井関グループの本質的な役割です。持続的な機能を表す言葉であり、定められたゴールがあるものではないと思いますが、これまでも、そしてこれからもかけがえのない存在でありたいと意識し行動することが、次の百年に必ず繋がると信じております。このスローガンに是非馴染んでいただければと存じます。
渡部開発製造本部長の挨拶 襷を次の100年へ 成長分野へ生産・開発最適化
本年は、ISEKIグループ創立100年目の節目にあたります。『農家を過酷な労働から解放したい』という創業の理念を実現するために開発・生産・営業の各現場で尽力した先輩方の襷を受け継ぎ、私たちはこの節目を迎えます。そして、私たちにはこの襷を絶やすことなく、次の100年へ繋ぐ使命があります。
現在の事業環境は厳しい状況ではありますが、各現場において社会や時代の変化を的確に捉え、今までの常識や価値観に捉われず、PJ―Zで掲げた『最適化』を達成するために、変革と挑戦を続け、成果を出すことが必須です。
生産現場では、生産拠点と機種の再編や、将来を見据えた設備投資を計画・実施し、『生産最適化』に取り組んでいます。昨年は、人的資源や投資、資産効率化による収益改善の足がかりとして、井関松山製造所と井関熊本製造所の経営統合を行い、ISEKI M&Dを設立致しました。これにより本年度は、ISEKI M&D(松山)へのコンバインや田植機の最終組立工程移管に向け、また、それに伴う油圧機器部品類の井関新潟への移管等も含めて着手していきます。先ずISEKI M&D(松山)に部品倉庫と溶接棟、井関新潟に油圧機器棟、井関重信に塗装棟の新建屋を建設致します。農業機械特有の季節性の高い製品の生産を集約することで生産の効率化や平準化、また、効率的な設備投資による生産性の向上を図り、併せて在庫の圧縮と効率運用に繋げていきます。
一方開発現場では、製品を作るための原価の低減、機種・型式の削減に注力し、『開発最適化』に取り組んでいます。機種間で使用している部品の共用化や見直し、製品の母体を共通設計とするグローバル設計などと併せ、製品利益率の改善を図っていきます。また、開発機種の集約や共通設計などにより開発効率化を推進し、成長分野のテーマへ開発リソースのシフトを進めていきます。
成長分野とは、大型・畑作を中心としたAgri製品の拡大、それから環境整備機械など農業用以外の機械、いわゆるNon―Agri製品の拡大です。共通する項目として、自動化、電動化を駆使し、また環境負荷低減を織り込みます。
開発製造本部のリソースを成長分野に集中させることで、他社に先んじる技術、製品を皆様にお届けします。
昨年はBFトラクタ、FMコンバイン、TJWロボットトラクタなどを商品化することができ、営業の方々から多大なる好評を頂いております。これらは当本部の総力を注いで開発製造してきた商品です。
また当本部では、次なるモデルチェンジ商品の開発に取り組んでおり、品質・性能・操作性の向上、価格の抑制を必達目標としています。
トラクタ、コンバイン、田植機それぞれでフルモデルチェンジを順次行っていきますので、ご期待下さい。
2025年度、開発製造本部では『一人一人のアイデアと工夫で最適化を完達し世界中で儲ける商品を創造する』と本部方針を定めました。農業機械メーカーとして磨き上げてきた技術やノウハウ、様々なアセットを活用して、今年の干支である脱皮を繰り返しながら力強く成長を遂げる巳(蛇)のように、新たな価値創造に挑戦してまいります。そして、皆様が販売したいと心惹かれる商品を、タイムリーにお届けできるよう、開発製造本部の一人ひとりが目標を持ち、全員参加で取り組んでまいります。