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【新春トップインタビュー】「激動の時代の舵をどう取るか」 ヤンマーアグリ代表取締役社長所司ケマル氏

【新春トップインタビュー】「激動の時代の舵をどう取るか」 ヤンマーアグリ代表取締役社長所司ケマル氏

2024年の概況


「上期(4~9月)の売上は、ほぼ計画通り進んでいる」


 

国内について


「国内は物価上昇で肥料・飼料・資材価格が高騰、その一方で、子牛価格が下落するなど厳しい市場環境が続いた。そのような中だったが、訪問活動や展示会、実演会などのイベントもリアル、WEB、併せて積極的に展開した。核としたのはヤンマー自動運転技術のSMARTPILOTシリーズ等のスマート農機、密苗、新商品だ。トラクターYTシリーズには低馬力から高馬力まで全シリーズ直進アシスト仕様が揃い、幅広いお客様にきめ細かな提案ができるようになった。現場では導入機械の大型化、自動化が進んでいる。スマート農機普及のベースとなるRTK位置補正サービス『Y―Point・』も一部地域だが運用を開始した。また、ヤンマーが推進する稲作の低コスト・省力化技術である密苗も普及面積が8%に達し、目標の10%まであと少しだ。野菜作の分野では、北海道・鹿追町のキャベツの一貫体系のように自治体と組んだ中山間地のスマート農業化も推進、成果をあげている。また、ヤンマーが大切にする〝お客様の手を止めないサービス〟では、不需要期の点検サービスに注力。継続してPRする。国内販売は若干、計画を下回ったものの、9月に入り米の不足感による米価高で受注が増え上向いている。その一方で、海外の紛争影響や円安による資材価格高騰は農家の経営を圧迫しており、ヤンマーとしてもコスト削減に努力している」
 

海外について


「アメリカは今年苦戦している。一方、インドではITL社との協業も順調に推移し、ITLの輸出ブランド、シンプルで頑丈な造りの『Solis』はブラジル、トルコ、タイで売上を伸ばしている。また、『Solis』よりもハイスペックな、ヤンマーが設計しヤンマーエンジンを搭載したYMシリーズの販売も好調だ。コスト競争力に優れたYMトラクターは欧米も含めたグローバルで販売し実績を伸ばしていきたい。またインドの穀物生産量は世界トップクラス。アグリ事業においても重要な市場だ。それもあり、9月末には、ドイツ・CLAAS社のインド法人の株式を100%取得した。ここで今後、コンバイン、ハーベスタの作業機も製造。パフォーマンスをさらに上げていく」
 

2025年以降に向けた事業方針


「私が4月に社長に就任した時に〝5年後(2029年)海外売上2倍〟を掲げ、アクションを開始した。その中で一番大事なのは人材確保とグローバル人財の育成だ。ここに集中投資を行っている。この売上倍増に最も貢献を期待しているのが、アメリカとトルコだ。我々は他社に比べアメリカ向けの商品ラインナップはまだ少ない。その分、やれることは多く、伸び代は大きい。ホビー農業向けに農機、建機、発電機などもセットしたアプローチや、トラクターに取引先のディストリビューターなどの周辺機器も合わせたヤンマーブランドとしての訴求も行っていきたい。もう1つの伸長ポイント、トルコは、年間7万台が販売されている世界4番目のトラクター市場。ここに2013年にトラクター新工場を立ち上げた。50社のブランドがある中、年間300台の市場を確保、年々伸びている」
 

〝海外売上2倍〟達成に必要なこと


「〝海外売上2倍〟の目標を達成するための解は日本にあると考えている。世界では限られた商品(その地域に最適な商品)を限られた国で販売しているが、日本ではお客様に直接対応し、お客様が必要とする、或いはお客様の課題を解決する商品・サービスをトータルで提供する〝コト売り〟を行っている。ヤンマーが製造するトラ・コン・田以外では一部、国内・海外のインプルメントメーカーから仕入れて提供している。そのようにお客様の問題を解決するためにとことん尽くしている。この精神〝コト売り〟を世界にも持っていきたい。それだけで2倍以上に売上を伸ばせると確信している。そのためには今の人員体制、開発力では足りない。5年後のターゲット達成のためのベ―スを作り始めた」
 

デジタルを使った接点活動は


「日本ではオンラインEXPOがうまくいっていて、そこから実演会を申し込む方も増えている。海外はホームページを充実。さらにユーザーデータを収集し戦略的に広告を打つといったことも行っている。またTiktokを使いソーシャルメディアで、何気ないトラクター工場の1日を映しだしたり、ショートドラマなどでヤンマーが農業のイメージを変える会社、そして人をメインとして、人のために働くことを大事にしている会社であることを社内外に伝え、HANASAKAの活動とも併せて柔らかなイメージのインクルージングブランディング構築を図っている。こうしたことも人材確保に繋がるはずだ」
 

SDGs、ヤンマーの取組みは


「ヤンマーは100周年の2012年に『A SUSTAINABLE FUTURE』をブランドステイトメントに掲げた。ヤンマーHDではサステナビリティ推進部も設け、具体的な目標値を定め、それに向け厳格に取り組んでいる。また、ヤンマーアグリとしては、スマート農機の普及推進による環境負荷低減、フェイガー社と組んで農業のJ―クレジットの国内、フィリピンでの推進、カーボンニュートラルに向けて環境負荷の少ない動力の開発にも様々取組んでいる」
 

先日発表された、プロダクトのプラットフォーム化について


「私が今年中に出して欲しいとお願いした。ヤンマーグループの農機も建機もマリーンも全てにおいてプラットフォ―ムとなるコンセプトを示し、いわば、我々の目指す、人を主役に最も使いやすく、かつ、コストパフォーマンスに優れ、環境にも優しい未来の開発の姿を見える化して示した。今後、その姿に沿って、各事業が個々の開発を行っていく。そのアドバルーンを早くに示したかったからだ。この展示を含めた〝みらいのけしき展〟は、かなり哲学的な部分も含んでいる。ヤンマーは人が中心、人を大事にする会社。HANASAKAの精神、ヤン坊マー坊、アニメ『Miru』など、そうしたもの全て、ソーシャルメディアも使い若い世代に向けてソフトなブランディングを発信したかった」
 

2025年、何を信条にしていきますか


「リーダーとして、目標を明確に示し、皆でそこに進んでいく。海外売上2倍!そのために日本の先進技術、おもてなしの精神とコト売りを世界に持っていく。今、なすべきは、人材確保とグローバルな人財育成だ」


 ※本インタビューは昨年12月に行ったものです。

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