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ヤンマーアグリグローバル大会 持続可能な農業・社会 不可欠なパートナーへ

ヤンマーアグリグローバル大会 持続可能な農業・社会 不可欠なパートナーへ

持続可能な農業・社会 不可欠なパートナーへ

 ヤンマーアグリ(増田長盛社長)は1月24日、神戸ポートピアホテルで『2024年ヤンマーアグリグローバル大会』を開催、会場には海外20カ国も含め600名が参加、オンラインと併せ約2000名での開催となった。大会スローガンは『〝持続可能な農業と社会〟の実現に〝不可欠なパートナー〟へ』。小型電動農機のコンセプトカーも初披露され、ヤンマーの進む方向性と近未来も実感させた。また4月からヤンマーアグリを率いる所司ケマル氏と上田啓介氏も紹介された。

 4年ぶりの盛大な開催となったヤンマーアグリグローバル大会は大画面に映し出された映像の「私たちが次に目指すのはサステナブルで美しい世界。『ヤンマーグリーンチャレンジ2050』。私たちは3つのことにチャレンジする」という宣言で幕を開けた。「まず、グリーンハウスガス(GHG)排出量ゼロの企業活動の実現。ディーゼルエンジンは一層の高効率化とともに、水素やバイオ燃料などのグリーン燃料への対応を加速。同時にバッテリーを含めた電動化製品の開発を推進、農業機械では2025年までに電動化商品を市場投入。マリン分野では2023年までに船舶用燃料電池システムを商品化、建設機械では2023年に電動化商品を市場投入、そして2050年までに全てのプロダクトをこれから進展する多様なグリーンエネルギーに対応できるようにする。大地・海・都市、3つのフィールドでGHGフリーを実現する。次に循環する資源を元にした環境負荷フリーの企業活動を実現。例えば、調達の環境基準を高い水準まで引き上げ、それを世界共通で採用、またリサイクル化、有価物化出来ない廃棄物をゼロに。製品リサイクル率100%を目指す。最後にお客様のGHGネガティブを生み出すソリューションを新たに生み出す。例えば、食料残渣を肥料に変え、新たな食を生み出すバイオコンポスターの領域、様々な領域でサーキュラーエコノミーを生み出していく。またバイオマスガス化システムの様に食料生産時に生じる生産残渣や食料残渣をエネルギーに変換しながら、バイオ炭活用によるカーボンネガティブを実現していく。美しい世界を目指して、お客様と共に、社会と共に」とブランドステートメントである〝A SUSTAINABLE FUTURE〟実現に向け、ヤンマーグループが2050年までに環境負荷フリー、GHGフリー企業を目指し取組む『ヤンマーグリーンチャレンジ2050』を映像で紹介、ヤンマーの姿勢を打ち出した。
 その後、能登半島地震で亡くなられた方に黙祷。
     ◇
 ヤンマーアグリグローバル大会は、始めに、ヤンマーグループを代表してヤンマーホールディングスの山岡健人社長が挨拶した(別掲)。
 続いて、ヤンマーアグリの増田社長がアグリ事業を代表して挨拶、アグリ事業の取組みについて説明。最後に今年4月の新体制で社長に就任する所司ケマル・現ヤンマートルコ社長と副社長に就任する上田啓介営業統括部長を壇上に招き「変わらぬご支援を」と紹介した(別掲)。
 その後、ヤンマーアグリジャパン・ソリューション推進部の林実穂氏と安達歩美氏が社会課題を整理、ヤンマーのソリューションの取組みを説明した。「食料・農業・農村基本法が見直される。①食料安全保障の強化②農林水産業のグリーン化③スマート農業④農林水産物の輸出促進が4本柱だが、ヤンマーとしてはこのうち①②③に取組む。①については国産飼料の生産拡大。稲WCS、この分野は、分業化、農業支援サービスの需要も出てきている。分業化の一端を担うことは新たなビジネスチャンスともなる。②については、J―クレジット。ヤンマーはフェイガー社と連携して推進する。J―クレジットの方法論は70あるがヤンマーが取組むのは、ヒートポンプの導入、高効率のボイラーの導入(シンビオスファームでみられる)、水稲中干期間の延長、バイオ炭(もみ殻燻炭)の農地施用(西坂農機で実証試験中)の4つ」とし、スマート農業の取組みも紹介した。
 続いて事例報告。国内からは西坂農機の西坂良一社長が登壇。西坂社長は〝農家の困りごとが商売の始まり〟という先代の教えを引き継ぎながら、収益のみを追いかけるのではなく、〝地域のお客様あっての我々〟という広い視野で判断、エコ農業ニシサカを設立し、これまでの農機販売店の枠を超えて様々な地域貢献を行っている。その中で、地域にとってなくてはならない店(存在)となっている。今の時代をヤンマーとタッグを組んで環境問題まで踏み込んで未来につながる事業を展開している。その信念が会場に大きなインパクトを与えた(別掲)。
 海外はタイのディーラー・エカポンの営業部長・ワッチャラ・チラウォンサンティスック氏(別掲)。力強く市場開拓に邁進する姿勢が会場に元気を注入した。
 続いて講演。スノーボード選手として世界で活躍後、故郷の滋賀県に戻り、ここを元気にしようと活動している、ワンスラッシュの清水広行氏が、『自分たちが住みたい美しい世界を実現するためにはまずは足元から変化を起こそう!』をテーマに話した。
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 休憩をはさみ特販店表彰。厳しい市場環境の中も、素晴らしい業績を上げた勇者たちに、ヤンマーアグリの増田社長が盾を、ヤンマーアグリジャパンの小野寺社長が目録を手渡し、一人ひとりに声をかけ、謝意を示すと共に1年の労を労った。
 続いて海外表彰、EXCELLENT AWARD。世界20カ国、34ディーラー・ディストリビューターに増田社長が現地語で感謝を伝え、一人ひとりを熱く労った。
 その後来賓を代表し、インターナショナルトラクターズ(ITL)社・海外事業部長のガウラブ・サクセナ氏が挨拶。同社とヤンマーとの事業の概況などを説明した(別掲)。
 最後は阿部農機の阿部社長が特販店代表挨拶(別掲)。懇親会に移った。

