農林業機械・農薬・資材についての動向を紹介する

受付時間 平日9:30~17:00

TEL 03-3831-5281

毎週 火曜日発行
 >  > 【新春インタビュー激動の時代の舵をどう取るか】クボタ取締役副社長執行役員 機械事業本部長渡邉 大氏

【新春インタビュー激動の時代の舵をどう取るか】クボタ取締役副社長執行役員 機械事業本部長渡邉 大氏

【新春インタビュー激動の時代の舵をどう取るか】クボタ取締役副社長執行役員 機械事業本部長渡邉 大氏

GMBクボタ掲げ スマート・グリーン・イノベーション 

 

――2023年の概況は。


「為替に助けられた面もあったが、社員の奮闘はもちろん、製品の値上げが資材価格上昇をカバーし、2023年は売上・利益とも最高業績を確保できる見込みだ。ここ数年を振り返ると、コロナ特需、穀物価格上昇による農機業界の追い風の中、クボタも部品調達課題などもある中だったが、最大限生産増、供給を行った。昨年は、年前半、一部工場の調達・生産管理のシステムの切替えに伴う影響もあったが、後半に挽回、安定してきた。世界的なインフレ、地域によっては需要減退もあったが、穀物高などもあって、海外は全般的に好調だった」


 ――地域別には。


「欧米は非常に好調だったが、北米は金利上昇により年後半以降、住宅着工件数が減り、それに伴い小型の草刈機やトラクタの需要が減少するも、大型トラクタの需要は、世界的な穀物価格の上昇もあり堅調だった。欧州は年後半からインフレによる金利上昇で市場が縮小した。アセアンは天候不順、水不足もあり需要減。インドでも水不足はあったが、絶好調。これは今年も続くだろう。中国もクボタの事業は堅調だ」
「設備投資は積極的に行っており、北米ではジョージアにインプルメント工場を建設予定、また、カンザスでは建機工場が稼働開始し、インドにおいてもEKI(Escorts Kubota India Private Limited)が順調に生産拡大している」


 ――国内については。


「国内についても価格改定をさせて頂き、資材価格上昇をカバーし、前年並みの業績を確保できる見込みである。国内には〝日本農業を支える人を支える〟という使命があり、皆がそれに向かって熱く頑張ってくれている」


 ――スマート農業の進展。


「スマート農業は、もはやあたりまえのものになりつつある。クボタでも今年はトラクタ、田植機、コンバインの3機種全てで無人自動運転が揃うが、可変施肥やGS(直進アシスト機能)など様々なスマート技術を使った製品で、省力化・コスト削減に貢献すると共に付加価値を高めていく。また、KSASも進化を続け、本年、シンプルコネクトを発売し、API連携も進め、自社だけでなく様々な機械、システムの情報とリンクすることで、更にスマート農業の進化・普及に繋がっていくものと期待している。その中でRTKの活用も欠かせない。国や自治体の基地局に加え、クボタとしても地域の特性にあわせて設置を進め、そのカバー率を上げていく。また、ハードのみならず使い方の講習会、人財育成など、ソフト面の充実も進めていく」


 ――中期経営計画の達成状況。


「中計がコロナ禍で作成されたため、売上については保守的な計画になっていた。すでに数字は上回っているが、更なる売上、事業拡大、今後の世界戦略にはインドの活用がカギになってくる。インドを活用した供給力の拡大と価格競争力の確保が新たなマーケットをつくり出す。部品の調達も増やしている。インドのトラクタ市場は90万台以上。インド生産拠点を活用することはクボタ全体の競争力を高める。欧州は大型畑作用の研究所KRDE及び工場があり、クバンランドもある。畑作向けのインプルメントをうまく使ったソリューションを展開していきたい」
「数字以外では、カーボンニュートラルの推進がある。これについても、水田中干し延長のJ―クレジットの取組み、省エネ製品の開発・提供、KSASを使った効率の良い農業生産、電動化、水素エンジンの開発など、それぞれ着々と取り組んでいる」


 ――2024年の見通し・展望。


「昨年後半から景気の後退局面で需要が下向きの地域が出てきている。一方で欧米のように引き続き堅調な農機・建機の市場もある。そうした濃淡のある展開となると思うが、それに対してフレキシブルに対応することが大切と思っている。国内は農家戸数の減少、農地集約、担い手へのシフトがトレンドだが、クボタの国内事業は〝日本農業を支える人を支える〟がテーマだ。兼業農家向けの機械も引き続きしっかりと供給していく」


 ――堺のグローバル技術研究所(KGIT)。


「ほ場が隣接し、全ての技術がそこにあることで効率よく連携し、クロスしながらスマート農機はじめ様々な開発を行っている。そこから生み出されてくる商品・技術には非常に期待している。研究開発拠点は、北米やタイとヨーロッパにもあるが、ベースの機械開発、先端的研究などはKGITで行う。タイはインプルメント、ヨーロッパは大型機械など独自の現地開発もしているが、KGITで作られたものがベースとなり世界中の開発のプラットフォーム的役割を担う」


 ――SDGs、脱炭素の取組み。


「クボタでは全方位的に基礎研究をやっている。まだ最適解のソリューションが見通せないためだ。EV、代替燃料、水素(燃焼/FUELCELL)、LPGを用いたガスエンジンもある。いずれこの馬力帯にはこのソリューションといったことが見えてくるだろうが、地域によってもニーズが異なるため、バラエティさが当面は大事」


 ――日本では人口減少が急速に進んでいます。その中で生き残れる経営とはどのようなものと思われますか?


「農家人口が減っても耕地面積、農業生産は維持していかなければならない。少ない人員で、如何に生産性を高めて農業生産を行っていくかが大きなカギだと思っている。そういった意味で自動農機、スマート農機が寄与する。一方で、農業にも環境配慮がより強く求められてくる。そうしたものを支えていくソリューション、スマートテクノロジーを活用した農業経営こそが未来に繋がっていくのだと思う」


 ――スマート農業、大規模担い手が中心となる時代の農機販売店は。


「全ての農機販売店が大型・スマート農機に対応した整備工場を備えることは難しい。高度整備・重整備は大型整備工場を拡充し、そこで対応する。一方、それ以外の機械整備ときめ細かな農業経営サービス(スマート農機を導入した作業請負、使い方の指導なども含め)への対応も必要になってくる。『農家の困りごとを解決するソリューションを提供する。機械を売るのはその付加的な行為』という考え方が大事。農機販売店にもそうした考え方がますます重要になっていくだろう」
「クボタが掲げるスローガンは、国内は〝スマート・グリーン・イノベーション〟。クボタグループの全社員が一丸となって『GMBクボタ』に向かって、着実に取り組んでいく」。


 ※本インタビューは昨年12月に行ったものです。

関連記事

AGRI EXPO新潟 ㉖年2月朱鷺メッセで初開催 

国際農機 作業時の不便解消に 実用的農機パーツを発売

国際農機 作業時の不便解消に 実用的農機パーツを発売

クボタ、大阪・関西万博2025で「未来の食と農」エリアを展示|汎用プラットフォームロボットがスマート農業の未来を描く

クボタ、大阪・関西万博2025で「未来の食と農」エリアを展示|汎用プラットフォームロボットがスマート農業の未来を描く

サタケ、「KOMECT(コメクト)」を第3回九州農業WEEKに初出展|DXを活用した次世代型生産支援システム

サタケ、「KOMECT(コメクト)」を第3回九州農業WEEKに初出展|DXを活用した次世代型生産支援システム