クボタ2024年12月期第2四半期決算 売上高3.9%増1兆5796億円
営利12%増2073億円
国内3057億円、海外1兆2739億円
クボタ(北尾裕一社長)は8月7日、2024年12月期第2四半期決算(IFRS、連結、2024年1月1日~6月30日)を発表した。売上高は前年同期比3.9%増の1兆5796億円。うち国内は3.0%減3057億円、海外は同5.7%増の1兆2739億円。営業利益は12・3%増の2073億円。為替変動や値上げ効果等が欧州の機械減販等の減益要因を上回った。
なお、オンライン決算発表の席には、渡邉大・取締役副社長執行役員機械事業本部長、鶴田慎哉・エグゼクティブオフィサー農機国内営業本部長、横溝敏久・農機国内企画部長、能登貴文・農機国内営業部マーケティング推進課長が出席し、全般と海外を渡邉副社長が、国内を鶴田国内営業本部長が説明した。
【全般の概況】売上高は前年同期比596億円(3.9%)増の1兆5796億円。国内は機械部門、水・環境部門、その他部門共に減収となり同94億円(3.0%)減の3057億円。海外は機械部門及び水・環境部門の増収により、同689億円(5.7%)増の1兆2739億円。
営業利益は欧州を中心とした機械部門での減販やインセンティブコストの増加などの減益要因はあったものの、為替変動や値上げ効果などの増益要因により、同228億円(12・3%)増の2073億円。親会社所有者に帰属する中間利益は同220億円(17・1%)増の1508億円となった。
【部門別の概況】
▽機械部門(農機及び農業関連商品、エンジン、建設機械など)=売上高は同4.4%増の1兆4034億円、売上高全体の88・9%を占めた。うち国内は同4.7%減の1552億円。主に農業機械及び農業関連商品の減少により減収となった。海外は為替変動の影響もあり同5.7%増の1兆2482億円。北米では建設機械の販売は住宅市場や政府のインフラ開発需要を背景に堅調に増加したが、トラクタはレジデンシャル市場の低迷及び農作物価格の下落の影響を受け苦戦。欧州は、建設機械及びエンジンが景気減速や投資縮小の影響を受け販売が減少し、トラクタも引き続き需要が弱く低迷した。アジアは、タイでは干ばつなどの天候不順に伴う農業機械の買い控えにより販売が減少したが、市場は当第2四半期に入り回復に転じている。インドでは水不足により作物の収穫量減少が懸念されたこと、及び総選挙に伴う経済活動の停滞により市場全体が縮小し苦戦。当部門のセグメント利益は、主に欧州での減販損や、インセンティブコストの増加などの減益要因はあったが、為替変動や値上げ効果などの増益要因により、同8.8%増加して2159億円となった。
▽水・環境部門=売上高は同1.2%増の1676億円と、売上高全体の10・6%。うち国内は同0.1%減の1419億円。海外は同8.7%増の257億円。環境事業の売上増加により増収。セグメント利益は原材料価格の改善や値上げ効果で同32・6%増加し131億円。
【連結財政状態】資産合計は前期末(2023年12月末)比7216億円増加し6兆808億円。資産の部では、主に北米で営業債権、金融債権が増加。負債の部では主に北米での社債発行により、社債及び借入金が増加した。資本は、利益の積み上がりや為替の変動などに伴うその他の資本の構成要素の改善により増加。親会社所有者帰属持分比率は前期末比0.8ポイント増加し41・4%となった。
キャッシュ・フローは1294億円の収入。運転資本の改善により同2275億円の収入増となった。投資活動によるキャッシュ・フローは1258億円の支出。設備投資に伴う有形固定資産の取得や無形資産の取得に係る支出の増加などにより、前年同期比280億円の支出増。財務活動によるキャッシュ・フローは468億円の収入。主に資金調達の減少により、同1068億円の収入減となった。これらのキャッシュ・フローに為替変動の影響を加えた結果、当中間期末の現金及び現金同等物残高は期首残高から649億円増加し、2870億円となった。
【2023年12月期連結業績予想】売上高は前回予想時(2024年2月14日)から500億円減の3兆円を見込む。欧州、北米を中心に機械部門での減販が見込まれるため、下方修正した。営業利益の予想は、売上高の下方修正は減益要因となるが、為替相場や原材料価格の動向を考慮し前回予想を100億円上方修正し3300億円。また、税引前利益は前回予想比150億円増の3480億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前回予想比90億円増の2350億円。
想定為替レートは、1米ドル150円、1ユーロ161円。中間配当は1株25円。
KSAS 3万軒へ
6割がスマート農機の売上
【国内農機の上半期の業績(鶴田国内農機営業本部長)】全体としては、国内の農機市場が肥料・資材価格の高止まり、一般販売農家戸数の減少を背景に農機本機の台数ベースでの需要が減少傾向にある。ただし顧客層別には、取引の軒数・取引額とも、担い手層は大きく減ってはおらず、規模拡大や効率化のための投資意欲は堅調だ。台数ベースではボリュームが多い小規模の個人農家層のトレンドがこの総需要に大きく影響している。