 

小型電動農機コンセプト モデル公開

 

 

 ヤンマーアグリ(増田長盛社長)は大会で、電動モーターによる駆動で、農業のCO2ゼロエミッション化を目指した小型電動農機のコンセプトモデル「e―Ⅹ1」を初公開した。
 電動農機は、環境性能だけでなく、電動モーターの優れた静粛性と環境性で、夜間や近郊農業、ハウス内での作業環境の改善が期待されている。
 本機は、機体の前後にロータリーや草刈り機などの作業機を取り付けることで、除草・除雪・耕うんなどの様々な作業に対応することができる。また、車輪ではなくクローラを採用することにより、斜面や不整地での安定的な走行を実現。運転席をなくし、遠隔操作で農作業時のオペレーターの安全を確保する。自動運転機能の搭載も視野に開発を進める。
 今後は、2025年の市場モニター開始を目指し、量産機の開発に向けて設計・試験を重ね、農業分野での脱炭素化に貢献する商品開発を積極的に進めていく。
【小型電動農機コンセプトモデルの概要】▽型式名=e―Ⅹ1▽動力源=バッテリー(電動)▽想 定作業=耕うん、草刈り、畝立て、除雪▽発売=2025年に市場モニター開始予定。

 

ヤンマーHD・山岡社長挨拶 “新しい豊かさ”追求 コト売りを事業の中心に

 

 

 開会の挨拶の前に、先般発生した能登半島地震により被災されました方々、並びにご家族の皆さまに心よりお見舞い申し上げます。一刻も早い被災地の復旧・復興と、人々が安心して生活を送ることができますようお祈り申し上げるとともに、我々もできる限りの支援を継続してまいります。
 さて、「ヤンマーアグリグローバル大会」は、ヤンマーを支えてくださったパートナーの皆さまへの感謝をお伝えする場として開催され、今年で48回目を迎えます。
 本日は、本大会にご出席賜り、また昨今の厳しい経営環境にも関わらず、お客様に向き合い、課題解決にご尽力を頂いておりますことに改めて御礼申し上げます。
 冒頭のヤンマーグリーンチャレンジ2050の映像にありました通り、私たちはヒトと自然の豊かさを両立した「新しい豊かさ」を生み出すことを目指して、食料生産とエネルギー変換の分野で挑戦を続けてまいりました。
 今後ますます高度に情報化されていく不確実な時代において、この「新しい豊かさ」を追求するためには、単にモノを売るのではなく、新たなソリューションを通じて、いかにお客様の課題を解決し、付加価値を提供できるかが大切です。私たちは「コト売り」を事業の中心に据えた存在に進化できるよう、グループの持つ技術やノウハウを組み合わせ、変革を進めてまいります。ヤンマーが真の顧客価値創造企業になるためには、お集まりいただいたパートナーの皆さまのお力添えが不可欠です。
 4月から、ヤンマーホールディングスのアグリ事業は新体制に移りますが、私たちの理念である『A SUSTAINABLE FUTURE』の実現に向けて、次のステージも共に歩んでいただけますと幸いです。

 

YAG・増田社長挨拶 農業を魅力溢れる 食農産業に進化させる

  

 