また農政では、食料・農業・農村基本法が成立し、スマート農業法も成立、担い手市場を中心にスマート農業への関心が更に高まっている。クボタグループでは、〝スマート〟〝グリーン〟〝イノベーション〟をスローガンに、クボタの総合力を活かした様々な取り組みを行って事業展開を進めている。1~6月は総売上では、ほぼ期首に想定した社内計画と齟齬なく推移している。前年比では減販となっているが、これには様々な要因がある。1つは前述したような需要の減少。また、昨年のトラクタSL33リミテッド好調とのギャップ、様々の製品における昨年の先行出荷の影響、在庫圧縮の影響。また価格改定の時期のズレもあり、単純な前年対比は難しい。
一方で、伸長している機種もある。本機では、自動運転のアグリロボの3機種、トラクタについてはM7、田植機は8条の可変施肥仕様、総じてスマート農機関連が顕著に伸長している。今期売上げの約6割がスマート農機で、これは年々アップしている。コンバインについてはSコンの受注も順調だ。関連商品は、自動操舵製品、クバンランドのインプルメント、野菜関連の機器は業績を確保。販売会社ではアフターマーケット事業(整備売上、部品、中古)も年々着実に伸長している。
活動について。1つ目は、リアルとデジタルの融合で進めているが、今年もグランドブレイカ―ズ、農フェス等デジタルの接点を継続して強化。これを起点にコミュニケーションを継続していくことで、双方向のコミュニケーションに繋がっている。また、今年新たに始めたRAKtA(SL280スペシャルをWeb上でリース申し込み可)も手応えを感じている。
2つ目の活動はKSASについて。順調に会員を伸ばし、現在2万9000軒、3万軒も目前だ。うち営農コースは1万軒を突破。関連する機材でシンプルコネクト、ザルビオとKSASの連動、KSASマーケットプレイスの充実等様々のことに起因している。今年はKSAS10周年で、ムードアップ策も効いている。
そのほか米の輸出事業では、ハワイに現地精米を行う販売会社を設立し事業を開始した。また、施設園芸事業の拡大に向けて、昨年グループ会社となったルートレック社との体制やプロモーションも強化している。クボタJクレジットサービス〝大地のいぶき〟も登録数約300軒となった。
【下期の重点取組み(鶴田国内営業本部長)】長期ビジョンGMB2030で掲げたトータルソリューションカンパニーへの深化を目指し中期計画2025で定めた土台作りとして、主に3つのテーマを推進。1つ目はスマート農業促進の土台作り。自動操舵やドローン、シンプルコネクトなど様々のものでスマート農機の商品ラインナップを拡充していく。そしてそのプラットフォームとなるKSASについても更に進化を続ける。従来機能の充実に加えて、KSASマーケットプレイスは他企業が提供するサービスとも連携してユーザーニーズに応えていくものだ。KSAS10周年キャンペーンも全部で10個の施策を展開し、ムードアップしていく。播種・施肥・ポストハーベスト含めた様々な商品との連携も含めてスマート農機活用の領域を広げ、特に施設園芸についても、様々なアライアンスを含めてKSASワールドを拡げていく。またスマート農機を活用するために必要な通信インフラとして、RTK基地局をクボタグループで積極的に設置し、この拡充を進めている。
2つ目はアフターマーケット事業の土台作り。増加していく高性能機械の順調サポートのために販売会社と連携してサービスセンターを拡充すると共に、整備工場のみならず様々な価値提供ができる拠点の充実を進めていく。診断レポートをお客様に送付、またメンテナンス付きでの販売を行うことと組み合わせてアフターマーケット事業の土台を作っていく。3つ目は米輸出、Jクレジットで顧客提供価値の最大化。
米価も例年に比べると非常に高値が付いている。これを機に拡販につなげたい。
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その後、質疑応答。
▽食料・農業・農村基本法の改正に伴い、スマ農促進法も10月施行が決まりました=中山間地のスマート化にも今後税制も含め様々な支援があるだろう。クボタとしても体制を整えていく。ロボットなど高精度なものだけでなく中山間地でも活用できるものがある。それをKSASと組み合わせて頂くことで、誰にとっても使い易くなる。機械だけの補助ではないので、体系等も含めたトータルソリューションで対応していきたい(鶴田本部長)。
▽サービス事業体も対象になるということですが=サービス事業体参画への期待の声も聴いているが、これに対応して組織を変更していこうとまではなっていないが、クボタファームのように一部営農に参画しているスキルもある。そのような求めがあり、我々に出番があるなら、それも1つかとも思っている(同)。
▽今回の決算について、どう捉えていますか=今年は、過去最高の売上げの維持と、おそらく今の為替ベースを見ると、最高益を更新する勢いだと思う。ただし、市況は厳しく、為替が下支えしているという側面もある。その中も、私ども機械事業本部の使命は、農業の発展、クボタの発展のために成長し、収益力の強化を目指し、更なるソリューションを皆様にお届けし続けることだと思っている(渡邉副社長)。