昨年はウクライナ情勢の長期化、穀物やエネルギー、原材料価格の高騰など世界経済だけでなく日本経済にも大きな影響がありました。
 この様に市場環境が大きく変わる中、国内特販店、海外販売代理店の皆様におかれましては、日頃より、ヤンマー商品の拡販とサービスの提供に御尽力を頂いておりますことに厚く御礼申し上げます。
 最初に、我々を取り巻く今の事業環境についてお話をしたいと思います。
 世界全体で見ますと、2050年には人口は20%増加、耕作地面積は3%増加、そして農業人口は13%減少すると言われております。
 減少し続ける農業生産者が、増え続ける食料需要を賄う時代であり、農業そのものを変えていかなければ持続可能な未来は来ないと言えます。そのため、人々が豊かな生活を送るために、食料や畜産飼料を生産することの重要性は、今後も高まって参ります。日本国内を見ますと、農業経営体数は著しく減少しており、一農業経営体当たりの経営耕地面積は増加しております。今後、機械の高性能化やスマート化の要求がさらに高まると予測されます。
 日本では、農業政策の一環として生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」が策定され、その政策の実現のために「みどりの食料システム法」が策定されました。この「みどりの食料システム法」では、環境負荷低減の取り組みの促進として認定制度を設けているのが特徴となっており、スマート農業や低環境負荷農業の活用が求められております。ヤンマーでは、スマート農業の取組として、2018年にロボットトラクターを発売して以来、自動農機の技術を活用し、多くの商品を展開してきました。自動運転技術を採用したSMARTPILOT(スマートパイロット)シリーズに加え、今年は直進アシストコンバインも新たに投入して参ります。
 また、今後は次世代のロボット農機の開発にも取り組んで参ります。さらに生産から消費までのデータの相互利用を進める技術が今後重要となってくると予測されます。私たちヤンマーも〝持続可能な農業〟に向けて、食と農をつなぐデータプロバイダとして、〝不可欠なパートナー〟になることを目指します。
 ここで皆様に、現在「人手不足」や「脱炭素社会」への課題解決として取り組んでおります「ロボット農機の遠隔操作」そして開発中の「小型電動農機」をご紹介させていただきます(別掲)。本日は、開発中の「小型電動農機」を会場にお持ちしておりますので、ぜひご覧いただきたいと思います。
 私たちのお客様を取り巻く外部環境の変化とお客様が抱えられている課題、それに対するソリューションはこちらに示したようなものがあります(スクリーン)。 
 我々は単なるモノ売りではありません。お客様の課題を解決するための提案をすることで、結果として我々の商品やサービスがお客様の必要とする作業を実現し、その感動に価値を感じる、これが私たちの活動です。農業の機械化、省力化、資源の有効活用に加え、「食」の分野からも生産物の付加価値を高めること。培ったテクノロジーとソリューションで、持続可能な農業を実現し、食の恵みを安心して享受できる社会をめざすこと。農業を魅力あふれる食農産業へ、それがヤンマーアグリの目指すビジョンです。農業とそれを取り巻く社会が大きな転換期を迎えようとしている中で、私たちヤンマーは、皆様と共に、時代を先取りして、お客様の課題を解決し、持続可能な農業と社会の実現に不可欠なパートナーを目指して参ります。
 最後に、アグリ事業は2024年の新年度4月より新体制となります。ここで皆様には、2人をご紹介いたします。ヤンマーアグリの新社長には現在ヤンマートルコ社長の所司ケマルが就任予定です。そして、副社長には現営業統括部長の上田啓介が就任予定です。

 

熱狂の旗を立てろ RICE IS COMEDY

 

滋賀県の長浜市西浅井町を拠点に活動しているのが「ONE SLASH」。地元で生まれ育った20〜40代の兼業農家などが地域の活性化を図っている。代表を務める清水広行氏とお米の生産部隊隊長を務める中筋雅也氏(ヤンマーパワーテクノロジー勤務)が後半に加わり、取り組みについて紹介した。
 地域活性化を探る中で、地域の武器になるのは「農業」だと認識し、米づくりはとても楽しいものだ、〝RICE IS COMEDY(米づくりは喜劇だ)〟というコンセプトを掲げ、農業をエンターティメントとして捉えコミュニティーのファンをつくるなかで、販売を展開し、成果に繋げていった。またお米由来のバイオマスプラスチック「ライスレジン」にも挑戦している。
 講演を通して「自分から変化を起こし、熱狂の旗を立てよう」とポジティブなメッセージを会場に発信した。

 

特販店代表挨拶(阿部農機)

 

 

 食料安全保障の強化に向けた、食料・農業・農村基本法の改正について議論されている。我々特販店も異常気象や気候変動の対応も含め、先端技術の導入や効率化に繋がる農機の普及など、持続可能な農業の実現に向けた取り組みが重要になる。本日の発表には新しい農業ビジネスの様々なアプローチがあった。地域の課題や市場変化に敏感に対応し、環境に配慮した事業モデルが求められている。どうすれば地域、農家から必要とされるか、考えていきたい。「持続可能な農業と社会の実現に不可欠なパートナーへ」向け、一歩でも近づけるよう、チャレンジしていく。共存共栄でそれぞれの地域で世界中に満開の花を咲かせよう。

 

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